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読む講演会Vol.14

2018年05月07日

No.14 竹内薫/“読む講演会”クローズアップパートナー

竹内薫

竹内薫

サイエンス作家

人工知能の時代に、知っておくべきこと。No.14 サイエンス作家 竹内薫

未来予測は8割は外れるが2割は当たる

No.14 竹内薫

今日は人工知能の話をしようと思います。持って帰っていただきたいのは、人工知能の細かい具体的な活用例とかではなく、どちらかというと、哲学みたいな話です。これから15年くらいに、世界はどう変わるか。そうした科学予測はたくさんありますので、そうしたものをご紹介しつつ、ではどうすればいいのかを考えていきたいと思います。

15年後というと、今の小学生が社会に出て行く頃。では、教育とか人材育成はどうすべきなのか、など、多少抽象的になるかもしれませんが、それを前半にお話します。後半は、人工知能時代に生き残るための人間らしさ、知恵、それは結局、クリエイティビティだと僕は思っているんですが、それを具現化する数学の問題を持ってきました。それをちょっと解いてもらおうかなと思っています。

私はサイエンス作家です。NHKの『サイエンスZERO』という番組に6年間出ていましたが本職は作家です。基本的に本を書いている人間です。最近は人工知能についての話をよく求められます。原稿執筆依頼がたくさん来ますが、半分以上はもしかしたら人工知能について、かもしれません。第四次産業革命がいま、鋭意続行中ですが、そのキーワードが人工知能だということだと思います。もちろん人工知能だけでなく、IoTとかビッグデータとか、いろんなキーワードがありますが、実は未来予測は8割外れるという話があります。これは僕の友人が統計を取ったんです。

過去にいろんな未来予測がなされました。それがどれくらい当たるか。1910年代。近い将来、通勤はすべて空飛ぶ車に変わる、という科学予測がありました。現状どうでしょうか。いないですよね。予測は大抵はずれるんです。ガンの特効薬がいついつまでにできる、とかもそうです。そういう予測も、専門家の予測よりもかなり遅れて表に出てきたりします。10年遅れたり、50年遅れたり、100年遅れて来る。あるいはまったく来ない。そういうことが多いんです。でも、2割は当たります。当たる2割は何かというと、基本的には情報科学、コンピュータ関連、インターネット関連の予測です。よく半導体の性能予測がありますが、ああいうものは意外と当たります。逆に、脳科学はほとんど当たらない。歴史家が過去ずっとデータを取って見出したことです。第四次産業革命が来ていて、キーワードは人工知能、IoTです。科学予測を世界各国のシンクタンクやっていますが、これはまず当たるだろうと思います。

ネット上での発言を解析して転職先を紹介

こういう仕事が消えます、残ります、みたいな一覧表もよく見かけますね。眉唾だと思いますが、かなりの確率で当たるんでしょう。人間の仕事の半分は消える、と言われています。例えば、会計士。すでに、アメリカでは厳しくなっています。会計士を一人雇うのにかかるお給料を払うなら、会計ソフトを導入できる。人的にはいらなくなるわけですね。企業経営者としては、小さな企業の場合、一番大変なのは人件費です。それに伴う厚生年金、年金保険。だから、ソフトウェア導入は理に適っています。アメリカでは、かなり浸透しています。ただ、日本はまだ大丈夫です。日本の会計システムは、複雑で例外が多いからです。会計ソフトだけでうまくいくのか、というと微妙です。でも、今後はどんどん自動化されていくでしょうね。

J-WAVEのラジオ番組にゲスト出演したとき、ヘッドハンティング業界の方が来られていて、びっくりしたことがあります。スカウティというヘッドハンティングの会社の人です。イギリスでAI修士を取ったと言われていました。名刺に書かれていて。話を聞いて、時代も変わったと思いました。その方がやっているのは、インターネット上の情報をたくさん集めてくることです。それを解析して、近々会社を辞める人を抽出して、その方にマッチングした次の就職先の提案する、というビジネス。ある日、突然メールで、「あなたはもうすぐ会社をやめますよね。次の転職先いかがですか」とやってくる。登録も何もしていないのに、です。会社を移ろうとか、意思表示をしてるわけではないんです。

僕なら、こんなの怪しい、ひっかけだと思うでしょうね。でも、この会社、とても注目されています。若い人は大丈夫らしいです。若い人は、ツイッター、フェイスブックなどでネット上で発信しています。そこに会社の話とかも書いていて。それを人工知能が分析して、こういう発言ずっとしている人は、会社を3カ月以内にやめる可能性が高い、などとわかるわけです。そしてメールが来る。若い人は、「自分が発信したものを見てくれていて、次の転職先まで提案してくれるなんて素晴らしいじゃないか」ということのようです。我々みたいな年代には感覚的によくわかりません。ある日突然、メールが来て、「あなたはもうすぐサイエンス作家をやめたいと思っていますね。つきましては次の就職先はここ」なんてなったら、ふざけんな、でしょうね(笑)。そのあたり年齢的なものがあって、人工知能に違和感ない普通の若い方々と、我々のような恐竜化しているような人間とは、どうも感覚の差があるのだと思います。

レジの仕事はなくなるが、店員の仕事はなくならない

他にもいろいろありますね。無人コンビニ、物流無人化、無人施工。コンビニだと、「Amazon GO」。アマゾンが実験的に進めているサービスです。お店に入るときに、スマホでピッとやる。そうすると、アマゾンのアカウントの買い物が始まりましたよ、となる。お店に入って、なんでもいいんですが、カップケーキを取って、懐に入れる。普通はそれをやると、警備員さんがついてきて、お店を出たところで捕まるんですが、Amazon GOはこれでOKです。入ってチェックインすると、カメラがずっと見ていて、人工知能がその人の行動を解析してくれます。何か商品を取って、自分の鞄に入れました。それで出ていくと、課金されて終わり。レジがないんです。解析しているのは、人工知能です。

将来的には、レジで打ち込むという仕事は、ほぼなくなっていくんだろうと思います。とはいえ、うちのそばにあるコンビニのおばちゃんの仕事がなくなるのかというと、僕はなくならないと思っています。そのお店は、周囲のコンビニとは違って、商店街に古くからある酒屋さんなんです。酒屋さんがコンビニに変わった。そこに住んでいて、出てくるのは、町内会でも有名なおばさん。僕は毎朝、コーヒーを買いながら雑談します。そういうのは、残念ながら、人工知能にはできないわけです。その人はレジは打たなくなるかもしれないけれど、いるだけで意味があるんです。だから、その仕事はなくならないでしょう。レジの仕事はなくなるかもしれませんが、店長さんの仕事としてはなくならないんです。人間的な仕事はどうしても必要。人間同士のコミュニケーションは残ると僕は思っています。

世間的には逆な感じがありますよね。ロボットがいて、受付になっていて、そこに行って話す、みたいなイメージ。でも、僕はあれはあまり長続きしないと思います。コミュニケーションを図るという意味では、たぶん無理かな、と思っているんです。簡単な会話型の人工知能は昔からありました。面白いもので、いろいろと打ち込んでしまうんです。悩みみたいなことも書いちゃったりする。でも、単純なプログラムで、まったく理解をしていないんです。パターンがあって、それを返しているだけ。それでも、語りかけてしまったりするんですけど。それから何十年経って、ディープラーニング全盛になって、ぜんぜん違ってきたのはわかっていますが、それでも機械には意識はないじゃないですか。話してくれているロボットくんは意識を持っていない。なのに、感情移入してまわりの人間が話しかけるのは、自分の心を相手に投影しているに過ぎないわけです。やっぱり商店街のおばさんとは違う。今のAIの普及の仕方をみていると、表面的な部分とディープな部分があるのかな、という気がしています。それが、消える仕事、消えない仕事、と意外と関係しているのかな、と考えています。

インターネットセキュリティの専門家が何をしているか

No.14 竹内薫

番組で、掃除機が乗っ取られた、という話をしたことがあります。今日は人工知能の話をしているんですが、人工知能だけではなく、IoTも含めてお話をします。掃除機に脆弱性が見つかったんですね。昔だったら、掃除機は掃除をする機械なので、それで終わりですが、最近はこれがインターネットにつながっている。スマホでコントロールできる。そうなってくると、乗っ取られるリスクが出てくる。乗っ取られると何が起きるか。例えば、カメラがついていたら、カメラで掃除ロボットが家の中を動いて、家の中全部、見られちゃうわけです。それ嫌じゃないですか。それから、スマホが繋がっているので、スマホのほうが情報を取りにくる。かなりやばい状況になりますね。掃除機が乗っ取られると、一見、乗っ取った人ができることは他人の家を掃除することのように思えますが、違う。泥棒が家の鍵を完全にカチッとあけちゃうような、それに近いような状況が起きるんです。玄関ではなく、掃除機が入り口になるんです。

番組で面白いことがありました。インターネットセキュリティについて何度も取り上げたんですが、そこに来る専門家の方がほぼ例外なしに、あることをやっていたんです。セキュリティ対策です。パソコンのカメラの部分に絆創膏を貼っていたんです。僕は以前から貼っていたんですが、打ち合わせすると、専門家ゲストの方、インターネットセキュリティの方々が必ずこれを貼っていました。

どういうことかというと、ハッキングって、やろうと思えばできるわけです。僕は20年前にプログラミングは引退しましたが、30代はずっとプログラミングだけで生計立てていました。中には悪い奴がいて、倫理観があまりなく、人のパソコンに侵入しちゃってもいい、と考える人もいる世界です。そういう技術を持っているんです。狙われたらやっぱりハッキングされちゃいます。乗っ取られちゃう。当然、プロテクションたくさんかけて、自宅でもルーター2つかましたりするんですが、やっても本気でこられたら突破されちゃいます。国家機密だってハッキングされちゃうんですから。そうすると、乗っ取られちゃう可能性が前提になっているということです。だから、インターネットセキュリティの専門家になればなるほど、やられるときはやられるという前提があって、それで最後の最後の防御戦が、絆創膏なんです。なんというか、AI、IT、IoT、大変なハイテク時代なんですが、最後が非常にアナログな絆創膏というところが、なんともいえない面白いところです。カメラが使えないから便利じゃないよね、と思われるかもしれませんが、バンドエイドはテレビ会議のときは、はがせばいい。それ以外は貼っておけと。意外に面倒くさいとやらないんですが、そうすると、乗っ取られちゃいかねないんです。

世界を驚かせた、2012年の「グーグルの猫」

No.14  竹内薫

そもそも人工知能って何でしょうか。1958年、もうちょっと40年代からいろんな芽生えはあったと思いますが、よく本に出てくる説明図は58年ですね。図にしましたが、一番左が入力層と言われるもので、一番右が出力層と言われるもの。左から数字が入ってきます。そして回路があります。右から数字が出ていきます。これが人間の脳がやっていることのシミュレーションです。ちょっと乱暴ですけど。左から画像が入ってきます。数字のデータです。デジカメとか、画像、数字の羅列。数字が入って来ると、回路を通って、別の数字が出てくる。それだけの話です。ちょっと飛躍しますが、将棋の盤面が数字として数値化されて左から入ってくる。そうすると、次なる一手の数字が出ます。それが今や、名人に勝てちゃうわけですね。将棋の名人もびっくりの次の一手が出てくる。そういうところまで来ちゃったわけです。その理由は、中間層というのが、どんどん増えていって、加工が変わっていったからです。それだけなんです、極端な話。

昔、僕が書いていた、あまり役に立たない、何をやっているかわからない人工知能のプログラムと、現在いろんなことができて、将棋の名人に勝っちゃうようなプログラム何が違うかというと、真ん中の層が厚いわけです。だから、深い層。ディープラーニングということになるわけです。数字が入ってきて、数字が出ていく。じゃあ、学習は何をやっているか。途中の回路の部分ですね。その通りやすさを調整していくわけです。水道管だと考えてください。左から水が入ってきます。水道管を通って右から水が出ていきます。この水道管の太さを調節するわけです。全部を微調整して、ほとんど水が通らないところと、すごく通るところ、みたいなのがたくさんあったりする。それを全部、最適化してやると、将棋の名人に勝てるようになるよ、と。わかりやすくいうと、そういうことです。もちろんこれだけじゃないですが、基本的な原理はそういうことなんです。

人工知能は、これまで何度もブームがありました。第一次、第二次ときて、毎回、頓挫してしまった。僕の友人たちも人工知能の研究に入っていった人、けっこういますが、毎回、研究費をたくさん使ってガチャガチャッとやって、結局何も出ません、ということが多かった。ところが2012年、「グーグルの猫」が出てきます。これを見たときに、「あっ」と思いました。グーグルの研究所で、動画から切り出した画像を1000万枚、機械学習させたんです。そうしたら、猫を認識するようになった。その画像は、ランダムな画像なので、人間の顔もあれば、動物の顔もあって、犬もいるし、いろんなものがいる。そのときに、猫の画像を見せると、さっきの経路で、ある経路が反応しました、と。つまり猫を見せると、ある経路が反応する。猫を認識する回路ができたということです。これは、けっこうショッキングで、それまではなんとなく、猫というのは耳が尖っています、ヒゲが生えています、にゃーと鳴きます、毛が生えています、みたいな特徴みたいなものをデータとして教えていました。それを一切、何も教えていないのに、ただただ流しているうちに、勝手に学習しちゃったって話です。これはもしかして使えるんじゃないか、と僕が初めて思ったのが、この2012年です。

なぜ人工知能は、東大受験ができなかったのか

No.14 竹内薫

東ロボくんの話をします。東大の受験をするロボットです。これは、センター試験などの受験をしていって、偏差値が57まで上がったんですね。そこで、研究はいったん終わりました。東大受験は断念しました。なぜ東ロボくんはダメだったのか。過去問を学習していったんです。英単語も穴埋め問題も、ネイティブよりもできちゃう。歴史の年号も、歴史学者より知っている。数学の計算も数学者よりも早い。そんな状況なのにも関わらず、ある問題が解けませんでした。

問題 「彼は報告書をまた出し忘れた。おまけに会議に遅刻した。」
この文章に続く文章は次のどれですか?

1.私は寝坊した
2.会議には報告書が必要だ
3.彼は社会人として自覚がない

この問題、難しいですか。そんな難しくないですよね。自然に続きそうなのは3番ですよね。でも、3番がぴったりくる、というのが東ロボくんにはわからないんだそうです。東ロボくんには例えば、遅刻、という言葉に反応して1番を選んだり、報告書に反応して2を選んだりする。3はどうして選べないのか。我々が3を選べる理由は、会社で実際にこういうことやった経験がある。やった人がいるのを見ている。その人がどんな目にあったかを知っている。あるいは学校で宿題を忘れたとき、どうなったかがわかっている。そういう体験、経験値があるからです。それが、常識ということ。社会常識があるんです、我々は。学校とか、いろんなところに行って、人とコミュニケーションを取っていった中で、体験として自分が持っているものがある。東ロボくんの世界は過去問の世界なんです。過去問の世界には、宿題を忘れて怒られるというデータがない。こういった普段、我々があまり意識していない社会常識はたくさんあります。それをどうやって教えるんだ、という話なんです。知らないと、東大の入試の問題で、解けない問題が出てしまう。これが発見できた、という面白い研究だったんです。

これは現状のAIがどういうものを学習して、どこに秀でて、という話と、逆に彼らの弱点みたいなものも明らかにしたんですね。人間が今後15年、2045年くらいまでおそらくシンギュラリティは来ないので、それまでどうやって生きていけばいいのか。そのヒントでもあると思います。これがわかればいい、ということです。東ロボくんは空気が読めない奴なんです。我々は空気が読める。読めない人もいますが、いちおう読める。そうすると、東ロボくんよりベターになれます。コミュニケーションができる、というのは、人間の特権で、重要なことなんです。だから子どもの教育でも、過去問ばかりやらせて、受験受験、とやっていたら、もしかすると東ロボくんに近くなっちゃうかもしれません。できれば、もうちょっと人間同士というか、子ども同士、先生とのやりとり、人前で発表するとか、議論するとか、そういった経験値が必要だと僕は思うので、このへんはけっこう未来のヒントであると思います。

人工知能で翻訳ができるようになってきた

No.14  竹内薫

最近かなり人工知能が進んできたなと思うのは、画像を見て、文章をつけてくれることです。解説文ですね。これが面白い。例えば、オートバイが走っている。犬が芝生の上を走っている、など書いてくれる。でも、この画像。パックをめぐって2人のプレーヤーが戦っている、というのは違いますね。二人は戦ってない。後ろの人は、遠くにいます。ボケているから、距離が離れているので、二人は争っていない。完全に間違いではないが、間違っている。合っている場合もあるし、間違っちゃう場合もある。こういう段階でもあるんですが、画像を見たとき、そこで何が起こっているかということを、文章化できるというところに、人工知能は来ています。これを見て感じたのは、「あ、これ、もしかして私の仕事なくなる」ということでした。僕は作家で、自分でも書くわけですが、海外の科学書を翻訳する仕事もあるんです。自分で書くよりも収入的にも安定していたりするんですが、それがなくなっちゃうんだな、と思いました。雲の中から飛行機が飛んでいる、という英語があります。この文章が与えられたときに、逆生成もできるんですよ、実は今のAIは。画像化してくれる。それで、画像からも日本語に生成してくれる。

何を意味しているかというと、翻訳ができちゃったということなんです。英語があって、中間段階があって、日本語に、と。まだまだ未熟なんで、まだ僕の仕事はなくなりませんが、中間さえ忘れてしまうと、英語が日本語、日本語が英語に翻訳できるということです。でも昔から機械翻訳はあったじゃない、と言われるかもしれませんが、昔からの機械翻訳は、私のようなプロの作家は使ってないんです。何度も試しました。20年前にも試しました。10年前にも試しました。最近も試しましたが結局、ずっと開発されてきた翻訳のソフトは残念ながら、商業出版には使えないレベルなんです。いろんな理由があるんですが、おそらく真ん中の中間層がなかった。人間の翻訳家は、英語を僕がまず読みますよね。それを直接、直訳的に逐語訳はしてないんですよ。まず英語を見たら、自分の中でそれをイメージ化するわけです。絵である必要はなくて、もっと抽象的な概念かもしれない。音かも知れない。何らかの格好でイメージ化するんです。それから、日本語に落とすんです。それを翻訳家はやっている、その極めて原始的なバージョンが今、どうもAIがやり始めている、ということなんです。もうちょっと進化してきちゃうと、将棋と同じで、ハッと気が付くと、竹内薫訳という本が出なくなって、出版社はコスト削減のために、翻訳家に仕事を出さずに、おそらく自社の英語翻訳ソフトに出すでしょうね。新潮社AI部翻訳、みたいな、そういうことになる。科学翻訳というのはもう15年後にはもうおそらくやらないだろうな、というのが、これを見ればわかるわけです。

AIの開発をする人はどんどん必要になる

じゃあ人間はどうすればいいか。先ほどから言っている通り、人間は意識がある。自我がある。心を持っている。だから、コミュニケーションをやっていきましょう。そういう仕事はなくならない。そういう予測はあるわけですね。学校の先生とか、お医者さんとか、セラピストさんとか、コンサルタントの方はなくならない。会計士の方は失業すると言いましたが、全員が失業するわけではなくて、計算をやる必要はもうなくなりましたよ、という話です。計算はもう人工知能、計算ソフトに任せましょう。ただし、会社の経営って、そんなに単純なものではないわけです。例えば、どこかから資金を引っ張ってくるとか、いろんな話があって、厚生年金とか保険とか、そういうものをどうすればいいか。おかしなことをしようとすると、社員の方の不満が出てくるかもしれない。だから、社労士の方や会計士の方と相談するわけですよね。小さい会社であればあるほど必要です。コンサルタントとして、人間同士で腹を割って話し合う。これは失業しない。常に必要だから。

もうひとつは、おそらく計算科学力でしょう。例えば、僕はフリースクールをやっていますが、マインクラフトにハマっているお子さんがいます。算数の試験中、ボーッとしているわけですね。30分くらいでみんな終わっているのに、ぜんぜん終わらない。辛抱強く見ていたら、1時間半かかっている。なんだろうなぁ、と思ってハッと気づいたら、頭の中でマインクラフトをやっているんです。どういうことかというと、三次元の設計みたいなことを頭の中でずっとやっているわけです。先生が講義しているときに、その子がマインクラフトのことを考えていたら、少なくともその子にとっては、先生の授業よりかはマインクラフトのほうが面白いんです。それは意味があることなので。それはやっていてもいいかな、と思っています。ただ、あまりにやり過ぎた結果、漢字をぜんぜん覚えません、とかはまずいんで、基本スキルは必要ですけど。

これからは当然、計算科学力、例えばAIの開発をする人はどんどん増えていくじゃないですか。メンテナンスする人も必要です。各社でチーフデジタルオフィサーという職種が増えてきていると言われますが、こうなると、チーフテクノロジーオフィサーではなく、デジタルは全部その人が統括する。そういう職種が増えてくる。だとしたら、デジタルに秀でた人には、今からいい時代が来る。プログラマーの方も、普通にプログラムを書いていると、徐々に自動化されてくる部分も出てきます。AIも当然、プログラムを書くようになるわけです。そのときに、AIではできない部分がある。コンサルタントと同じで、プログラムも独創的なもの、クリエイティブなもの、自分がゼロから考えるものがすごく重要になる。これができるプログラマーにはいい時代が来るわけです。

英語でクラークというと、パターン化された事務作業をする人です。会計計算とかもこの事務に入ります。そういう仕事は全部、機械がやるので、消えていく。マネージャーは臨機応援にやる人です。全体を見ながら、人間コミュニケーションの問題も出てくるし、お客さんからのクレームもくるし、そういうものをクリエイティブに解決していく。それがマネージャーなので、これはどうしても必要です。消える職業は、単純な事務作業をやっている仕事。これはもういらなくなっちゃう。ほぼ明らかです。ここでちょっと、しばらく余興を楽しんでもらいます。超計算社会を生き抜くためには、クリエイティブにならないといけないということで、少し問題に挑んでもらおうと思います。

やってはいけないのは、昔ながらの暗記学習

今日、僕がみなさんに最初にお伝えしたかったことは、人工知能時代は来るということです。これは当たる予測に入っている。大変です。ただし、シンギュラリティみたいなものは、専門家は来ないと言っているので当分平気でしょう。それを前提とすると、人間というのは、人工知能にできないことをやるべきなんですね。だから、ひとつの手としては、人間コミュニケーションみたいな部分を磨いていくことです。もうひとつは、人工知能を制御する側に回ることです。プログラマーとして人工知能の開発、メンテナンス、そういうものに関わっていく。これが、生き残り策でしょう。

子どもの教育も同じです。ずっと数学とプログラミングみたいものに特化して伸ばしてあげるのか、人間コミュニケーションや芸術みたいなものを強くしていくのか。それが15年後に大きな力になってくる。やってはいけないのは、昔ながらの受験のための暗記学習です。暗記というのは基本的に、これさえ暗記しておけば試験に通る、一生安泰です、みたいな考え方です。それはもう崩れていきます。受験システムもどんどん変わってきています。すでに変わってきたのは、世界では探求型の学習がどんどん増えていることです。もう探求を続けるしかないんですね。

では、万が一、自分の仕事がなくなったらどうするか。次の仕事に移るわけです。そのためにはもう一回、勉強しないといけない。そのときも、ワンパターンの暗記ではないんです。自分で考えて、次の仕事に必要とされるものは何か、常に模索していく。探求していく。それが必要です。だから、小さい頃から探求のクセがついているお子さんは心配ありません。何が起きて、人工知能がどれくらいの職業を奪っても、常に探求していく子どもは新しい挑戦として楽しめると思います。大人もそうです。暗記のいい点はあります。スキルが効率よく身に付きます。暗記を否定はしませんが、いったん暗記した知識を自分で探求していくことによって、初めてそれが使える知識になるんです。組み合わせることが必要です。そして、最後に数学の問題。数学の問題で、クリエイティブな思考とは何かが、明らかになると思っています。与えられた公式でプログラムするのではなく、最初のところから自分で楽しんで、うまくプログラムとして完成させる。それは人工知能にはできないことです。それがまさに今後、生き残りをかけた技能として、必要なことなのでは、と思っています。

(文:上阪徹)

竹内薫

竹内薫

竹内薫たけうちかおる

サイエンス作家

情報番組のコメンテーターとして、広い知識と視野が評判の講師。 東京大学教養学部教養学科(専攻、科学史・科学哲学)・東京大学理学部物理学科卒業。マギル大学大学院博士課程修了(専攻、高エネルギー物理学理…

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