今月は、今企業が取り組むべき課題、またその課題をクリアする戦略、マーケティングに対するご自身の理念を、
情熱系コンサルタントの岩崎さんにお伺い致しました。
またそういった企業戦略を動かす上で大事な、人材(社員)に対してどういったものを企業は習得させなければならないのか、という貴重なご意見も頂きました。
岩崎剛幸(いわさき たけゆき)
株式会社 船井総合研究所 東京第六経営支援部 チーフ
昭和44年静岡県生まれ。
平成3年3月 明治学院大学 経済学部卒業。
平成3年4月 株式会社 船井総合研究所 入社。
現在、同社第六経営支援部チームリーダー。
「戦略は思いに従う」を信条に、ファッションを専門分野として、現在では、百貨店、アパレルメーカー、広告代理店、通信販売業、不動産、IT企業、B to B営業会社その他、他業種にわたる豊富な成功事例をもとに、現場支援と年間150回を越える講演活動により、情熱に満ち溢れた企業づくりに邁進している。
今企業が取り組むべきマーケティングトレンド
-岩崎さんが理念とするマーケティングとは何ですか?
私はこの仕事をはじめて14年になりますが、「送り手が受け手を満足させるために行うあらゆる活動」ということをマーケティングの定義にしています。マーケティングの定義と言うものは幾つもあり、最近アメリカのマーケティング協会がまた新しい定義を出したのですが、凄く分かりにくい。もっとシンプルに言い表す言葉がないだろうか、と思っていたところ、考え出てきたテーマがこれです。情報や物を発信していく側がそれを販売し、対価としてお金をいただくという「交換」を発生させる時に、何をしていけばより効果的か、ということがマーケティングです。商品を磨きこんでより良くしたり、売っていく人が商品の魅力、付加価値を作っていったり、会社のブランディングを考えるのも勿論そうです。つまりどんなプロモーションをするとしても、あらゆる活動はすべてお客様の満足度を最大限に引き上げる、と言うところに集約されてくるので、こういう言葉を私は付けさせて頂きました。
ただそれだけでは、どこの会社も同じような事をやっていくことになるので、実際の戦略を具体化していくことが必要となってきますよね。その戦略を具体化していく所に私が凄く重要だなと感じたのが、「想い」です。戦略に「想い」が加わらないとどんなにいいマーケティング戦略を立ててもうまく行きませんし、実行に移されません。そんなところをこの14年間のコンサルティング経験の中ですごく実感しています。
-「想い」をもう少し詳しくご説明頂けますか?
はい。私は学生時代から、マーケティングの勉強をしておりますし、ある程度のマーケティングの基本書は洋書で全部読んでいます。様々なケーススタディの経験もありましたので自信はあったのですが、実際の仕事となった時に、戦略通りに進めているのに全然上手くいかない、ということが起きたんですよ。そこで足りなかった一番のポイントは、「想い」の部分。会社の人達がどんな人達で、どういう想いを持って集まってきていて、今回何をやろうと思っているのか、というところを、きちんと踏まえた上で戦略を立てていなかった。そこで、最近私が信条にしている「戦略は想いに従う」という考えにたどり着きました。マーケティング戦略の基本をおさえながら、その会社の人たちの想いをそこに付加し、のせていく。
ですから、私はマーケティングをうまくやってくために、そこに働く人たちのモチベーション徹底的に上げていく事を片方でやっていきます。それに合わせて上手くいくための成功の原則(マーケティング戦略)をはめ込む。これを両軸にしてやっていくのが凄く重要だと思っております。
-実際に社員のモチベーションを上げるために岩崎さんが、行った例はありますか?
そうですね。できるだけ若手に権限を委譲する、ということでしょうか。 最近の例で言うと、今たまたまお伺いしている企業が凄く業績を伸ばしておりまして、お付き合いして6ヶ月で売上が前年比125%、経営利益が129%に伸びました。そこで徹底的に行ったのが、若手メンバーが主体的に動けるような新規プロジェクトを作って、その成功事例を会社全体に広げていくということ。それを繰り返し行ったのです。
その結果、まずその若手のメンバーの意識が一気に変わりましたね。今までは会社から言われた事をただやらされて動いてきたものを、自分達で考え、全体を動かすことができるということを実際に体験させたんです。そうしたらこの人達がすごく主体性を持つようになってきて、会社を変えようと動き始めたんです。これがたぶん一番伸びた原因だと思います。そしてもう一つ大切なのは、委譲されたらその人たちはそれを絶対達成しなければならないという責任感を持つということ。そして結果を出す。結果を出さないで権限を委譲されて仕事をするだけなら誰でも出来ます。しかしそれだと会社も続かない。そして、プロジェクトを任されている本人が楽しめるような雰囲気作り、サポート、仕組み作りによって、会社はより良い方向変わっていく、というように考えています。
-今、マーケティングのトレンドキーワードは何だとお考えですか?
私は、ターゲティングとコンセプト、そして一体化という3つのキーワードが大事だと考えております。
ターゲティングというのは、誰に売るのか、という対象を明確化することなんですが、出来ていない会社が非常に多い。ものすごく凡庸に売上げを取ろうと思うと、あらゆる顧客をターゲットにしてしまう事が今多くの企業で見られる傾向です。全ての人たちに好かれるものというのは非常に難しいですし、その商品の魅力が上手くアピールできず、失敗に終わる、という結果になってしまいます。だから出来るだけ顧客を絞り込み、その対象に絞ったプロモーションを心がけるべきですね。
そして二つ目のコンセプトというのも凄く大事なんですが、これもしっかりと出来ていないことが多いんです。あなたの会社のコンセプトは何ですか?あなたの売っている商品のコンセプトを一言でいうと何ですか?と聞くと、言い表せることができる人ってほとんどいないんです。存在理由ですから、非常に大事な部分ですし、コンセプトをきちんと作ることは必ずやって欲しいです。
最後に3つ目の一体化についてですが、ターゲットを決め、コンセプトをきちんと設定してもそれをみんなできちんと理解して売っていこう、というところまで持っていかないと売れないんですよね。
先ほどお話した企業なんかでも勿論ですが、今は売らない経営という話をよくしています。こちら側から売り込んでいく経営ではなく、お客様が興味を持ってくれるようなコンセプトを作り、ターゲティングをしながら、その商品にかけた想いの部分を全員が理解して納得して、お客様にそれをアピールすればいいのです。まだまだこれが出来ていない企業が圧倒的に多い分、基本的なことですが、それがしっかり出来ているところは強いですね。
-確かに。
では、そういった企業の取り組みにおいて、今後の社員にはどのような能力が必要だとお考えですか?
そうですね。まずは、企画力。今、どこの企業も調査・分析はシステムの発展により、すごく出来るんですよ。だからうちの会社のやる必要性もなくなってきて(笑)。でもこの先がない。分析をうけてどういうキーワードを抽出して、何をしていけばいいのか、というところを導き出せないんですよね。現状分析の報告書だけでは前に進めません。先を見据えたプランが必要です。
ですから、企業がしなければならない教育の中では特に企画力、そしてそれをプロデュースしていく力に重点を置かなければならない。そして自分の魅力を出すためのセルフプロデュース力や、数ある情報を整理する情報整理能力、加えて弊社の若手社員向けに始めたんですが、話伝力というもの。話して相手に伝える力。話して相手にその内容がきちんと思ったとおりに伝えられなければまったく意味がないので、分析ができて企画ができて、アイディアや情報を相手に伝えられる社員を育成していくことが求められると思います。特に営業や販促、プロモーションをやっている方々はこの能力がないとダメですよね。
-そんな能力を身に付けていくには、どういったものから着手していくのが良いと思われますか?
ひとつはモデルになりそうな人材を見つけること。
最初にポイントだけいうと、モデル人材を見つけ、それから情報発信する機会を増やすということと、自分の強みを見つけるという事この3つだと思っています。自分の強みを見つけたり色々していくためにも、まずは【こういう人になりたい】とか【このような考え方を持っている方に近づきたい】、とかそういうモデルを最初に見つける。そしてその人に接する機会を増やして、その会話や交流の中で学んでいくというのが一番早いやり方だと思います。
私は、(株)生活創庫の堀之内九一郎さんによくお会いします。1ヶ月に1回くらい食事に行ったり、打ち合わせをしたり、色々お付き合いをしてきたのですが、非常に勉強になりました。堀之内さんは、商売をするということはどういうことなのかを真剣に考え、そのために生まれてきたような人なんですよ。だから商売というものの本質を堀之内さんから勉強しようと思って、話をしていました。何が一番大事なのか、というような話をしていくと、結局生きていくなかで何が必要なのか、というすごく興味深い話に発展していきました。その哲学を、絶対本にしたら面白いですよ、とサンマーク出版を紹介し、出版となったら本当に売れたんです(笑)。
-そんなことがあったんですね。
ですから、まずはこの人から商売のセンスについて勉強したいとか、どこか一部分で良いと思うんですよね。全人格的に受け入れたいというモデル人材はそうそういませんし。身のこなし方を勉強したいならこの人、とか営業センスを身につけるならこの人とか。そういうモデル人材をまずは見つけて勉強していくというのが最もやりやすいやり方ではないでしょうか。 それがある程度できるようになってきたら、今度はそういう人たちから聞いたものを自分なりに咀嚼し、自分の言葉で発信するというのは、必ず勧めているんです。発信する事を数多く取り組んでいくと、だんだん情報発信のレベルが上がっていくと思いますし、その発信の中で、見方の違いや、もっとこうしたらいいんじゃないの、というアドバイスをしてくれる人が必ず現れてくる。そこで自分らしさとか自分の強みというのがはじめて分かるんですね。
最終的には自分の強みをどこまで伸ばすかがポイントになります。強みを発見していくまでにそういったモデル人材を探し、まねをしてみる、行動をしてみる、知識を発信する、それではじめて強みの確認をすると、いうのが大事だと思います。
-最後に講演で一番伝えたいことは何ですか?
私が講演の冒頭で必ずお話しているのは、【組織は戦略に従う、戦略は想いに従う だから必ず何事もなしとげるのだという強い想いを持つことが必要です】ということです。
つまり熱い情熱を持つ事が大事だと思うのです。
情熱のないやつはもういないいでいいよと。仕事をしなくてもいいという話をしています。情熱を全面的に出せる人もいるし、出せない人もいる。かっこ悪いからと言って。でも出せるか出せないかは、どうでもいいんですよ。ただ、ほんとにそういう燃え滾るような何かを心に持っているかが大事で、それは必ず仕事をする相手に伝わってしますので、必ず持ってほしいですね。特に若い人たちにはこういうお話をします。
-素晴らしいお話をありがとうございました。
文・写真 :鈴木ちづる (2005年3月15日 株式会社ペルソン 無断転載禁止)
岩崎剛幸いわさきたけゆき
ムガマエ株式会社 経営コンサルタント 代表取締役社長
人生において大切なもの、それは情熱である。 経営においても、情熱がなければ未来はおろか、現在を生き抜くこともままなりません。 どんなに素晴らしい戦略を組み立てても、そこに思いがなければ実現しない。…
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