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圧倒的な勝ち組になるのは、どんな人なのか?

東京大学在学中、Eテレ「テストの花道」で高校生らに勉強法をアドバイス。卒業後、NHK仙台放送局の契約キャスターを経て、大手外資系金融機関のアナリストになった。スペイン他25カ国での海外経験もある国際派にして、“エリート過ぎる”フリーアナウンサー。

2015年には、クイズ番組「Qさま!!」で初出場初優勝。経済番組「日経モーニングプラス」サブキャスターとして活躍するほか、討論番組、バラエティ番組などでも幅広く活躍している。

自身のビジネス経験、ビジネスパーソンやマネジメント層、経営層とのコミュニケーションを通じて学んだ「勝つ人材」になるためのヒントを聞いた。

きちんとコミュニケーションが取れることが大切

ご著書『圧倒的な勝ち組になる効率のいい考え方と仕事の仕方』では、今の時代の圧倒的な勝ち方について書かれています。天明さんは「圧倒的な勝ち」をどのように定義されているのでしょうか?

このタイトルだけを読んだ方には、ちょっと鼻持ちならないイメージをもしかしたらお持ちかもしれないですね(笑)。何より伝えたかったのは、自分はどうしたいのか、自分なりにはっきりさせることの大切さでした。それがはっきりした状態になれば、そのためにチャンスに出会えたり、自分でも努力ができたりする。これがないとスタートラインに立てないんです。

一般的に勝ち組というと、高い年収だったり、条件のいい相手と結婚することだったり、をイメージする人も少なくありませんが、自分にとっての勝ちというのは、本当にそうなのか。もっとオンリーワンのものがあるんじゃないか。それが、「圧倒的」という言葉をつけた意味なんです。

漠然とこんなふうになりたい、というのではなく、それぞれの人に中にそれぞれ本当の思いがあるはずです。人によって違うはずなんです。それをまず、自分の中でしっかり求めないといけないと思うんですよね。それがあれば、世の中のぼんやりしたものさしや数字が気にならなくなります。

実際、まわりの人はせっかく入ったのにもったいないと思うかもしれないけれど、一流企業をポンとやめて独立して、小さな事業を始める人もいる。でも、本人はそれで新しいチャンスを手にできるし、新しい人脈もできるし日々を充実させられる。これは圧倒的な勝ち組だろうと思うわけです。

仕事で勝つ人材を目指すとなると、どんなことが求められますか?

まず大事なことは、一人で仕事をしているように思えても、まったく一人でやっている人はいない、ということですね。だから、大事になるのがコミュニケーションなんです。自分一人で仕事をしているわけではないから、より密なコミュニケーションが大事になる。

そしてコミュニケーションがしっかり取れて、一人で勝つのではなく、みんなで勝てるような人になることが、本当の勝つ人材だと思っています。チームとして会社に利益をもたらすことができることこそ、評価を高めるカギになるからです。

だからこそ、悪い情報もちゃんと伝えられることが大事になります。悪い情報がなかなか上がってこない組織が実際にありますよね。情報を出してしまうと、自分が処分をされたり、評価を下げられたりします。

しかし、結果的にそれによって組織全体が危機を迎えかねません。組織全体、チーム全体の評価を落とさないためにも、悪い情報もきちんと言える、コミュニケーションが取れる人が、最終的には勝つ人材になると私は思っています。

コミュニケーションには、苦手意識を持つ人も少なくありません。いいコミュニケーションをするためのヒントはありますか?

私はNHKでアナウンサーをしていましたが、アナウンサーというと話す仕事だというイメージを持つ人が少なくありません。実際には話すだけではなく、聞くことがそれ以上に大事になるんです。

会話はキャッチボールで行われます。相手の言っていることを理解して、的確な質問を投げかけることが必要です。しっかり聞き、時にはちゃんとメモを取って、質問を打ち出していく。
インタビューには台本がありますが、その通りに話が進むことはまずありません。そうすると、話してほしいことを引き出すような質問も求められてきます。曖昧な表現があれば、もっと具体的に話してもらおうとする。これは、一般の会社の仕事でも同じだと思います。

だから大事なことは、実はきちんと事前に予習をしておくことなんです。例えば、相手のことをどのくらい理解できているか。相手について調べておいたり、相手の状況がわかっていれば、それだけいろんな問いかけができることになります。

コミュニケーションというと、ノリよく話をすることが大事だと思われることもありますが、実は意外に地道な準備が大きく活きてきたりします。下準備として、人の話を聞いて理解するための努力をどのくらいできるか。それは相手の情報だけでなく、いろいろな情報にアンテナを張っておくことも同様です。いろんなことをインプットしておくことで、いいコミュニケーションができるようになるんです。

私はアナウンサーとしての訓練で、コミュニケーションを鍛えられましたが、実際には情報を伝えたり、会話を盛り上げていくことは、それほど難しいわけではないと思っています。コミュニケーションが苦手、人と話したり、問いかけをすることが得意ではないという人の中には、質問をすることが苦痛だと考えている人も少なくないようです。たくさんの質問を考えることが大変だ、と。

しかし、私もたくさんの質問を準備しているわけではありません。問いかけをしたら返事が戻ってきますから、その返事に対して問いかけをしていけばいいんです。返事をしっかり聞くことができていれば、それをひねった変化球の質問が繰り出せる。

だから、アナウンサーの仕事をするときにも、大変さは感じません。すべて新しいこと、新しい質問をしようとしたら大変ですが、相手の返答が次のコミュニケーションのヒントになるからです。返事から、考えればいいんです。

上司の指示はある程度、ふわっとしているほうがいい

管理者、上司やマネージャー、経営層としての心得として、いいコミュニケーションのヒントは何かありますか?

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ひとつは、いい情報はもちろん、悪い情報もこの人にはあげられるという信頼感が作れることですね。単に自分が勝つのではなく、組織やチームとして勝つ、まわりに利益を与えられる存在を評価できる、という空気をいかに出せるか。

実際、報告だけでなく相談でも、この人になら、という上司には話がたくさん向かうと思うんですね。そうすれば、いいアイディアや意見が上がってくることになります。実際、部下としても、やってみたいことはたくさんあるわけです。

提案しても、むげにはしないでくれる、育ててくれようとしている、受け入れてくれる。言われたことだけやればいい、ではなく、一緒に考えてくれそうな人。そういう上司には、いい相談がたくさんいくと思います。

だから、上司から指示ばかり、指示が細かい、という印象をコミュニケーションで持たれてしまうと、これは考えものだと思います。部下にとっては、仕事はそういうものになってしまうからです。

指示はある程度、ふわっとしているほうが、部下は考えて育つと思うんです。そのためにも、部下は指示待ちではなく、部下からもアプローチしていく必要もあるわけですが、それには上司のコミュニケーションも重要になるんです。

部下が言い出しやすい空気感があるか。そうしてくれそうな感じがするか。若い人の中から、目の前の仕事に忙殺されている、という声が聞こえてくることがありますが、これは指示がはっきりし過ぎているのではないかと思うんです。

上司からは、指示待ちの部下が多い、という声もありますが、それは若い人たちが受け身になるようなコミュニケーションをしているからです。受け身でいい環境を、上司が作っている可能性があります。

それこそ、「適当にやっといて」くらいに言われたほうが、「こんな感じでやってみたんですが、どうでしょうか」といった報告も出てきたりする。少しでも裁量権をもらえることで、モチベーションも上がると思うんです。

マネージャー層としての「勝つ人材」を考えてみるとき、何かヒントになることはありますか?

最終的には人間的な魅力、というところに行き着くのではないかと思います。昇進する人たちも、まずはスキルや結果で評価されていきますが、最終的に絞られてくれば、人間力の勝負になりますよね。

では、人間力は何が左右するのかというと、心の余裕やゆとりだと思うんです。そして、それが大きく現れるのが、どのくらい他の人のことに関心をもったり、他の人の面倒を見ることができるか、ということではないかと。そこにこそ、時間をかけられるかどうか。まわりの人に時間を使い、私利私欲ではなく、みんなの利益を考えて行動できるかどうか。

まわりの人は、意外に上司をよく見ているものです。何を大事にしているか、鋭く見抜いている。上司はそれを知っておいたほうがいいですよね。そして、きちんとまわりに感心を持つ。部下を見て、こういうところはいいな、ときちんと評価する。自分には足りないから、と学びにしてしまう。肩書きにとらわれず、いろんな人を見て、自分の鏡にできる。そういう上司は素晴らしいですよね。

その意味で、人間観察力は大事かもしれません。部下のいいところは、どんどん参考にする。そして、他の人の評価ポイントも聞くといいですね。自分が評価しているポイントと、他の人が評価しているポイントは、違っていたりするからです。自分の観察と、他の人とすりあわせてみる。正しい価値観を持つために、大事なことです。

自分の軸をしっかり作ると、会社の枠からも飛び出せる

勝つ人材になるためには、やはり目標設定も大事かと思いますが、これについてはいかがでしょうか?

学生時代はやはり受け身で、やらされ感があるものですよね。目標はある程度はっきりしていて、わかりやすかったわけです。試験でこのくらいの点数が取りたい、こんな学校に行きたい、など指標もはっきりしていました。

しかし、社会人になったら、完全にフリーです。もっと積極的な態度で行かないと目標が見つかりません。逆に自分の軸をしっかり作ると、会社の枠からも飛び出せるようになります。

私の夫は弁護士ですが、海外のビジネススクールでMBAを取得しました。弁護士で留学というと、普通はロースクールに行きますが、経営者や証券会社とのお付き合いなどもあって、夫はあえてビジネススクールに行くことにしたんです。

結果的に、周囲とは違う軸を持つことになり、M&Aの仕事などで大いにプラスになっているようです。弁護士としても、差別化ができた。自分の軸を持ったことで、まわりからもはみ出せるようになったんだと思うんです。

私の場合はアナウンサーになり、証券会社に勤め、その組み合わせで経済番組のオーディションの話があって、自分の強みをうまく活かすことができました。人には弱みもあるわけですが、うまく強みを活かせば軸になりえます。

もともと大学時代にNHKのEテレの番組制作をお手伝いしていて、アナウンサーの仕事に興味を持ちました。アナウンサーというと、ともすればお飾りみたいなイメージもあったんですが、実は先頭に立って責任を持って番組を仕切っていたんですね。それがカッコ良くて。報道などで世の中の役に立てる仕事だとも思いました。

ところが、すでに募集は終わっていて、受けられるのは地方しかありませんでした。地方局の現地採用は待遇も違います。ただ、好きなことじゃないと努力できないと思いました。努力するためにも、好きなことをやらないと、と思ったんです。

なってからどうするかは、あまり考えていませんでした。2年は下積みだと思っていました。それでやってみてわかったのは、得意と苦手がある、ということでした。原稿を読むことはあまり得意ではない。原稿を読むのがうまい人は、音楽的なセンスがある人だったりするんです。

実際、上手な人の中には音楽大学を出ていたり、吹奏楽をやっていた、といった人もいました。私は実は音楽はあまり得意ではありません。

ただ、アナウンサーの仕事は原稿を読むだけではありません。インタビューなどで臨機応変に対象者とやりとりする。時にはアドリブで対応する。こっちは得意だったんです。なるほど、これならできるかな、と思いました。

ただ、多くが2、3年で現場を離れるんです。2年ほどやってみて、マスコミ以外でも経験を積んでみたいと思いました。それでご縁をいただいたのが、外資系の金融機関でした。実はチャンスはそれほどたくさんなくて、ここくらいしか採用してくれるところがなかったんです。

投資銀行でアナリストの仕事をしましたが、家には寝に帰るだけ、みたいなハードな日々でした。結婚後も続けられるとは、とても思えませんでした。ちょうと夫の留学もあり、スペインに一緒に行ったんですが、パートナービザで行ったので、私は仕事をすることはできませんでした。

当初は一人でのんびりしていたんですが、だんだん暇をもてあますようになりました。働きたい、と思い始めたとき、オーディションの話があって、夫が「やってみたら」と言ってくれたこともあって、チャレンジをしたんです。

振り返って思うのは、何か動いているときは、気持ちも落ち着くことです。何もなくて待っているときのほうが辛い。育児などで待ちの状態にあるときには、何か大きな方向でもいいので、目標を定めておくのがいいと思います。

こういうことがしてみたい、こういう勉強をしてみたい、みたいな漠然としたものでもいい。それだけでもまったく違うと思います。

また、人生は思った通りにいくわけではありません。私もそうでした。それを受け入れる心の余裕も大事だと思います。特にうまくいっていないときには、自分をきちんとケアすること。うまくいったら、こんなことが待っている、といいイメージを持つこと。結果的には、そういう時期も必ずプラスになります。

それから、クイズ番組などにも出られるようになったんですね?

そのときに改めて知ったのが、キャリアアップのために勉強をしているビジネスパーソンの人たちがとても多いということでした。『テストの花道』などで勉強の仕方の話をすると、「番組を見ています」「参考にしています」という声をよくかけられました。

暗記の仕方、予定の組み方、メモの取り方、参考書の選び方など、社会人の方々にも、こんなところでお役に立てるんだ、と知ったんですね。参考書も、いきなりべったり覚えるのではなくて、最初はざっくり7割理解する、くらいのほうがいいんです。2度目で理解を深めていく、というスケジュールの組み方をする。

ところが、真面目な人ほど、最初からしっかりやろうとしてしまう。それで最初のほうで苦しくなって止まってしまったりする。勉強には、やり方があるんです。

経済番組のキャスターになってからは、経済新聞を読んだり、経済雑誌を読んだり、エコノミストの人たちから話を聞いたりしていますが、独学で勉強もしました。

経済学で意外に大事なと思ったのは、金利です。金利とは何か、がわかっていれば、いろんなことが見えてくる。中央銀行の方向性、政策効果、金融機関の動き。経済がセオリー通りに動かない理由も見えて来る。金利はとても重要なんです。

社会人でも勉強することは、とても大事。新たな勉強を意識することで、可能性を大きく広げていけるようになると思います。

――企画:辻本 翔人・細野 潤一/取材・文:上阪 徹/写真・編集:対馬 玲奈

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