2016年03月07日

Vol.8

人生最大の危機 ~TVプロデューサー・菅賢治~

人生最大の危機を教えてください。

バラエティは何があっても飄々とやっていくものだし、どんなトラブルが飛んできても危機と思ったことはないので難しいですが、「3日後に2時間の特番をやってくれ」と言われたことがあります。月曜日に編成局長に呼び出されて、次の木曜日にオンエアする特番の制作を依頼されました。テレビ業界では結構そういことがあり、決して稀なケースではありませんが、やはり驚きました。

その時の状況や危機が発生した原因を教えてください。

私たちの世代で初めて4冠を取った時の年末でした。当時、他局と0.01%の視聴率争いをしていて、「とにかく1%でいいから勝ってくれ」と言われました。正直に言うと、勝つか負けるかなんて全く分かりませんでしたが、サラリーマンとしては会社から言われたことは仕方のないことです。

危機とどのように向き合い、乗り越えたのですか?

「3日じゃ無理でしょう」と思いながら、30秒後くらいには「これとこれとこれはできるな。こうやったら面白いかもしれないな。」と頭で考えていました。

そこで出来ない理由をブツブツ並べても何も生まれてこない。だから、気持ちを切り替えるというわけでもなく、すぐに「じゃあ何をやったらいけるか?」を考えました。テレビ屋は皆、そうだと思います。タレント事務所やスタッフを説得しなければなりませんし、「え?3日後ですか?」となった時のために「こうやってやれば大丈夫」というものをすぐに考え、用意しておく。これが重要になってきます。

その時の総合演出は、同い年のヘイポー(「ガキの使い」でお馴染みのテレビ演出家・斉藤敏豪さん)でした。この状況を説明した時は驚いていましたが、

「でもさ、こうしたら良いんじゃない?」
「いいねぇ」
「なんか面白そうじゃん。やっちまおうぜ。」

といった形で、あとは皆で面白がりました。もちろん、オンエアまで全く眠れない日々が続きますが、それを嫌と感じたことは無いです。面白そうだからやろう、今まで誰もしていないことをやってやろう、なかなか経験できないことだからやろう、という意識の方が強かったです。

最大の危機に直面したご経験から、どのようなことが得られましたか?

もともとの私の性格かもしれませんが、大変な時にマイナス要素を考え過ぎても事態は好転しないので、むしろそういう状況を面白がること、ポジティブに捉えることが大切です。特番の質が低くて、もしも視聴率がドシングルみたいなことになったら二度とお声はかからないかもしれない。結果論としては、そういう可能性もあります。しかし、そういったマイナス要素ではなく「面白いことをやってやろう」と考え、前進していくしかないと思います。

最後に、人生の危機に直面している人へ向けてアドバイスをお願いします。

広い視野で見ることをおすすめします。

私はサラリーマンを辞めてから、色々な人達と会う機会がありました。その結果、自分がいたテレビの世界を「狭い」と感じました。今までと違う世界、テレビの人達が知らない世界を覗けて幸せだと思っていますが、それは、テレビ業界の悩み、組織人であるが故の苦しみも、広い視野で外から見つめてみると全く違う捉え方ができるからです。

多感な時期の中高生で言うと、卒業までの3年間を「長い人生の中の短い3年間」と見る。広い視野で「学校という狭い世界にいる」と認識する。そうすると、友達や教員と意見が合わない、馬が合わない、などといった悩みが少し和らぐと思います。受験にしても、不合格になったからこそ後々の幸せにつながることがあります。つまり、駄目だったから全て駄目、ではなく、駄目だったことが全て良し、ということもあります。これは人生の結果論でしかありませんが、だからこそ、先が分からないからこそ、不合格をチャンスと考えることもできます。

また、人生は一度きりですから、どんな人にも確実に「辞める」という選択肢があります。もちろん、脱落や落伍ではなく、ステップアップ、次への挑戦と自分で考えた上での「辞める」です。常に「上へ上へ、次へ」と目指している人は魅力的ですから、そういう人には色々な話がくると思います。

最後になりますが、バラエティをやる前は情報番組や報道系をやっていて、色々な事件、事故現場に行きました。そこで人間がいかに脆いものか、そしていつ自分の身に不幸が降りかかるか分からない、と実感しました。だから「今日も楽しかった」と言ってベットで眠れることは、一日一日奇跡が起きているのだと思います。

それを考えると、毎日楽しく生きなくてはいけませんね。