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2015年02月20日

日本サッカーの復活は、日本人スタッフの拡充と若年層の育成から!

 サッカー日本代表の監督人事が難航しています。八百長疑惑のあるハビエル・アギーレ監督を2月3日付けで解任しましたが、後任はいまだ決定していません。

 日本サッカー協会は、外国人に絞って人選を進めています。これが私には理解できません。なぜ外国人でなければいけないのか。その理由ははっきりと示されていないのです。

 昨夏のブラジルW杯で、日本代表はグループステージ敗退に終わりました。コートジボワール、ギリシャ、コロンビアと対戦して1分2敗という成績は、アルベルト・ザッケローニ監督だから成し得たものだったのでしょうか?
惨敗必至の日本を、彼は何とかして世界で戦えるレベルに持っていってくれたのでしょうか?
彼以外の監督なら、もっとひどい内容に終わったのでしょうか?

答えは違うはずです。ザッケローニ監督が残した成績は、極論すれば誰が監督でも残せるものでした。

 ならば、ブラジルW杯の日本代表には何が足りなかったのか。日本サッカーの今後の強化に、昨夏の痛みをどのように生かしていくべきなのか。日本サッカー協会からは、何ら具体的な意見が示されていません。理由は簡単です。ザッケローニ監督と彼が連れてきたイタリア人スタッフは、W杯が終わると早々に帰国してしまったからです。

 サッカー協会の内部では、敗因の検証がなされているのかもしれません。しかし、日本人指導者であれば、様々な場面で検証内容を発信できるはずです。たとえ失敗しても、サッカー界の共有財産として残っていくのです。

 ブラジルW杯について聞きたいこと、確認したいことがあったときに、我々はイタリアのザッケローニ監督に電話をしなければなりません。もちろん、そんなことができるはずもないわけで、ザッケローニ監督にチームを託した2010年9月から2014年6月までの3年9ヵ月は、日本サッカーに何も残っていません。実質的には空白の期間と言っていいでしょう。

過日のアジアカップも、同じ文脈で語ることができます。

 アギーレ監督を解任した理由に、ベスト8という結果は含まれていないとの説明がありました。協会関係者からは「やっているサッカーは悪くない」といった趣旨の発言がありましたが、私には虚しく響きます。

 日本代表は育成の場所ではありません。公式戦では結果を求められます。それにもかかわらず、「やっているサッカーは悪くない」では……。結局のところ、アジアカップから反省することはない、と言っていることと同じではないでしょうか。敗因の検証が、またしても置き去りにされています。

 サッカー協会はしばしば「プレーヤーズ・ファースト」と言いますが、本当に選手を第一に考えているのでしょうか。私にはそうは思えません。ブラジルW杯以降の半年間が無駄になってしまったのは、選手にとっても不利益です。それだけでもう、プレーヤーズ・ファーストではありません。

どうしても外国人監督にするのであれば、日本人スタッフを入れるべきです。それも、できるだけ多く。

ヘッドコーチ、フィジカルコーチ、ゴールキーパーコーチもすべて外国人監督が連れてくるのは、絶対に認めてはいけません。日本代表に関わる時間が、外国人だけの経験になってしまうからです。日本人の指導者が育たないからです。

 先のアジアカップで準優勝した韓国は、ドイツ人のウリ・シュティーリケが率いていました。彼のスタッフはアルゼンチン人のヘッドコーチ、韓国人のアシスタントコーチ、韓国人のゴールキーパーコーチで構成されています。日本代表も同じような構成で問題ないはずです。

 重要な試合を控えた選手をモチベートするのは、簡単な仕事ではありません。日本人の感情の機微を斟酌できる日本人指導者のほうが、この点については間違いなく優れています。とりわけ控え選手の気持ちに寄り添うことができるのは、外国人指導者にはない部分でしょう。それが、チームの一体感を生み出すのです。

 さて、どれほど優秀な人材を日本代表監督に招いても、日本サッカーの根本的な問題は解決されません。日本代表の土台となる育成年代の強化を充実させなければ、日本サッカーを襲う負の連鎖は止められないでしょう。

 アジアカップで日本代表からPK勝ちを収めたUAE(アラブ首長国連邦)は、17歳以下や20歳以下のカテゴリーで成果をあげてきました。リオ五輪出場を目ざす世代でアジア屈指の実力を持つイラクも、若年層の世界大会で結果を残してきました。

 ひるがえって日本は、17歳以下と20歳以下の世界大会が遠くなっています。アジア予選突破が難しくなっています。その結果が、アジアカップのメンバーなのです。遠藤保仁(ガンバ大阪)らのベテランに頼らざるを得ないのは、彼らに代わる若手が育っていないからなのです。

もう一度、繰り返します。

日本代表に優秀な監督を連れてくるだけでは、日本代表は強くなりません。

5年後、10年後を見据えて、若年層の育成にいま一度本腰を入れる。日本サッカーの復活は、そこから始まるのです。

山本昌邦

山本昌邦

山本昌邦やまもとまさくに

NHKサッカー解説者

1995年のワールドユース日本代表コーチ就任以降10数年に渡って、日本代表の各世代の監督およびコーチを歴任し、名実ともに日本のサッカー界を牽引してきた山本氏。山本氏の指導のもと、成長をとげた選手達は軒…

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