2008年04月01日

1冊の本が気づかせてくれた『自分の思い』

今月は"思いの強さ"についてのお話をしようと思います。
1ヶ月に1度コラムのテーマを考えるとき、とても悩む月と「これだ!」とひらめく月がありますが、今回はそのひらめき月の方でした。

京セラ株式会社を設立された稲盛和夫さんの著書がある日突然手元に届いたのです。どういう経緯で私に届いたのか、実は見当がついていないのですけれど、「経営学の本?」と、とりあえずパラパラとページをめくり始めました。ふと目を落としたそのページにこんな言葉が書かれていました。

「頭からつま先まで全身をその思いでいっぱいにして、切れば血の代わりに『思い』が流れる」

私はこの件(くだり)を読んで脳のどこかが覚醒したような気分になりました。そしてすぐさま、なぜこんな気分になったのかを考えてみたのです。2つのことが思い浮かびました。

1つはこんなこと。講演で「念ずれば叶う」というお話をさせて頂くことがあるのですが、この時、私は話しながらもいつも自分の発する言葉に何かが足りないと感じていました。

講演で伝えたかったのは、
「こうなりたいという目標があればその目標を頭の中で"映像"としてイメージし、とことんリアリティを追求して、何回それを思い描いても同じ映像が頭に出てくるぐらいに考える。例えば目標を達成した瞬間の自分の目の輝きや表情、周りの風景がどんなものかまでもがわかるぐらいに。私の場合は子供の頃からそれがオリンピックであり、練習の成果がその夢の舞台で発揮され、それに伴う結果も得られた瞬間のことをイメージしていました。そうすると、しんどいことと楽なことがあれば、しんどい方を選んだ方がその理想のイメージにより近づくことに気づき、さぼりの性格でも頭の中の映像のイメージになる "あの最高の瞬間を迎えるためだったら"という一途な思いによって弱い自分に打ち勝つことができる。その一つひとつ、一回一回の自分に打ち勝っていく積み重ねが、やがては目標を本当に自分の元へ引き寄せられる」
というものでした。これは独自の感覚的なものなので、感覚をわかりやすく伝えるのは難しく、これで伝わっているのだろうかといつもモヤモヤした感触があったのです。

「こうなったらいいな」と誰しも思いや願望はあると思うのですが、本当にそれを達成するためには"思い"をどんな強さで持たなければいけないのか、その度合いの表現が上手く伝えきれていなかったと気づきました。稲盛さんの著書はそれが実にわかりやすく表現されていて、読み進める間中、何度も唸らされるほどストレートに心に響くものでした。

あと1つは、今の自分が果たしてそこまでの"思いの強さ"を持って、物事に当たっているか? という自問自答です。選手時代は本気でオリンピックに行きたくて、行きたくて、行けると勝手に信じ込んでいて、だからこそ頑張れたというお話を前述させて頂いていましたが、さて今は...?

自分でも気づいています。選手時代と同じぐらいのレベルの思いの強さはないな、と。もちろん引退後は、多くの出会いとともに色々な挑戦をさせて頂く機会を賜り、その機会を無駄にしないようにと思い入れを持って取り組もうと心掛けてきました。そして充実感も達成感もそれは大きなものでした。しかし、なんとなく目標が広くて漠然としていて、何度イメージしても同じ映像が出てくるというのではなく、毎回違う映像が頭に出てきていましたね。これに改めて気づかせてもらえたのは今後の強みになりそうな予感がしています。「そうだ!自分には思いの強さが足りていない。そして強く思えるものを欲している」。そう気づいて、なんだか身体中にエネルギーがみなぎりました。

大きな目標でも小さな目標でも、とにかく持ったならば全てに"体を切れば流れるのが血ではなく、こうなりたいと願い、そのためにどんなに大変でも行動できる程の強い思いが流れる"心意気で当たっていきたいです。その方が、人生楽しく、張り合いがあるってものですよね。

ひょいっと本が手元に届いたことによって、何だかこんなに熱く語ることになるなんて思ってもみないことでしたが、きっとこれも何かの思し召し。せっかくの機会ですので、とことんやってみようと思います。