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2016年12月01日

身近なところから考える

 先日、ちょっとしたきっかけで「世界平和」という言葉について考えた。それは大げさなものなのかどうか、と疑問になった。きちんとした根拠は何もないのだけれど、「世界平和」を望まない人はあまりいないだろう。

 私だって、熊本や福島の避難所の方々を思えば、自分でも役に立てることはないだろうかと思案する。日本だけではなく、中東のニュースを耳にすれば、価値観の違う相手を理解することの大切さを痛感する。中東には縁もゆかりもなくても、世界が平和であって欲しいと願う。

 相手の状況や心情を察すること、宗教をふくめた違う価値観や習慣を理解すること。この二つはとても大切なことである。こうして書き出すのも恥ずかしいぐらい、当たり前だけれど。

 さて、そんな私は、先日、海岸線をジョギング中に思わず、軽く舌打ちをしてしまった。それも、一度ではなく二度も。いつもはちんたらと散歩を兼ねてゆっくり走るのだけれど、その日、たまにはタイムアタックをしようと意気込んでいた。ランニング用のアプリで自分の速度を定期的に確かめながら、海岸線を走っていた。

 絶景の夕陽が見える公園の辺りは、観光客も多い。そう広くはない道を四人の中年女性たちが独占している。斜めの横並びのまま、楽しそうにおしゃべりをしながら、のんびりと歩く。こちらが「すみません」と声をかけても、まったく気がつかない。私は、彼女たちの背後で足踏みをしながら、思わず舌うちしてしまった。

 そこから1キロちょっとのところでは、カップルらしき男女が動画を撮影している。若い女の子が海をバックに手振り身振り付きで話すのを、道のはじから男の子がスマホで撮っているのだ。二人の間を横切るわけにはいかないし、声をかけるとスマホのマイクに拾われてしまいそうだ。ここでも、つい小さな舌打ちをした。

 目標の六キロを走り終えると、タイムはほぼ想定していたものだった。クールダウンに早歩きをしながら海を眺めた。…私って心が狭いなあ。

 大した数字を目標にしていたわけではないし、だいたい私にとってジョギングは原稿の合間のちょっとした息抜きである。息抜きの間にイライラするなんて、本末転倒ではないか。

 世界平和を願う前に、自分の身近にいる人との平和を意識しなければならない。しょっちゅう接する人はもちろんだけれど、もしかしたらその場でしか接しない人への態度こそ、大切だと思う。案外と、その人の本性のようなものが見えてくるのかもしれない。

甘糟りり子

甘糟りり子

甘糟りり子あまかすりりこ

作家

玉川大学文学部英米文学科卒業。学生時代は資生堂のキャンペーンガールを経験。大学卒業後、アパレルメーカー勤務。雑誌の編集アシスタントを経て、執筆活動を開始させる。『東京のレストラン』『真空管』『みちたり…

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