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2015年11月26日

「スマホっ子」に教えたい「自分力」①

 以前のコラムで、ネット利用のルール作りやフィルタリングの設定について書きました。

これらは、いわば「外壁」です。外からの攻撃やトラブルに対して身を守るというものですが、それだけですべてがクリアになるわけではありません。むしろ大切なのが、子どもの自主性や自発性、つまり「自分で考え、行動できる」という力です。

 子どもがスマホを持って外出してしまったら、あとは「子ども次第」です。自分で判断し、制限する力を持っていないと、誰かの言いなりになってしまったり、周囲のトラブルに巻き込まれかねません。そこで2回にわたり、いまどきの「スマホっ子」に教えたい「自分力」について解説しましょう。

 まず「行動力」と「表現力」です。たとえば家族でファミレスに入り、食事や飲み物を注文するとします。さて、この注文を「子ども自身」が言えるでしょうか?

 私は取材で多くの親子と接してきましたが、大抵の場合、お母さんやお父さんが「この子はハングーグセットとコーラ」みたいに子どもの分も注文してしまいます。子どものお水がなくなると、お母さんが店員さんを呼び、「すみません、お水ください」と頼むわけです。

 けれども、頼んだメニューを食べる、なくなったお水を補充してほしいのは「子ども」です。自分のほしいもの、頼みたいことを子ども自身が表現し、店員さんにお願いするという行動を取れるかどうか、実はここがとても大切なのです。

 フィギュアスケートでトリノオリンピックの金メダルを取った荒川静香さんが、子ども時代のエピソードをこんなふうに語っています。当時、5歳だった荒川さんは消極的で引っ込み思案の女の子だったそうです。ある日、お母さんと近所のスケートリンクに行くと、スケート教室が開かれており、年上の女の子たちがレッスンを受けていました。

 荒川さんがお母さんに「スケートって楽しいの?」と尋ねると、「さぁ? お母さんはわからない。知りたかったら自分でお姉さんに聞いてごらん」と言われたそうです。引っ込み思案だった荒川さんはモジモジしていたそうですが、勇気を振り絞ってスケート教室の女の子に質問してみました。そこで、年上のお姉さんたちから「とっても楽しいよ、一緒にやろう!」と誘われ、スケートをはじめたというわけです。

 このエピソードは、まさに子どもの「自分力」を引き出す象徴的なものでしょう。「スケートって楽しいの?」という荒川さんの質問に対し、お母さんが独断で「楽しい」とか「楽しくない」などと言っていたら、その後の彼女の活躍はあったでしょうか?

 あるいは、荒川さんの代わりにお母さんが女の子たちのところに行き、「楽しいの?」などと聞いて、それを荒川さんに伝えていたら、彼女は自主的にスケートをはじめたい、がんばりたいと思えたでしょうか?

 先に書いたファミレスの件も同様です。子どもが自分で食べたいものを注文する、店員さんにお水を頼む、そんな行動をした上で、帰りがけに「おいしかったです、また来ます」などと表現できれば、おそらくお店の人も「ありがとう、また来てね」と返してくれるでしょう。自分で行動し、表現することで、他者との関わりを実感し、さらに自信や達成感にもつながります。

 ネットやスマホでは、膨大な情報が「一方的」に与えられます。それを自分でどう選び、どう活用するかという点においては、自分自身の力が必要なのです。「これがほしい」、「あれを知りたい」、「こんなことをやってみたい」という意思を表し、実際に行動できるという「自分力」。日々の生活の中で、子ども自身が挑戦できるような環境をぜひ作ってみてください。

石川結貴

石川結貴

石川結貴いしかわゆうき

ジャーナリスト

家族・教育問題、青少年のインターネット利用、児童虐待などをテーマに取材。豊富な取材実績と現場感覚をもとに、多数の話題作を発表している。 出版のみならず、専門家コメンテーターとしてのテレビ出演、全国各…

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