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コラム 環境・科学

2010年09月24日

地球温暖化の影響を考える

 今年の夏は、厳しい暑さの日々が続きました。日本各地で猛暑日や熱帯夜の日数の記録が次々と更新されました。去る9月1日、気象庁は今夏の猛暑を30年に一度の異常気象と認定し、公表しました。この異常気象の原因が地球温暖化によるものかどうかの科学的な結論を出すには少し時間が必要ですが、私はやはり温暖化によるものではないかと思っております。
 地球温暖化がこのまま進行すれば、具体的にどのような影響が生ずるのかということには皆様の関心が大きいと思います。今回は温暖化による影響について述べます。

【温暖化で何がおこるか】
 
2007年2月に発表されたIPCCの報告書によれば、このまま地球温暖化が進行すれば、今世紀末の210年には、気温が 4℃ 程度上昇すると予測されています。ただ、その予測値には幅があり、2.4℃~6.4℃の間で予測値が出ています。
 温暖化の結果、海面が 26cm~59cm上昇するだろうと予測されています。海面の上昇は、海水の熱膨張と、陸地の氷河などが溶けて海に流出することによるものです。海面上昇により、たとえば東京や大阪の臨海地域、特にゼロメートル地帯といわれる場所は水没する可能性があります。
 地球大気の平均温度が1℃上昇すれば、日本のような中緯度にある地域では、地理的に南へ150km移動することに相当すると言われております。もし4℃上昇すると、東京は亜熱帯地帯になる可能性があります。東京は地球温暖化の他、ヒートアイランド現象で既に平均気温が3℃上昇していると指摘されています。
 生態系への影響を考えてみますと、地球温暖化で最初に影響を受けるのは植物の生態系です。移動することができる動物は、暑くなれば北に移動することができるかもしれませんが、根をはった樹木はそうはいきません。移動できる動物も、植物の生態系に依存して生きていますので、植物の生態系が壊れれば、動物も大きな被害を受けます。
 人間は知恵や技術を持っていますので、単純に暑さだけの問題ならばしのぐ事もできますが、温暖化は自然界に様々な変化を起こし、人間社会に大きな影響を与えます。
 温暖化の人間の生活や経済活動への影響については多数の研究がなされており、様々な見解がありますが、以下にいくつかを紹介します。

【農業、漁業への影響】
 
冬になると日本中で食されるミカンは、現在和歌山県や愛媛県が有名な産地ですが、やがてはみかんの栽培に適した地域は関東周辺に移るであろうと予測されています。リンゴは青森が有名ですが、温暖化進むと北海道が主な産地になるでしょう。ミカンやリンゴに限らず他の果樹や農産物も主たる生産地が北に移動します。お米の生産については、北海道など北日本では増産になりますが、西日本では高温による生育障害が発生し、日本全体としては減産になると予測されています。 
 漁業も温暖化の影響を受けます。たとえば、フグは平均の海水温が29℃より低い海域に生息します。現在の生息の南限は九州の南端あたりです。しかし、地球温暖化で海水の平均温度も上昇し、2100年頃には海水の平均温度が29℃より低い海域は、太平洋側では千葉県の銚子あたり、日本海では山形県あたりに北上します。現在は山口県の下関のフグが有名ですが、今世紀末には、「フグと言えば銚子」ということになっているかもしれません。

【災害の多発と健康への影響】
 2000年頃から実感していることでもありますが、温暖化によって、より強力な台風が日本を襲います。台風に限らず、春から秋の間に豪雨が多発し、洪水による被害が増えます。
 今年も夏の猛暑で高齢の方が亡くなられる報道がしばしばありましたが、温暖化によって、夏季の日中最高気温上昇による肺炎罹患率の増加、熱波による高齢者の死亡率や病気の罹患率が増加します。また、マラリア、デング熱などは、蚊などの媒介動物の北上による感染リスクが増加していきます。台湾は昔はデング熱の感染地域ではありませんでしたが、2002年にデング熱が大発生しました。デング熱もいずれ日本の南部地域に北上してくる可能性があります。

【産業への影響】
 温暖化によってスキー場に雪が積もらない、海面の上昇で観光地の景観が変わる、砂浜が減り海水浴場が開けない等、観光産業に影響が出るでしょう。たとえば、松島の景観が変わり、天の橋立が水没し、安芸の宮島が毎年水害を受けることになるかもしれません。
 夏に気温の1℃上昇で、冷房需要は500万kW増えると予測されます。もし3℃上昇すれば1500万kW増加することになります。これは平均的な原子力発電所15基以上に相当します。
 温暖化で雷雲が形成されやすくなると言われており、その結果、情報や自然エネルギー関連機器に耐雷製品の開発が求められることになるでしょう。

 このように温暖化の影響は、単に夏の寝苦しい夜が多くなるという単純なものではありません。ここで述べた影響は予測されるものの極一部です。温暖化は私たちの生活や経済活動を大きな影響を与えるものです。今一度、地球温暖化の重大性を認識して頂きたいと願っております。

進藤勇治

進藤勇治

進藤勇治しんどうゆうじ

産業評論家

経済・産業問題、エネルギー・環境問題、SDGs、コロナ問題をテーマとした講演実績多数! 経済・産業問題やエネルギー・環境・災害問題、SDGs、コロナ問題などについて最新の情報を提供しつつ、社会…

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