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『がん(癌)の体験者の声』。第10回目は2019年に自身のブログでステージ4の舌がんであることを明らかにした堀ちえみさん。手術は成功し、退院のめどが経った頃、今度は食道がんが見つかりました。
もし、下記の3つに少しでも当てはまる方でしたら、ぜひ読んでみてください。
- ☑ 今、がん(癌)と向き合っている方
- ☑ 周りに、がんと向かっている方がおられる方
- ☑ 今を生きるためのヒントを探されている方
堀ちえみさんは今、再発もなく芸能生活40周年を向かえ、講演会など積極的に取り組んでおられます。この経験で何を感じられたのか?貴重なインタビューをお届けします。
どういったきっかけで、がんが発覚したのか、情況の詳細を教えてください。
口内炎が舌の裏側にできて、なかなか治らないなと思っていたのが2018年5月の大型連休明けくらいでした。特にどこかがつらいとか、しんどいとか、熱があるとかもなくて、がんだとは疑いませんでした。
別の病気もいくつか患っていて、飲んでいた薬に副作用で口内炎ができてしまったと思っていたんですね。ところがだんだん、お砂糖やお醤油など、ちょっとした塩分だけでもしみるようになって。それまで普通に生活できていたんですが、ある日、強い痛みに変わって、裏側にあった口内炎が表に出て来て亀裂が入って、舌全体が痛くてしょうがなくなったんです。
寝ていても痛い。痛みで起きてしまう。そして出血していることがわかったとき、これはただごとではない、と大学病院で診てもらったら、初見ですぐにがんだとわかりました。自分が口内炎だと思い込んでいたのが、がんで、しかもステージ4。どうして思い込んでしまったのか、悔しい思いをしました。
2019年2月に、がんに侵された舌の6割を切除して、ふとともの皮膚と皮下組織を移植して、同時に首のリンパ節に転移したがんも取り去りました。11時間の手術が無事に成功したんですが、退院前に行った検査で今度は食道がんが見つかったんです。舌がんの転移ではなく初期のがんでした。すぐに治療をしてもらいました。
励まされた言葉や、人との出会いなどあれば教えてください。
それまでにもいろんな病気を経験していましたが、舌がんと知って過去にないほどのショックを受けました。自分が、がんだなんて。どうしてなっちゃったんだろうと悔いて。
舌を取ってしまうと、うまくしゃべれなくなるだろうし、仕事ができるかどうかもわからない。もうこのまま手術しなくてもいいかな、とも思ったんです。私は人生をまっとうしたから人生を終えてもいいんじゃないか、と。
そうしたら娘が泣きながら、「生きて欲しい。あきらめないで手術をして、しゃべれなくてもいいからそばにいてほしい」と言ってくれて。それで手術を受ける決心がついたんです。戦わないといけないんだ、と。
食道がんが見つかったときにも、なんて不幸なんだとショックでした。しゃべれない、食べられないことを乗り越えて、リハビリを頑張って退院のめどがようやく立ったときでしたから、ものすごく落ち込んで。
そうしたら今度は主人が私に「ラッキーじゃないか」と。「え?」と一瞬、思いました。なんてことを言うんだと。でも「舌がんがなかったら食道がんも見つからなかった。症状が出たときは大変なことになっていたかもしれない。舌がんには意味があったんだ」と。これにはちょっと救われた気がしました。
もしかしたら主人は私以上にショックだったかもしれないけど、受け取り方ひとつでそうやって前を向けるんだ、って思ったんです。がんになったことを悔やむのではなく、良かったことに目を向けていこう、と。
今現在、どうがんと向き合ってお過ごしされているか教えてください。
がんは向き合うのではなくて、戦わないといけない病気だと思っています。早く見つけられたなら、体力があるうちに徹底的に叩く。
経過観察は、今は3カ月に1回のペースです。検診もあります。私はがんになって2年半以上経って、再発はないと言われています。でも、新しいがんが見つかるかもしれません。自分のどこに潜んでいるかわかりません。だから、検査をしっかりして、わかれば叩く。侵されない。スピーディに治療する。
日々気をつけているのは、規則正しい生活をすること。そして何より、どんなことでも前向きに考えて生きていくことです。どれだけ毎日を幸せに生きられるか。それを大事にしています。
幸せというのは人から与えられるものではなく、自分で作るものなんですよね。幸せだと思えば幸せだし、不幸だと思えば不幸。ステージ4のがんを経験して改めて強く実感したことは、幸せに生きていくことの大切さです。
やっぱり生きたいと思ったとき、死ぬのが怖くなりました。でも、舌を切除してうまくしゃべれなくなって、また生きていくのが嫌になって。それこそ落ちるところまで落ちたとき、ふと空を見上げたんです。そうしたら、ものすごくきれいだった。そのとき「ああ、生きてるって素晴らしいんだな」と思いました。
しゃべれない自分に目を向けたら悲しくなるけれど、空を見ることはできる自分に目を向けたらとても幸せを感じたんです。これが幸せに生きていくヒントなんだ、と思いました。
現在がんと闘病している人に向けて一言お願いします。
がんになったとき、がんのサバイバーの方から「自分もステージ4のがんを経験しました。でも10年経っても元気です」と言われたことがありました。ステージ4だからってあきらめないで、負けないで、と。
頑張れ、と言ってはいけないから、と「がん晴れ」とメッセージを書いてくださった方もいました。がんを晴らしていこう、と。
みなさんが言われていたのは、今はつらいかもしれないけど、乗り越えた先には楽しいことが待っているということでした。今までとは違う人生の喜びや見えるものの美しさを神様が与えてくれるから、と。それがキャンサーギフトなんです。
がんがくれたプレゼントをもらえるときが必ず来る。それがもらえるまで回復できることを祈っています、と。勇気をもらえましたし、楽しみが増えましたね。子どもの頃、サンタさんからのプレゼントを待っていたみたいに、すごくワクワクしました。キャンサーギフトって何だろう、と。
そこから強く生きられるようになれた気がします。晴れた日だけじゃなくて、前は鬱陶しいと思えた雨の日も、風が強い日も、楽しめるようになった。悪いことばかりではなく、いいことに目を向けて生きていけば、すべてが自分の幸せにつながるんだとわかったんです。そのことを、ぜひ多くの人に知ってほしいです。
芸能デビュー40周年を迎えて、どんな年にしたいですか。
若い頃はボイストレーニングをしなくてもよく声も出たし、歌えていました。ところが35周年のときに50歳になって、歌えない、声が出ない、音程が取れない自分に愕然として。病気もあって体調もよくなかった。
それで、5年後の40周年は節目だから、これまでサボっていた分トレーニングをしっかり頑張って迎えようと思っていたんです。そんな矢先にがんになってしまって、一気に谷底に突き落とされてしまって。
命がどうなるかわからない状態で歌うどころではなくなりました。しかも手術をしたら舌を切除していますから、うまくしゃべれないのに歌うことなんて不可能だと思いました。それで40周年はいったんはあきらめていたんです。
そうしたら娘に「ダメだよ。お母さんは40周年をやるって約束したでしょ。ファンの人たちが待っているんだから」と言われて。たしかにそうでした。これは何がなんでも歌わないといけないな、と思いました。それで「24時間テレビ」の出演をお引き受けして。
ありがたいことに、ボイストレーナーの先生は舌のことなどいろいろと勉強をしてくださっていました。それでだんだん歌えるようになっていったんです。今は番組で「ちょっと歌ってもらえませんか」と言われたら歌っちゃいますよ(笑)。
40周年のコンサートも企画しています。シングルになった20曲のうち、もう16曲は歌えますから、4曲をレッスンしているところです。どんなコンサートになるのかとても楽しみです。
ファンのみなさん、親衛隊も、今でも会って声出しをしてくださっていると聞いています。当時と変わらないコールにしっかり応えられるようにしないといけないですね。
今一番お会いしたいのは、風間杜夫さんです。ドラマ「スチュワーデス物語」でご一緒しましたが、私が手術を受けるとき、メディアに風間さんがたくさんコメントをくださっていて。それを拝見して、お礼を言いたいんです。元気になった姿もぜひ見てほしいと思っています。
堀ちえみほりちえみ
歌手
2019年1月ステージⅣの舌ガンと診断され 舌の60%と首のリンパに転移した腫瘍を切除し太ももの組織を舌へ移植する大手術を受けました。 手術は無事成功し「家族のために元気で生きたい、そしてまたステー…
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