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エベレスト登山と三浦家流健康法

三浦豪太

三浦豪太

スキー関係執筆活動・解説

昨年、お父様の三浦雄一郎氏(70歳)とエベレスト山日本人初の親子同時登頂を見事成し遂げられ、おじい様の三浦敬三氏(100歳)も未だにスキーを滑っていらっしゃいますね。
そんな偉大な方々の下、ご自身もオリンピックに出場したりと大活躍の三浦豪太さんに山登りの魅力と、皆が驚く三浦家の長寿・健康の秘訣を尋ねました。

三浦 豪太(みうらごうた)
プロスキーヤー
三浦雄一郎氏とエベレスト山 初の日本人親子同時登頂記録達成

 

【経 歴】

1969年    神奈川県鎌倉市に生まれる

1981年    アフリカ、キリマンジャロ(5895m)を最年少(11歳)で登頂

1983年    アメリカ留学

1988年    ユタ州ローランドホール学院を卒業、同年ユタ大学入学

1991年    全日本フリースタイル・チームに選ばれる

1994年     リレハメル冬季オリンピック(ノルウェー)出場、27位

1995年     フランス、ラクルーザ世界選手権14位

1996年    ワールドカップ 総合17位

1998年    長野冬季オリンピック13位、同年ブラッコムワールドカップ5位

2000年   ワールドカップ長野斑尾大会解説

2001年   ワールドカップ福島大会、長野飯綱大会解説

        ユタ大学スポーツ生理学部卒業

        株式会社 ミウラ・ドルフィンズ 入社

        ヒマラヤ、アイランドピーク(6152m)登頂

2002年   ヒマラヤ、チョオユー(8201m)登頂

2003年   世界最高峰 エベレスト(8848m)登頂
        初の日本人親子同時登頂記録達成

エベレスト登山と三浦家流健康法

――豪太氏は11歳の時にキリマンジャロに登頂、そして2003年には、雄一郎氏とともに世界最高峰エベレスト山登頂、初の日本人親子同時登頂記録を達成していらっしゃいますが、豪太氏にとっての山登りとはどういうものなのでしょうか?

写真:三浦豪太 小さい頃、僕の父に連れられて、キリマンジャロや富士山、エルブルース等のいろいろな山に行くことができたのですが、その頃から山に行くということは旅することであったり、新しい世界に導いてくれるものであったと思います。

僕は競技としてのスキーは続けてきたのですが、競技というのは、「自分の中に新しい世界を探す」「相手との競技の中で自分を高めて新しい世界を探す」ものです。しかし、山というのは自分の内外両面で新しい世界を探せると思うんですよね。

山という新しい環境に身を置いた時に、自分がどういったことをするのか、それは自分を知ることであり、そこで起こる未知のことや周りの環境といった外の世界を知ることでもあります。山登りに関わる人々の数だけ、いろいろな文化を知ることでもあるし、とにかく新しい世界に山は導いてくれる。 そういったことが、山に登るということに対して僕が感じていることですね。

――昨年の雄一郎氏とのエベレスト山登頂は、大変印象的だったのですが、親子で登るといったことに対してはどのようなお気持ちだったのでしょうか?

 エベレストの企画はもともと父が登ると言ったときに、「僕も是非同行したい。」と言ったんです。これは何故かと言ったら、三浦家のルーツというものがエベレストにあるような、そんな気がしたんですよ。

元々、父の三浦雄一郎が世界で有名になったきっかけというのは、エベレストにもあるし、勿論エベレストというのは、死と隣り合わせになった世界だっていうのは、その頃から分かっていたのですが、「何がそんなに人を惹きつけるのか?」「そんなに凄い世界があるのか?」「自分の命ならまだしも、他人の命まで巻き込んでも見たい世界というのはあるのか?」そういったことを凄く知りたくなってその衝動からでしょうか。

 33年前に父がエベレストに行った時も、シェルパーが7人亡くなっているんですよね。それでも父はエベレストのスキー滑走というものを成し遂げました。勿論キリマンジャロとか、エルブルースに行った時に山では独特なことがあるんだ、と分かっていましたが、新しい世界という意味では、父をそこまで何が駆り立てたのか、とこのエベレストっというものに凄い魅力を感じたわけですよ。

ましてやそこに33年を振り返った父が一緒に登るということはそれだけで、親子って言うより、世代を超えたチャレンジというか、自分のルーツを探る、新しい世界でありながら、自分のルーツを探れる機会かな、そう思いました。
 

 

写真:三浦豪太――エベレストの山頂付近には、生きて帰れなかった方々の遺体がそのままあると伺いましたが、肉体的にも精神的にも究極の環境で、「生」や「死」を意識する局面もたくさんあったかと思います。そんな中でも高いモチベーションを保ちつづけられたというのは、何がそうさせていたとお考えですか?

 遺体ですか…、ミイラ化したものがありますね。たまにテントの切れ端かなぁ、と思ってみたら、96年に遭難した有名な登山家の遺体がウェアーごと風に揺れてひらひらしていたりですとか。彼は有名な登山ガイドなんですが、人を導くガイド自身がそういう状態になるというところ、それがベレストの持つ怖さです。僕は2つしか見なかったんですが、私どものテントの裏側にも遺体が発見されましたね。

現場に行ったら、高いモチベーションとうのはまず第一に山に登るということにあるんですけれども、その前に「生きて帰る」ということを優先させなければならないわけです。山の中で安全に帰ってくる、冷静な判断を怠らない、そうなると常に死を意識しなければならないんですよ。死を意識するほど、動物にとって高いモチベーションをあげてくれるものはないんじゃないか、と思います。

モチベーションという言い方は、ちょっと違うかもしれないのですが、人間や動物が持っている本能的な力、これをやらなきゃ生きていけないということがありますね。例えば、テントに着いてもうへとへとに疲れきった時であっても、そこで水を補給しないと、次の日には登れないし、生きていけないんですよね。どんなに疲れていても外に氷を取りに行ってストーブで氷を溶かし、水を作らなければならない。普段の生活からはなかなか分かりにくいですが、そこに死というイメージがあるだけで、どこからか力が湧いてくる、これが動物の本来の力なんでしょう。

 また、「死」を意識するからこそ、「生」を意識する、というようなこともあると思います。山に行くのは、自分を高めるためだと思うのですが、死んだら元も子もありません。だから常に「死」を意識していなければならず、そうやって生き抜いていくことが、つまり「生」を知ることになるんです。勿論山に登ったことの名声だとか、そういうものは後からついてくると思いますが、もし名声だけを求めているのだとしたら、山には登れなくなってしまうと思います。「生」と「死」、その中で「自分はここまでやったんだ。」と感じることができるというのが、自分の山登りに対するモチベーションだと思います。

 

――おじい様の「敬三氏」やお父様の「雄一郎氏」・そして「豪太氏」とみなさん元気で活躍なさっておりますが、三浦家伝統の健康法ですとか、教育法というものがあるのでしょうか?

写真:三浦豪太 僕らの本『三浦家のいきいき長生き健康法』でも紹介されておりますが、健康やトレーニングに関しては、それぞれがそれぞれのやり方でやっています。そんな中でも、一つ伝統として考えられるとすれば、「放任主義」。祖父も父も、とにかくある環境に子供を置くんです。それで何かを手取り足取り教えることは決してしない。自分で見つけさせるんですね。

祖父の場合は父を蔵王の山に連れて行って、とにかく大人についていかせ、祖父の背中を追いかけさせたりしたようです。僕もキリマンジャロとかエルブルース等に連れていかれましたが、父が何をすれば良いかを教えてくれることもなく、スケジュール通り動かなければならない。
次の宿はここだ、水は飲んでおけ、等最低限のことだけなんですよ、教えてくれるのは。

ところがやっているうちに、これはこういう風にしないと次の日に困るだとか、いろんな問題が出てきますよね。例えばティッシュを持ち歩かなければトイレに困るなんていうところから、ちゃんと自分の安全を確保しないと危険が迫るわけで、ロープの確保だとか、滑り落ちた時も自分でどうにかしなければならないので、自分でなんとか練習をするんです。やっぱりそういった環境でのモチベーションは、「死を避ける」といったところから発生するものだと思います。ところが、最低限の責任を自分で負ったとしたら、自然の中では凄く自由度が広がるんですよ。責任という意味で、怖がってばかりいなければならないのかと言うと、そういうわけではありません。新しい世界が広がって行くんですよね。自分ができることも増えていきますし。それが自分の報酬だとか、自分の中での楽しみになっていったりします。

――「放任主義」ですか。自分で道を切り開いていくというのは、一番の学びかもしれませんね。ただ突然山に行って自分で何とかしなければならない、という状況を想像すると過酷ですね。

 そうかもしれません。でもこの「放任主義」の延長上に三浦家の健康法があるんですよ。
今の世の中では、「これをしないとだめ」というようなある種の脅迫的なところがあるように思うんです。例えば、「毎日トレーニングしないと脳梗塞になるからいけない」だとか。ただ、それ以上に何をしたいのかを考えさせてくれるのが、三浦家の健康法だと思います。「放任主義」のおかげで、自分で自分の好きなものを見つけ、そのやり方を学んでいくんですよね。僕の祖父の場合、「100歳になってもスキーを続けたい」という思いがあって、去年より今年の方が上手くなっていたいと思うから、そのためにトレーニングをするんです。僕の父親も「70歳でエベレストに登る」という目標の元にトレーニングをしてますし、僕の場合はずっと「オリンピックでメダルをとりたい」と思っていたから、そのためにトレーニングを続けてきたわけです。そういったトレーニングの仕方というのは長続きしますし、それが三浦家の健康の秘訣ですね。

つまり、「放任主義」だということと、「何をその人がやりたいのか、というのを問いかけさせる環境がある」ということが三浦家にはあるのではないでしょうか。

――本にも書かれておりますが、やはり目的や夢が大事だということですよね。

 そうですね。ただ僕らの場合、登山というなかなか一般の方々には遠い目的だと思うのですが、目的や目標は何でも良いと思うんですよ。例えば、高齢になっても、好きな本を読みたいとしますよね、実は本を読むのには体力が必要なんです。若い時はあまり気にならないと思いますが。そのために少し運動を始めてみたり、ウォーキングをしてみても良いと思います。またゴルフが好きだったら、ゴルフをするために、ケガをしないためにトレーニングをしてみるとか。

  僕らの場合は、頂上に登るためにはどれくらいの体力が必要で、そのためにはどれだけのトレーニングが必要かを逆算しながらやっているわけですが、それは難しい面も含んでいるんです。僕の経験からもよく分かるのですが、目標がなくなった時、僕の場合オリンピックが終わった時に次のオリンピックまでの4年間モチベーションを保ち続けるのは難しかったですし、現役のスキーをやめたら、次は何をしたら良いのか?と困るわけですね。ただ僕の場合は現役をやめた後、父、雄一郎の夢に乗っかり、エベレストの登頂を果たせたわけですからラッキーだったと思います。

 祖父がやっている事に関してですが、100歳の人が健康でいるためにどんな方法がありますか、と言ったら、祖父が年間120日もスキーを滑ったりすることに対して、お医者さんはそんなことしたら絶対だめだ、ケガしたらどうする!と言われると思います。

しかし祖父は無茶をやっているのではなく、夢中になっているから、それができるし、そのために体ができてくる、と私の父は言っております。ただそうは言っても、夢中になり過ぎて無茶をすることには問題がありますね。毎日無茶をしていては体にも負担がありますし、精神的にも嫌になってしまいます。だから、最終的にこうなれば良いという目標があったら、無茶をせず、休みも入れながら、無理のない努力を続けていくというのが大事なのではないでしょうか。

生活の中に取り入れた運動というのは、そういう部分で無理がないので、トレーニングという言葉というより、趣味とかそういった言葉の方が合うような気しますね。トレーニング(運動)というのは目標に達するためのツールですから、あくまで自分のしたいことのため、それが「健康で長生きしたい、そして人生楽しみたい」という目標のためでも良くて、そう考えるとちょっとした運動も自分のための時間になりますよね。

――モーグルの選手として復活されましたが、それを決心する上でどんな思いがあったのでしょうか?

いつも目標を持つという自分の人生の中で、選手という緊張感っていうのは大事だな、と思ったんですよね。モーグル界の復活のことは、周りから、もうよした方がいいんじゃない、とか年なんじゃない、という声を頂きますが、これは自分のわがままですから。

そう、夢っていうのはわがままだと思うんですよ。自分がやりたいという気持ちから始まるわがまま。自分を高めるには夢や目標がないとなかなか前がボヤけて進めないですよね、そしてそれが他人からたとえ反対されても、それでもやりたい貫き通したいと思えるものは本当の夢ですね。

僕の場合、いったん選手を引退してからブランクがあったものですから、選手登録をもう抹消されていました。だからまた初期段階の大会から始めなければなりません。でもこれは自分がやりたいと思ったことだし、挑戦は続けていきたいですね。何よりもスキーが好きですし。僕が登山やスキー等を通じて見てきたものですが、仲間が集まれば、一人だけの夢ではなくなりますし、共感してくれる人が多ければ多いほど長続きしますね。

最近は「夢がない」なんて声も聞きますが、夢というのは、自分が今できることの先に見えてくるものだと思います。だから、今は見えなくても、今出来ることを諦めずに続けることで、見えてくるものがきっとあると思います。

――素晴らしいお話をありがとうございました。

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