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コラム 政治・経済

2009年04月25日

岡田晃の「納得!知っ得?日本の経済」

【今月の経済講師】

s3614.jpg岡田 晃
/大阪経済大学客員教授・経済評論家

 1947年、大阪市生まれ。
71年に慶應義塾大学を卒業後、日本経済新聞社へ入社。
記者を経て、テレビ東京へ異動し、
「ワールドビジネスサテライト」のプロデューサー、
テレビ東京アメリカ社長、テレビ東京解説委員長等を務める。
06年4月より、経済評論家として独立。
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「景気底入れ感で最悪期は脱したか? だが短期と長期は別問題」

 政府が追加経済対策を決定した。事業規模56兆円、うち国の財政支出15兆円にのぼり、過去最大の景気対策となった。政府はこれまで昨年8月、10月、12月の3回にわたって景気対策をまとめてきたが、規模、内容の両面で景気てこ入れ効果は不十分だった。それに比べると、今回は一定の効果があると見ている。
 
 過去3回の景気対策の事業規模は合計75兆円だが、その大半が政府系金融機関の融資枠の拡大などで、実際の財政支出(いわゆる真水)は12兆円にとどまっていた。これに対し今回は真水を増やし規模を思い切って大きくした。また内容面でも、エコカーや省エネ家電の購入補助は、環境対策という成長戦略と消費刺激という即効性の二つの要素を盛り込んでおり、定額給付金のようなバラ撒き的な発想からは前進していると評価できる。
 
 幸いなことに、ここへきて景気に底入れ感が出ている。米国ではシティグループなど大手金融機関の1-3月期決算が軒並み好転したのをはじめ、一部の住宅関連指標などに下げ止りの兆しが出てきた。株式市場の空気も変化し、NYダウは3月上旬に6500ドル台の安値をつけて以後は回復軌道をたどり、8000ドル台まで戻している。これをうけて日経平均株価も9000円近くまで回復してきた(いずれも4月17日現在)。エコノミストの中には「この1-3月で底を打った」と言う人もいるほどだ。こうしたタイミングで追加経済対策がまとまったことは、それなりの効果が期待できると言っていいだろう。

 だが過度な期待は禁物だ。言うまでもなく、現在の景気悪化の原因はサブプライム問題に端を発した世界的な金融危機であり、景気が本格的に回復するためには震源地・米国の金融安定化が不可欠だ。最近は、一時のような金融不安は薄れたものの、欧米金融機関はいまだ膨大な不良資産を抱えており、これが解消してこないと、金融危機が去ったとは言えない。

 同時に注意しなければならないのは、短期的な景気回復と中長期的な成長持続は別問題だということだ。短期的に景気が回復しても、金融機関の不良資産問題など構造的な調整が長期にわたって続くことがありうるのだ。これは、日本の90年代がまさにそうだった。バブル崩壊後の90年代は「失われた10年」と言われ日本経済は不振が続いたが、実は景気は2度も回復していたのである。1度目は1993年~1997年、2度目は1999~2000年。特に1度目の景気回復は43カ月間と、比較的長い期間におよんだ。だが不良債権の処理という構造問題はほとんど解決できず、そのことが長期間の経済停滞を招いたのである。
 
 その90年代から2000年までの間、政府は9回にわたって景気対策を打ち出し、その事業規模は合計121兆円にのぼった。それほどの景気対策を実施しても、「失われた10年」からは脱却できなかった。景気対策は公共事業が中心で、一時的に景気を支える効果はあっても、日本経済の構造問題解決には効果は少なかったからだ。当時、筆者はテレビの報道番組でこれらの動きを伝える立場にいたが、その頃のことは今でもよく覚えている。政府の経済政策はいつも目先の対応に追われていた様子が印象的で、長期的な視点に立った政策はほとんど打ち出されなかった。
 
 我々はこうした90年代から教訓を学びとらなければならない。麻生首相は4月上旬、英フィナンシャル・タイムズのインタビューで「90年代の財政出動が日本のGDPを支えた。この経験から今回も財政出動が必要」と述べているが、財政出動だけでは不十分だ。日本経済の本当の意味での活性化のためには長期的な成長戦略を示すことが重要であり、長期的な成長のためには改革を持続することが何よりも必要である。

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