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コラム 人権・福祉

2004年03月05日

独りぼっちのお正月、そして復学の日

お葬式も終わり、家に帰ると大晦日でした。テレビからは年の瀬の慌しさが流れています。虚しさと寂しさの中での年越しです。一夜が明け、世の中はお正月です。昨年は除夜の鐘と共に練習に行きました。「一年の計は元旦に有り」棒高跳びで高記録を出す為に必死でした。そして、元旦には友人と初詣に出かけ、次の日は関東合宿の準備で大忙しでした。今年は、私の所へ訪れる者もなく、18才の動きたい盛りなのに正月早々ベッドの上で寝たきりです。(一年の計は元旦に有り・・・今年は独りぼっちで寝たきりかぁ。)そして、その夜も、そして、次の夜も独りぼっちでテレビがお友だちでした。当時は今のようなリモコンもなく、チャンネルを変えるのも、唇で、舌でボタンを押すのです。独りぼっち。虚しさからの涙が頬を流れます。(何で俺だけが・・・)本当に独りぼっちのお正月でした。

時は流れ、季節は3月になっていました。そろそろ退院の日です。と同時に学校への復学の日が近づいています。そういえば、学校への復学をする為に車椅子で学校見学へ行った時のことです。久しぶりに教室へ入りました。クラスメートはなんと言葉をかけてよいのか。皆、遠巻きにしています。それはそうですよね。彼らは車椅子自体見慣れておらず、又、元気で人一倍走り回っていた私が身動きできない姿になっていたからです。教室を出る時、一人の世に言う、ツッパリ君が私に声をかけてくれました。「濱宮!頑張れよ!」今もその言葉耳に残っています。私は「おぉ!」と手を挙げ教室を後にしました。そして、4月、車椅子での復学が始まったのです。

いよいよ、退院の日です。いとこが車で迎えに来てくれました。10ケ月に及ぶリハビリ訓練を終え、自宅に戻れます。住宅改造は費用がかかるので最小限にしました。改造と言っても自力では何も出来ないので、全てが介助用の改造になります。家に着き、簡易スロープをセットしてもらい、中へと入ります。これからは一階が私の部屋となります。車椅子用ベッドもキチンと用意されてました。辺りを見回すと、ベッドの側に怪我をする前の私の棒高跳びの写真が引き伸ばされ、額に入って飾られています。(歩いて帰りたかった・・・)虚しさだけが心に残ります。

4月、学校へ復学です。約1年ぶりの通学です。復学初日、担任が、いや正式にいうと、元担任が通学時間に家に着てくれました。私は留年をしたのですから、元担任というわけです。そして、一緒に通学をしてくれました。今回の担任は陸上部の顧問です。偶然、一学年下の担任だったのです。陸上部の顧問が担任というのは、結構やりづらい。しかし、それだけ影響力のある先生でありまして。私は車への乗り移りが出来ませんので、陸上部の後輩を順番に迎えに来させるのです。毎日二、三人が交代で迎えに来てくれました。ありがたいものです。クラスは、後輩達と一緒。変なものです。同級生になったのに、皆、「先輩」と呼ぶんですよ。

この身体になると、指も動かないので何も出来ず、授業の用意すら出来ませんでした。すると、後輩達が頼みもしないのに授業の合間に私の所へ来てくれるんです。「先輩、次、数学ですよ」そういうと、カバンから教科書を出し、授業の用意をしてくれるのです。そして、授業が終わると再びやってきて、次の授業の用意をしては自分達の席に戻って行くのです。

この身体になると「ウンコやおしっこが出ることも我慢することも出来ません。」下痢をすると、そのまま出てきてしまいます。おしっこの方は、集尿器という袋をペニスに取り付け、垂れ流しで袋に溜まります。私は高校時代、自力でその袋から尿を捨てることが出来ませんでした。いつもの様に後輩が側に来ます。袋を触り、「先輩!おしっこ溜まっているよ!トイレ行きましょうよ」そう言い、トイレでおしっこを捨ててくれます。ある日、「先輩!たまには立ちションしましょうよ」そういうと、学校裏の空き地へ連れて行って、おしっこを捨ててくれていました。

そんなある時、集尿器の袋が壊れ、後輩の手におしっこが掛かってしまいました。その瞬間、私は(うわぁ~申し訳ない)と思ったのです。すると、後輩はこう言いました。

「先輩!こんなこと気にする事じゃない!手を洗えばいい。只それだけの事ですよ!」

第15話完

濱宮郷詞

濱宮郷詞

濱宮郷詞はまみやさとし

コラムニスト

「何故、自分だけが、寝たきりに・・・」 毎日、死ぬ事ばかり考えていた。 そんな時、あなたと出逢い、あなたがそばに来てくれた時、生きる事に決めたんだ。 あなたが与えてくれた命。目の前には「無限の可能…

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