学生の就業支援の現場で講師をしている人とこんな話になった。
「学生たちに、『将来どうなりたい』『どんな夢があるの?』と尋ねると、
多くの生徒が『不労所得を持って安心したい』と言うんです。これ、どう思います?」
学生だけじゃない。ビジネスマンや主婦からも「不労所得」という
言葉がよく出てくる。実際に、「月10万稼げるアフェリエイト講座」や、
「家賃収入を得るためのセミナー」は、相変わらず人気がある。
不労所得を持ってラットレースから抜けることを勧める本、
ロバート・キヨサキさんの「金持ち父さん、貧乏父さん」は、
10年前にミリオンセラーとなり、今も根強いファンを持つ。
わたしだって、正直、「不労所得」に興味がないわけじゃない。
そして、わたしは、そんな人たちに言っている。
「別に不労所得が悪いわけじゃない。実際に、不労所得で食べて
行けるようになるには、死ぬほど、働いたり、学んだりする時期も必要だよ」
わたしたちの世代は、
「働かざるものは食うべからず」
で育った。時代の変化と共に、その価値観は古くなったのかもしれない。
「体を使ってしかお金を得られないなら、自分を消耗するしかない」
と、不労所得を目指す彼らは言う。
「そんなことないでしょ」と返すと、
「僕たちの給料は、10年間上がってないんです。ちょっと上がったって、
消費税が上がったら終わりです」
確かに、彼らの言にも一理ある。
わたしたちの世代は、バブル期に、給料が上がるということも、
頑張ったら贅沢できるという経験もした。ところが、その経験がない
彼らにとって、頑張ったら手に入れられると思えるのは、
不労所得なのかもしれない。実際にアフェリエイトなどで、数万円を
毎月稼ぐ人を知っている。わたしも、少しくらいなら稼げると
思える場面はたくさんある。
講師をやっている人の中にも、情報商材に力を入れて
「自分が直接動かなくても、売り上がるものを作りたい」
と言っている人も多い。それで成功している人もいる。
それらを否定するつもりはない。一瞬、ふと考えた。
「なぜ、そんなに不労所得を求めるのかな?」
やっぱり、みんな不安なのかもしれない。
この世に生まれて、自分が成すべきことが見つからないのは辛い。
人は誰でも、良いところが一つはある。
それに早く気づいて、伸ばしていくことが大切と思う。
そのためには、誰もがイキイキと働いてしっかり稼げる世の中にしたい。
わたしは、そう思っているし、働く楽しさをこれからも伝えたい。


大谷由里子おおたにゆりこ
(有)志縁塾 代表取締役
京都ノートルダム女子大学卒業後、吉本興業株式会社に入社。 横山やすしのマネージャーを務め、宮川大助・花子,若井小づえ・みどりなどを次々と売り出す。 23歳の時には、テレビ番組「花王名人劇場」のプロ…
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