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成功するまで続ければ 必ず成功する

低迷していた外資系下着メーカー、「トリンプ・インターナショナル・ジャパン」を、
19年連続・増収増益の優良企業に成長させた、同社前社長の吉越浩一郎氏。
毎朝8時半に開かれる早朝会議、
残業禁止、「がんばるタイム」の導入など、
スピードと効率重視のユニークな制度を次々に取り入れ、社員の能力向上を
会社の飛躍的な成長に結びつけてこられました。

今回は、革命社長、吉越浩一郎氏の経営マネジメントテクニック、
そして自身のワーク・ライフ・バランスの考え方など、氏の原動力と素顔に迫ります。

吉越浩一郎 (よしこし こういちろう)前トリンプ・インターナショナル代表取締役社長 / 吉越事務所代表

前トリンプ・インターナショナル代表取締役社長 / 吉越事務所代表

1947年千葉県生まれ。ドイツ・ハイデルブルク大学留学後、72年に上智大学外国語学部ドイツ語学科卒業。
極東ドイツ農産物振興会、メリタジャパン、メリタカフェを経て83年にトリンプ・インターナショナル(香港)に入社。
プロダクトマネージャー、リージョナル・マーケティングマネージャーを歴任し、
86年よりトリンプ・インターナショナル・ジャパンのマーケティング本部長に。
87年代表取締役副社長、92年に代表取締役社長に就任。そして2006年に退任後、吉越事務所を設立。

 

トリンプを変えた男

吉越さんと言えば、「早朝会議」、「NO残業デー」、「がんばるタイム」など、徹底的に仕事の効率化を重視した、ユニークな仕組みを取り入れ、会社の成長に結びつけられたことで有名です。そういった効率重視の考え方は、前職のメリタ・ジャパン(株)など、外資系企業や海外での勤務経験から生まれたものなのでしょうか?

話題の書

話題の書

そうですね。トリンプはドイツに本社を置く世界企業で、私は香港支社のプロダクトマネージャーとして転職したのです。前職のメリタ・ジャパン(株)でも香港勤務をしていた時期があったんですよ。ちなみに、そこでは残業など一切しませんでした。皆、個室を与えられていて、1日8時間、シーンと静まり返った中でひたすら仕事をし、定時になれば退社する。私も初めのうちは電話も鳴らない静かな部屋で仕事をすることに違和感を覚えましたが、慣れてみると非常に効率が良いことに気づいたんです。

私がトリンプで実施したユニークな施策や仕組みには、
すべて「効率性」の追求が根底にあります。会社のために良かれと思い、残業して仕事をする日本人ってたくさんいますよね。でも、それは違うのです。実際に残業中の社員を見ても、だらだら仕事をしていて、いつその仕事が終わるのかもわからない。本来なら1時間で終わる仕事を、3時間かけてやっている。あげくの果てに、残業のために睡眠時間が削られて、健康を害したりする……。だから、社員の労働時間を伸ばして、業績を上げることはやめようと。

ドイツ本社と同じ労働時間の中で、売り上げを伸ばすことができて初めて、私のマネジメント能力も評価されるのです。当時、日本のホワイトカラーは世界で一番効率が悪い働き方をしているといわれていました。それをまず改善し、世界と同じレベルで戦いたい、そういう思いはありました。

早朝会議の開始時間は8時半。始めた頃は反対もあったのではないでしょうか?

「そんなに朝早くから会議をするの?」など、社内からの強い反発がありました。だからまず、社員に参加してもらうための努力が必要でした。一人ずつ飲みに誘って説得する、会議の中からできるだけ早く成功事例をつくる…。そうやって、少しずつ賛同してくれる社員を増やしていったのです。今思い返してみても、地道な作業でしたね。

「会議などしなくてもいい」という経営者がいらっしゃるようですが、私からすると会議をしないでどうやって会社を取りまとめていくのか、疑問に思います。営業、マーケティング、物流、広告とバラバラに考え、動くより、それぞれの部署のトップが集まって情報を共有し、方向性を決めていった方がよっぽど効率的ですし、結果が出ますから。会社はやはりコミュニケーションが大事で、全社員がしっかり情報を共有することができれば、絶対に強い組織になれる。そう信じ、どんな反発を受けてもめげることなく、早朝会議を継続してきたのです。最終的には、全国の支店7カ所にテレビ会議システムも導入し、総勢約70名でMS会議(マーケティング&セールス会議)ができるまでとなりました。それだけではありません。会議で決まったことは、会議終了後、すぐ全社員にメールで報告します。

そうやって徹底的に情報を共有することで、会社内の無駄なすれ違いをなくし、社員の仕事の効率アップに繋げていきました。

会議は実際にはどのように進めるのでしょうか?

iv34_02時間にして、だいたい1時間から1時間半。その間に、約50の議題を1件につき2分以内で決断していきます。この会議は、社員のスピード感覚を徹底的に鍛える役目もあったのです。前長野県知事の田中康夫氏も見学に来られたのですが、進行の早さに感動されていましたね。案件に関わる人に、私がどんどん質問をぶつけていくので、社員は質問にきちんと答えられる準備をし、なおかつ、想定外の質問にも対応しなければなりません。当然、社員にとってこの会議は厳しい仕事ですが、結果的には、論理的思考、瞬発的な対応能力がどんどん身についていくわけです。

そして、会議で決まったことに関しては必ず、「誰が、何を、いつまでに」というデッドラインを設定します。もちろん、期間設定は短ければ短いほどいい。基本は「翌日」までで、最長でも1週間。1週間を超えるものは、重要なタイミングで私がチェックを入れていきます。このチェックが非常に重要です。

デッドラインを短い期間で設定すると、必死にならないと仕事が終わりませんから、社員も私語をする暇などなくなります。通常のやり方をしていては間に合わないので、効率をあげるための様々な工夫もするようになる。もちろん、そのデッドラインを守らない社員がいれば怒りますし、徹底的にその理由を問い詰め、実現するまで結果を追いかけさせるのです。

また、時には決断に迷うような議題が出てきます。しかし、そのような場合は、トップが決めてしまった方が良い。いろんな部署が参加している会議ですから、あちらを立てればこちらが立たない、という状況になることもあるのです。それでも決断の中に遠慮が見えてしまうと、方向性が決まりません。だから、誰かが傷ついたとしても、会社として方向性を1つに定める決断は必ずトップが行う。その決断力をトップは常に鍛えておくべきですね。

残業を減らせない会社も日本には多く見られますが、トリンプではどのようにして「NO残業」を実現したのですか?

社長自らが、電気を消してしまえばいいんです。私は、ひとつのボタンを押せば、自動的に全社内の照明が消えていくシステムを導入したんですよ。150万円もかけて(笑)。

トリンプが残業を禁止する理由は、効率性の問題ともうひとつ、女性社員が当社の大きな戦力であることが挙げられます。一般的にみても、「残業が多いため、家庭との両立ができない」という理由で退職する女性社員は多いのです。当社の場合、優秀な女性が多いですから、それでは大損に繋がります。いずれにせよ、人材を失うことは避けたいものです。

最初は水曜日と金曜日から始めて、徐々に浸透させていきながら、毎日実施に切り替えました。NO残業デーを開始した当初は、電気を消したとたん、「キャー」という悲鳴が社内から聞こえてきましたよ(笑)。

「残業はだめだ」、と口を酸っぱくして注意しても帰らない社員ってどこにでもいるんですよね。そこで始めたのが、罰金制度です。これでトリンプは「NO残業」を実現しました(笑)。私はマネジメントしていく上で、ゲーム感覚を大切にしているのですが、これも一種のゲーム。罰金を取られないように社員が必死に工夫して、仕事の効率性を上げれば良いわけです。ちなみに、罰金はボーナスから差し引きます。ただし、個人から取るのではなく、部署単位のボーナス予算から。そうすると、残業している社員は同じ部署の人から睨まれるでしょう。これは罰金よりもきついですよね(笑)。もちろん、罰金を科せられた部署はあります。有言実行ですから、私は。そして、最終的には残業する社員は当社からいなくなりました。罰金だけではなく、優秀な社員には社長賞などのインセンティブも出します。人を納得させる一番の方法って、笑いとか楽しいという要素が重要だと思うんです。だからこそ、このゲーム感覚がマネジメントにはかなり有効的。いろいろと応用してみるとおもしろいと思います。

 

トリンプを辞めた理由 -継続的に伸び成長していく企業の条件

20年以上も勤められたトリンプを退社された理由は?

会社のためにも自分自身のためにもそれが一番だと思ったのです。ですから、すっきり辞めることができました。実は、ドイツに本社を置くトリンプはオーナー会社で、数年前からオーナーの家族内で世代交代が始まっており、私もずっと自分の引き際を考えていたんです。経営はトップダウンが一番だと思っていますし、世代が変わって若いオーナーになった時に、彼が思う存分仕事ができる環境にするためには、私が辞めたほうが良いな、と。未練が全く無いわけではありませんが、私の決断が正しかったと確信できるよう、今後もトリンプを見守っていきます。

経営にはトップダウンが重要だとお考えなのですね。

iv34_04そう、「船頭多くして船山に登る」のことわざのとおり、トップは一人の方が良い。また、組織はできるだけフラットの方が良いと思います。一般的に組織が大きくなると、トップから平社員までのレイヤー(階層)が増えてしまい、トップに現場の様子が伝わりにくくなります。現場が分からないトップが決断しても、現場とのズレが生じますし、それによって仕事のスピードが遅くなることは、とても非効率です。だからトリンプでは、無駄なレイヤーを増やさなくて良いように、社員一人ひとりの守備範囲を広げていきました。あまり広げすぎても逆効果なので、これは調節しながらですが、一人ひとりの「能力×時間×効率」を伸ばしてあげることで、フラットな組織を保つ努力をしてきたのです。

しかし、「ワンマン経営」ではありません。社長室のドアを閉め切り、社員と顔を合わせず仕事をしているようではだめ。経営者にとって「現場が通信簿」だと思うのです。トップの現場感覚は非常に重要ですし、その感覚があるからこそチャンスを逃さず掴むことができます。オフィスの中でやったどんな仕事も、現場で反映されなければ意味がありませんからね。だから私は、「現場が通信簿」を信念として、機会あるごとに現場に顔を出していました。

吉越さんが会社経営をする上で、大切にしていたことをもう少し教えてください。

そうですね。先ほどの現場に顔を出すというのもその一つではあるのですが、「経営は、人との関係」だと思うんです。トリンプの場合、早朝会議が社員間のコミュニケーションの場として非常にうまく機能してくれました。ですが、いくらトップダウンといっても、社員全員が本気にならないと何も変らないんですよ。だから、経営者と社員との関係は非常に重要なんです。

実は、「早朝会議」を始めてから3年ぐらいは、会議終了後に「落ち込んでいるヤツはいなかったか」などと、毎日、社員を見渡して神経をすり減らしていたので、黒かった髪の毛が一気に白くなってしまったほどです(笑)。この会議は、発表前の人事情報と給与関連情報以外は、すべての情報を全社員にオープンにすることが基本。なので、思いがけない問題が次々に露呈したり、心苦しい事を会社のために言うこともありますので、非常に気を使いました。それでも初志貫徹を決め、会社を変えるためにはどうしたら良いか、ひたすら考えていましたよ。そして、我慢しながら、目をつぶりたくなるような膿を少しずつ出していったことで、結果的に会社は増収・増益という喜ぶべき方向に向かい始めたのです。

吉越さんが人との関係を大切にしてきたから、今のトリンプがあるのですね。では、継続し成長していく企業の条件とは何だと思いますか?

iv34_05今の時代、経営にスピードは必要不可欠。そして、周囲の環境に合わせて皮膚の色を変えるカメレオンのような、環境に対する柔軟性が必要だと思います。トリンプが増収・増益を続けられたのは、「早朝会議」を行うことによって、社員と会社全体が、スピードと環境に対する柔軟性を維持し続けられたからです。私がトリンプに入社してから売り上げは5倍に伸びましたが、実は、バックオフィスの従業員数は変っていないのです。これはなぜかと言いますと、社員の能力が向上し、1人の社員が5倍の仕事をしているからなのです。私が早朝会議で決めたデッドラインを追いかけ、残業もできないから、社員は仕事の効率性を考え、スピードを上げるために工夫せざるを得ない。それらを繰り返しながら、徐々に、5倍もの仕事をこなせるようになったのです。スピードと言えば、おもしろいことにトリンプの飲み会の開始時間も非常に早い。18時15分から始まって20時前には終わってしまう。それでも社員は相当飲んで楽しんでいるんですよ。他の会社では考えられないことかもしれませんが、体の芯まで、時間を効率的に使う性質が染み込んでいるんですね(笑)。

「5倍の仕事をこなす」というと非常に優秀な人材だと思うのですが、 人材教育はどのようにされていたのですか?

実は、トリンプは特別な教育研修は一切していないんです。効率よく創意工夫をしながら仕事ができる社員というのは、常に自分のやるべきことを自分で見つけ、行動できる人でなければなりません。これを私はよく「板前さんの技が盗める能力」と呼んでいるのですが、優秀な人や成功する経営者が、誰かにその成功法則をきちんと習ったのか、というとそうではありません。あなたの会社の中で、教えてもらうことが当たり前だと思っているような、能力の低い部下はいますか? もしいるとしたら、それが会社がなかなか伸びない原因の一つだと思った方がいいですね。

そもそも、自分から学び成長していく感覚というものは、研修などで養えるものではないでしょう。そういった意味で、会社は初めからそういう能力を持った人を雇わなければ、時間やお金を無駄にしてしまいます。それに、この「技を盗める能力」を持ち合わせている人であれば、能力を発揮できる場さえ提供してあげれば、自分でどんどん成長していくのです。そしてやはり、この「技を盗める能力」、を持っているかどうかを見極める段階、つまり最初の採用の段階でそのような人かどうかを確かめ、優秀な人材を確保する事がとても重要だと思います。

ちなみにトリンプでは、直属の部下の推薦のもと、最短24歳で課長に就任できる、「課長代行制度」を導入しています。優秀な社員には実力に応じた場を与えてあげること。これが社員のモチベーションにも繋がります。

また、部下に対するコーチングに関して私が思うことはコントロールやトラスト(信頼)ではなく、チェックすることが大事だということです。よく「部下を信頼せよ」といいますが、信頼した上で方向性がずれていないか、しっかりデッドラインを守っているかなどをチェックしてあげなければ、軌道修正をしてあげられません。このチェックが部下の成長にとって、とても重要だと思うポイントの一つです。

 

ワーク・ライフ・バランスの実践

トリンプでは、「リフレッシュ休暇」取得制度をつくっていらっしゃいます。連続16日以上の休暇取得を義務付けるというのは、日本では珍しいですよね。

iv34_08これは、自分が休みたくてつくった制度なのです(笑)。課長以上の管理職を対象に、年間で連続16日以上の休暇取得を義務付けた制度ですが、休みの間は部下に権限委譲しますから、部下の育成にも繋がります。とはいえ、この理由は後づけ。何より私は家族と過ごす休暇が大好きで(笑)。3週間の休みを必ず取っていましたね。でももっと凄いのはドイツ本社。年間6週間も取ります。それである程度の売り上げを出すわけですから、驚くべきことです。若い頃は仕事に夢中でがむしゃらになることもありましたが、ある時気づいたんですよ。ちゃんと休む時間が必要だって。日本は勤勉さを奨励するあまり、残業や休日出勤することを美徳とみる傾向がありますが、それが原因で体や精神のバランスを崩している人も多いですよね。もう少し考えた方がいいんじゃないかな、と思います。

  社員にしっかり休んでもらわなければ意味がないので、また罰則規定を設けました。休暇を取得しなかった人は、罰則として、翌年のリフレッシュ休暇の権利を失う、というものです。最初のうちは、休暇のタイミングを逃した社員もいましたが、今ではほとんどの社員がリフレッシュ休暇を取得しているようです。それも3週間まるまる(笑)。

 ちなみに、私の妻はフランス人です。フランス人がバカンスに出かける場合は、最低でも1カ月は休暇を取ります。彼女の影響もあるでしょうね。妻の生まれ故郷の南フランスに行って、のんびりと自宅のプールで泳いだり、フランス在住の息子がやって来て一緒に過ごしたり……。この家族と過ごす時間は、自分の人生にとってかけがえのないひと時です。こういったリフレッシュの時間があるからこそ、新鮮なアイディアや企画が生まれるのだと私は思っています。それでちゃんと仕事で結果を出していれば、かっこいいじゃないですか。僕にとって人生で大切なものに優先順位をつけるとすれば、家族と健康が第一、その次が仕事。それをしっかりと実感できているからこそ、自分や家族を仕事の犠牲には絶対にしません。いつか仕事は終わる時期が来るわけだから。仕事は人生の一部ではあるが、決してすべてではない。そこをはっきりしておいた方が良いと思うんです。

仕事を人生の一部として捉えていらっしゃるわけですね。

iv34_06そうです。仕事を引退したら、人生が終わったような気持ちになるなんて、悲しいじゃないですか。少しでも引退後の準備をしておいた方が良いと思いますが、日本ではなかなか難しいと聞きます。そういえば、仕事観に関してもヨーロッパ人と日本人の考え方の違いを感じました。私がトリンプを辞めた時に、「おめでとう」と心から喜んでくれたのは、ヨーローパに住んでいる友人です。ヨーロッパに住んでいる友人の多くは50歳過ぎたらどんどんリタイアしていき、ゴルフや旅行だとか、仕事だけではない人生を楽しみ始めます。しかし一方、日本の経営者や友人からは、「65歳までは仕事を」と勧められましたよ。

 では私はどうしたいかといいますとと、お金をある程度残すことができ、無理をしなければ生活ができるくらいになったら、あとは自分では仕事せず、何か素晴らしいことをやっている人のお手伝いをするとか、そういう方が有意義な気がしています。
 なぜか日本人って肩書きにこだわる人が多い。会社の名刺がなくなっても堂々としていれば良いのに、「今は仕事から退いていて」と遠慮がちになってしまったり……。日本のビジネスマンは偉くなるにつれて、相手が自分ではなく肩書きという冠に向かってお辞儀していることに気づかなくなっていきます。でも人生の主役は冠ではなく、自分自身です。そのことを仕事しながらも、常に理解しておくことは必要だなって思いますね。そうしておけば、仕事ばかりの人生をがむしゃらに突き進むことが、自分の人生にとって本当に良いことかどうか考えるようになりますよ。大事なのは、死ぬ間際になって、「自分の人生は本当に楽しかった」と胸を張って言えることではないでしょうか。もちろん、その中に仕事があってもいい。自分が納得できるように生きることことが大切だと思います。

退任後は何をしたいと考えていらっしゃいますか?

仕事はしたくないですから、遊びたい(笑)。今、興味があるのはクルーズですね。妻と一緒に行きたい。しかし、トリンプ退社後に吉越事務所という個人事務所を設立しましてね。とてもありがたいことに、講演依頼を中心とした実に様々な仕事が舞い込んできております。せっかく引退したのだから、少し仕事はセーブしようと思っていますが、根っからの好奇心旺盛な性格が災いして(笑)、面白そうだなと思うものや、どうしても私でなければできないようなお仕事は受けさせていただいております。

講演では、「効率的に会議を行うためにはどのようにしたら良いのか?」「残業をなくすためにはどうしたらよいのか?」などをテーマに、事例を交えながらお話ししています。妻から仕入れたフランス仕込みのジョークも織り交ぜながら、会場の皆さんが楽しめるような工夫も怠りません(笑)。経営者向けのお話をする際は、自身の経営経験の中で非常に大切にしていた「成功するまで続ければ必ず成功する」という精神をお伝えすることが多いです。皆様が、現場で、諦めず、強く、元気よく、仕事をしてもらえることを目標にお話をしています。

妻から教えてもらったフランス語の慣用句に、「システムD」というものがあります。デブルイエ(もつれた糸をほどく)という単語の頭文字をとったものです。糸がからまって解けなくなったように見えても、一本を緩めることができれば、その糸は意外と簡単にほどけてしまうもの。「システムD」とは、「難問も工夫をすれば解決できる」という、難問に対する一種のスタンスを示す慣用句なんです。例えば、睡眠時間が足りなくて眠いけど、朝出勤しなければならない時、フランス人は、「システムDでいこう!」と言うそうです。どこかに解決の糸口は必ずある、問題は必ず解決できる、そう考えながら、私もこれからの人生をできる限り有意義に過ごしていきたいと思っています。

本日はお忙しい中、貴重なお時間を頂き、どうもありがとうございました。

文・写真:鈴木ちづる  (2007年5月17日 株式会社ペルソン 無断転載禁止)  

 

 

 

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