2016年09月20日

Vol.14

人生最大の危機 ~大ヒット作『ビリギャル』本人・小林さやか~

人生最大の危機を教えてください。

ビリギャル(※1)って、受験の話だと思ってくださる方が非常に多いのですが、これは受験の話ではありません。「家族の話」です。「家族」というキーワードは本当に多くの方にとって身近なものであり、この話は誰にでも置き換えられる話だと思います。だからこそ、多くの方に読んでいただき、見ていただけたのではないかと思うのです。

※1
書籍、映画ともに大ヒットした坪田信貴氏の作品。書籍名は『学年ビリのギャルが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格した話』。

本の題名からもわかるように、私はギャルと呼ばれるような容姿をしていた高校時代、偏差値は全国模試で30以下、学校でも学年ビリの常習犯でした。しかし、高校2年の夏に坪田信貴先生(坪田塾 塾長)という恩師に出会い、慶応義塾大学受験を志します。「1日15時間ほどの勉強を1年半続け、現役合格を果たす」というのが簡単なあらすじなのですが、もちろん私にもスランプがありました。

「ずっと坪田先生のことを信じて、ここまでやってきたけど、本当に大丈夫かな・・・こんなんで間に合うの・・・?このまま信じていいのかな・・・」

そんな思いが頭を支配し、勉強にも集中できない。何をしてても不安が襲ってきて、涙が溢れ、情緒不安定な状態でした。「こんなに辛いの、もう耐えられない。慶応を目指すとあんなに言いふらすんじゃなかった・・・」そのときの私は、希望も自信も何も無くなってしまった状態でした。

その時の状況や危機が発生した原因を教えてください。

今では多くの方が「さやかちゃんはもともと頭がよかったのよ」と仰ってくださるのですが、当時は校長先生から「人間のクズ」呼ばわりされ、慶応を目指すと公言してからは友人たちにも笑われました。学校の先生たちには「他の生徒に悪影響なのでふざけたことを言い回るな」と注意されました。父(通称ビリパパ)に至っては「おまえが受かるわけがない」と塾代を払ってくれませんでした。私の合格を心から信じて、願ってくれたのは、坪田先生と母(橘こころ氏/通称ああちゃん)だけでした。

そんな中、私の受験は始まったのですが、基礎のない私は小学校4年生レベルのドリルからはじめました。高校3年に上がる頃にようやく学校でみんながやっているレベルに到達しました。こんな状態だったので、当たり前ですが全国模試を受けても、手応えもなければ結果もさんざん。そんなことが続いて、ついに自信をなくしてしまったのです。

危機とどのように向き合い、乗り越えたのですか?

「そんなんじゃ慶応は無理だよ。」

坪田先生は私をはじめて突き放しました。その瞬間、心が折れ、もうやめたいという気持ちが余計強くなってしまいました。そんなとき、無気力で机に向かえないまま、泣いてばかりいた私に母が言葉をかけました。

「もうやめちゃおう!さやちゃんよくここまで頑張ったね。さやかはここでやめても、他の何かを見つけられる力を坪田先生から十分に頂いたよ。だからもうやめちゃおう?さやかが辛いことが、私にとって一番、辛いことだから。」

そのとき、私は「封筒の重み」を思い出しました。父が塾代を払ってくれなかったとき、母が代わりに塾代を払ってくれました。親戚に頭を下げ、働きに出かけ、保険を解約し、いろんなものを売ってかき集めたお金でした。「さやちゃん、これ坪田先生に遅れて申し訳ありませんって、渡してね。」と手渡された封筒。走って塾に行き、坪田先生に渡しました。「さやかちゃん、この封筒、もう一度持ってみて」と私に封筒を持たせた先生は、「その重み、絶対に忘れるなよ。いつか二倍にしてお母さんに返すつもりでいろ。」と真剣な眼差しで言ったのです。

ここでやめるわけにはいかない、ここまできたら自分と坪田先生を信じてやりきるしかない。私はこの日から、それまで以上に勉強に励みました。

最大の危機に直面したご経験から、どのようなことが得られましたか?

母の無償の愛が「人は一人でできることなど何もないんだ」ということを教えてくれました。「子どもにはいつもワクワクすることをしていてほしい。」母の願いはそれだけでした。結果がどうであれ、お金がいくら無駄になろうが、娘にはワクワクすることを自分で見つける力を持っていて欲しい。親はそれを最大限援助してあげるだけ。それが母の思いだったのです。その愛が、いろんなことに気づかせてくれました。

最後に、人生の危機に直面している人へ向けてアドバイスをお願いします。

人生の危機を乗り越えた人の言葉は深く、重い。人を見る目が養われ、人生を自分の力で切り開いていける力があるように思います。私の危機なんてたいしたことはないけれど、こんなごときの危機でも、とても大きな自信になりました。

私は危機に直面した時、「人生に、意味のないことなんてない」という母の言葉をいつも思い出します。あなたが幸せになるためには、これも必要なことなんだ、と。

大きな危機を乗り越えることによって、みなさまの人生がさらに輝きに満ちたものになりますように。