2014年02月01日

女性をしっかり理解したマネジメントができていない

――職場での女性活用をめぐる環境は今、どのような状況になっているのでしょうか

 確実に良くなっていると思います。組織の女性社員比率も上がっています。出産や育児でいったん会社を離れてしまうことを示す、いわゆる「M字型カーブ」(※1)もMの角度がちょっとずつ、なだらかになってきています。産休や育休の制度は、中小企業を含めて整ってきていますし、実際、女性が復帰してきているという会社の声もたくさん入ってきます。

ただ、その一方で、企業で女性が増えてきたからこそ、わかってきた課題もあります。例えば、日本の企業では、高度成長期に作られた企業文化や社会通念がやはり今なお、色濃く残っていること。男性が外で働き、女性は家庭を守る、という固定観念は、男性のみならず女性の中にも強くあるんですね。また、世代間などで意識が大きく違ってきている、という問題も出てきています。

その意味では、女性が働くための環境整備だけでは、やはり限界があると感じています。例えば、ワーキングマザーとして成長していくには、お母さんが働いている会社で女性が活躍できるようにするだけではなく、ご主人の会社にもバックアップをしてもらわないと難しい。結局育児が女性任せになってしまうと、女性は負担が減らず、キャリアアップをあきらめたり、会社を替わることを余儀なくされたり、といったことになりかねないんです。自分の部下には女性社員はいないから、という会社や上司にも、実は大いに関係しているということです。

――実際には、女性活用をめぐって、どんな問題が起きているのでしょうか?

iv62_02例えば、大手企業の営業職の女性たちが、結婚や出産を機に営業を離れてしまう現実があります。せっかく育ったのに、現状のハードな労働環境では「両立は無理」と判断してしまうのです。キャリアとスキルを積んできたのに残念なことです。

女性活用のために、第一段階で制度を整えてあげる必要がありますが、それに加えて現場のマネジメントの仕方も考えなければなりません。女性の気持ちを理解してあげるマネジメントです。例えば、昔スタイルの男性上司はねぎらったり感謝することが苦手ですよね。「ねぎらいって何だ?」という感覚がある。昔の営業職は、上司の背中を見て育ち、食らいついて成長していったようなところがあります。でも、女性は「自分の頑張りをわかって欲しい(ねぎらって欲しい)」と思っています。会社としては女性を活用し、登用したいと思っているのに、現場で女性をマネジメントするコミュニケーションスキルがついていってないんです。

私たちの年代と、今の若い女性たちでは、感覚がずいぶん違います。とりあえず会社にくらいついていればなんとかなる、という社会的背景がかつてはありましたが、今は違う。本当にちゃんと生きていくことができるのか、という本質的な不安は、私たちの時代よりも大きいと思います。また、若い人たちの間では、男性も女性も共働きが当たり前の感覚になってきています。今後、専業主婦になれる女性は、5人に1人だという予測もあるそうです。「結婚したら会社を辞めるもの」なんて感覚を上司が持っていたら、女性社員のみならず、男性社員からも浮いてしまうと思います。時代背景が違うこと、若い人たちのモチベーションや価値観を理解して、仕事に集中できる関わり方をしてあげないといけないわけです。

――田島さんは、女性が働く上での強みはどんなところにあるとお考えですか?

共感力だと思っています。相手が何を考えているのか、わかる力、と言い換えてもいいかもしれません。だから相手が考えていることを推し量ろうと、相手をよく見ています。「田島さんは、しゃべっているときにこんな癖がありますね」なんて言ってくるのは、100%女性です。意識している、していないに関係なく、女性は自然にいろんなことを観察しているんです。だからこそ、お客様が考えていることや要望を推し測れたり、周囲の状況を察して、先回りの行動がとれたりします。共感ができるからこそ活かされる分野がある。それをいかに活用できるかが女性活用の鍵だと思います。

このように女性はよく見ていますから、上司も自分の無意識な言動や振る舞いに注意をした方がよいでしょう。「応援しているよ」「いつもありがとう」という言葉を口にしたとしても、それが社交辞令的なものであれば、それも女性は見抜けてしまいます。逆に、本気で言ってくれているとわかれば、それは女性にとって大きなモチベー
ションになります。女性は概して真面目であるがゆえに、自分の「こうしたい」に拘り過ぎてしまう、ということもありますが、これもコミュニケーションで解決できます。作業を指示するのではなく、仕事の背景にある目的や理由をしっかり伝えること。仕事の目線を上げるこのひと手間があるかないかで、結果は大きく変わります。女性の真面目に仕事に取り組むという姿勢を、正しい方向に導くことができます。

――男性の上司向けの講演も最近は増えていますね。

現状をどう理解すべきか、女性社員にどう接するべきか、女性のキャリア観や仕事観をどう認識するか。最近では、こうしたテーマで男性社員や管理職に語ってほしい、という講演依頼がとても増えています。実際、ほんのちょっと示唆するだけで、「なるほどそうだったのか」と目からウロコの表情で話を聞いておられる男性も多い。女性のためにも、男性管理職にとっても、双方のために非常に意味のあることだと思っています。

 例えば、ここ4、5年で、管理職につく女性が増えてきていますが、昇進を伝えたとき、女性の反応に男性上司が戸惑うことが多いんです。なぜなら、昇進するのに、女性は浮かない顔をするから。男性上司にすれば、チャンスをもらって、どうして喜ばないのか、やる気がないんじゃないのか、ということになるんです。私もそうだったのでよくわかるのですが、女性には、自己肯定感が低い人が多いという傾向があります。本人もがんばっているのに、上司も評価しているのに、当の本人が自分を評価できていないのです。よく「まわりが助けてくれたから今の成績がある」という声が女性社員から聞こえてきますが、それは本気で言っているんですね。自分の力ではなく、周囲の協力があってできたことだと本気で思っているだけで、決してやる気がないわけではないのです。

このような女性がチャレンジを引き受けられるようにするために、自信を積み上げられるようなコミュニケーションを、上司は心がける必要があります。こういう言い方だと受け入れやすい、モチベーションが上がるなど、いくつかのフレーズを講演ではご紹介していますが、ちょっとしたことなんです。そして、いつか大きなチャレンジ
が訪れたとき、「今まで出来たんだから、次もできる」と伝えてあげれば、女性部下の反応や結果は大きく変わってくるはずです。

※1…日本人女性の労働力率(15歳以上人口に占める労働力人口(就業者+完全失業者)の割合)は、学校卒業後20歳代でピークに達し、その後結婚・出産期に当たる年代に一旦低下し,育児が落ち着いた時期40歳代に再び上昇するという、いわゆる「M」のかたちに似た曲線を描くことが知られている。「M字型カーブ」とはこのグラフの形態を指し、日本人女性の就業状況の特徴を表す用語として定着している。

カリスマ的リーダーシップだけがマネジメントではない

――働く女性に向けては、どんな話をなさっているのでしょうか?

キャリアについて話すことが多いです。自分の会社員時代を振り返ると、ぜひ伝えておきたいことがあるんです。神戸大学の金井壽宏先生が著書働くひとのためのキャリア・デザイン』でお書きになられていて、まさにこれだ、と思ったことがあって。それが、キャリアドリフト論です。キャリアは、突然びっくりするような節目が来たり、チャンスが訪れるわけではない。だから、時には流されてみることもいいんじゃないかという考えです。

iv62_04意に沿わぬ業務命令や、成り行きでやることになった仕事を通じて、自分が思いも寄らなかった新たな適性や能力を発見することもあります。キャリアプランが明確に決まっていなくても、目の前の仕事を一生懸命やっていると、少しずつできることが増えていって、ある時チャンスが目の前に現れ、結果的にキャリアチェンジができるんですね。その時、ちゃんと決断ができればいい。大事なことは、目の前のことに集中することです。

ところが、未来のキャリアが気になって、これをなかなかできない人が多い。もしかしたら、自分に合っていないんじゃないか。このままやっていたら、自分の思い描くキャリアが築けないんじゃないかと、目の前のことに集中できなくなる。そうすると実績も作れず、チャンスも得られません。真面目だからこそ考えすぎてしまい、自分には合わないと早々に辞めてしまう若い人もいます。それは、とてももったいないことです。

――田島さんは、最初の会社で経験なさったことが、後に大きく生きたそうですね?

私の場合は、大学在学中に留学をしていたので新卒の就職活動時期を逃してしまい、最初は中途入社扱いで帰国後にアルバイトをしていた外資系の展示会主催会社に何とか採用をしてもらいました。だから、会社も厳しかった。入社初日に人事部長に「よろしくお願いします」と挨拶に行ったら、「まずは半年間、試用期間として様子を見させてもらうから」とバシっと言われてしまって。いま思えば「試用期間」の説明だったのですが、その制度を知らなかった私は大パニック(笑)。キャリア云々の前に、結果を出さないとクビになってしまう、と思ってとにかく必死で働いたんです。ただ、結果的に、これが良かった。目の前の仕事に一生懸命になる中で、次のキャリアのチャンスをつかむことができたから。月日が経ち、少しずつ仕事ができるようになって、事務局の運営も任されるようになっていた頃、過去に何度か仕事をご一緒させて頂いた方から、立ち上げ事業を一緒にやらないかと声をかけて頂いたんです。それが、私の1回目の転機でした。

言ってみれば、山を登るのではなく、川を下っていったんですよね。流されていった、と言い換えてもいい。そんな風にして新しい可能性に出会う、というキャリアの作り方があってもいいと思うんです。だからこそ、思ってもみなかったような未来が作れるのかもしれません。

――マイクロソフトでは営業部長を務められ、プレジデント・アワードを2回も受賞されています。ご自身が部長に任命された時、不安はありませんでしたか?

正直なところ、最初は戸惑いました。自分には絶対に無理だ、と。リーダーシップなんて私にはないし、部下は私より業界経験も社歴の長い、デキる人ばかり。年上の男性もいました。でも、マネジャー研修の講師の先生からいただいた言葉が私に気付きを与えてくれたんです。「ライオン型」のようなカリスマリーダーシップだけがマネジメントじゃない。一見、おとなしい草食系に見えても、チーム内で何が起こっているかを敏感に察知し、対立した意見をまとめたり、上司と部下の間に入ったりする、調整役の「シマウマ型」マネージャーがいたっていいと。マイクロソフトには、有能な人が多いけれど、個性が強い人も多い。女性の細やかな視点を活かして、“猛獣”使いになったらどうか、と講師の先生が言ってくれたんです。その言葉のおかげで一歩を踏み出すことができました。

そして実際に自分が経験して実感していることは、部下と一緒になってチーム全体で目標を達成できるような調整型リーダーは、今の時代にマッチしたマネジメントスタイルではないかということです。今はモノが簡単に売れない時代ですよね。仕事もどんどん複雑になっています。社員に求められている仕事のレベルが上がってきているんです。こんな時代の管理職は、ふんぞり返って部下の成果を待っているのでは、話になりません。後方支援で、前線で奮闘する部下の仕事をサポートしたり、部下が動きやすくするために社内調整をはかる必要があります。プレイングマネージャーとして、前線にいる部下たちをフォローする役割です。そうすることで、「人を動かして結果を出す」という管理職としての職責を果たす事ができると思うんです。

仕事は失敗覚悟で部下に渡し、上司が新しい仕事に挑んでいくからこそ、組織は進化します。私が特に力を入れたのが、部門間協業でした。いろんな部門の人と一緒に動いて、新しい売上を作っていくことに成功したんです。調整役という役割で考えてみれば、共感力やコミュニケーション力に優れた女性にこそ、マネジメント職は向いていると思います。自分の強みを信じて、ぜひチャレンジしていただきたいですね。

――実際に営業部長をやっている中、難しさを感じたことはありますか。

 「人と動く」「人を動かす」ということです。マネジメント側に立って、これは最後まで苦労の連続でした。人は感情の生き物。相手の立場を慮った言動や行動がとれないと、相手も仕事だからと頭ではわかっていても、自分が望むようには動いてくれません。

別に仲良しになる必要はありませんが、信頼関係を作ることは、仕事のプロセスに加える必要があると思います。元々は私も得意な方ではありませんでしたが、ビジネス・コミュニケーションを「プロセスワーク」だと捉え、コミュニケーションも仕事の一つだと考えるようにしていました。コミュニケーションを通じて相手を動かすために、(1)相手を知る(観察する、話を聞く)、(2)伝える(話す、書く、見せる)、という二つのプロセスが両立しなければ成功しないからです。相手との距離を縮めたい時は、大きい部屋より小さい部屋の方が親密度が増すので、小さい会議室を選んだりしました。相手との心の距離によって、近ければ良いという訳ではないので、それは注意が必要ですが、環境によっても相手の心理は変わるので、その辺りもすごく気を付けましたね。

――管理職の中には、時間が足りない、と感じている人も多いようです。

私もプレイングマネジャーとして業務量は膨大でしたが、時間がない、と感じたことはありませんでした。1日単位、週単位、月単位でやるべき仕事をスケジュール化して、仕事や時間に追われるのではなく、自分が追いかけている感覚を持てるようにしました。その時その時にやるべきことが明確化できていれば、例え業務量は多くてもストレスは軽減できるのです。

ひとつ工夫していたことは、毎日夕方5時30分から6時までの30分間はスケジュールをブロックし、部下に何か相談したいことがあったら、この時間に来てもらうようにしていたことです。管理職が時間に追われるのは、自分のタイミングだけで仕事ができないことも理由にあります。だから、前もって仕組化をし、部下からの相談の時間を確保しておけば、時間がないとイライラしながら部下の話を聞くこともなくなるわけです。

一時的に、猛烈に仕事に打ち込む時期があってもいい

――田島さんにとって、プロフェッショナルの仕事というのはどういうものだとお考えですか?

プロのビジネスパーソンは、「結果」を出すことだけを考えます。ここに大きな違いがあると思います。結果にフォーカスするということは、相手目線に拘ることでもある。営業だったらお客様、社内間であれば、上司や部下、相手の期待値を把握して、それをしっかりと返せるから結果に繋がるんです。極端な言い方をしてしまえば、相手の期待値に沿わない努力は無駄だと言ってもいいかもしれません。ちゃんとした結果が出ずに、「私はこんなに頑張っているのに…」というような場面を目にすることがありますが、プロ野球選手も結果が出なければ、1軍から2軍に落とされます。サラリーマンだと、また少し状況は変わるかもしれませんが、基本的にプロの仕事とはそういうものではないでしょうか。

最近、気になっていることがあるのですが、仕事を通じて自己実現をしたい、とよく言うじゃないですか。これはすごく危険だなぁと思うんです。そもそも仕事は誰かのためにするもので、自分のためではないんです。仕事をしたことで、相手が納得してもらえたかどうか、こそが結果であり、評価になります。その意味では、自己実現ではなく、他己実現こそ、仕事の本質ではないかと思っています。勿論、そうやって他己実現の仕事を通じて、結果的に自己実現ができるのであれば、嬉しいことですよね。ただし、自己実現が目的になってしまうのは、違うのでは、と思います。

――仕事ができる人は「巻き込み上手」ともいいますね。

私が営業部長になったばかりの時、ある大失敗をしたんです。営業成績が第1四半期から予算割れというピンチのまっただ中、私は担当チームの売り上げリカバリープランの作成を命じられたんですが、その営業「目標金額」の計算を間違えてしまったのです。それも、その間違いに気づいたのは、既に社長の手にリカバリープランが渡った後。ミーティングで私の数字のミスが発覚し、部下が全員いる前で上司に叱り飛ばされました。頭の中が真っ白になりました。この時、自分が部長になり立てで、何とか全部を自分でやろうと躍起になってしまったんです。何とか結果を出さなければと、1人で全てを抱え込んでしまった。数字のシュミレーションはプロに任せるべきだったんです。この時は本当にクビも覚悟しましたね。周りのプロをうまく巻き込むことの大切さを、この時に実感しました。結果を出そうとすると、自分ひとりの力では限界があります。自分の専門外のことや、自分よりうまく出来る人がいれば、その人たちの力を借りて、ベターな結果を出すことが仕事の大前提です。後に、部門間協業で結果を出せたのも、この大失敗での学びがあったからこそかもしれません。

――プレッシャーも大変なものがあったと想像します。ストレスとは、どう対峙していたのですか?

iv62_03よく落ち込んでいましたよ。失敗ばかりでしたから(笑)私は元々考えすぎる傾向にあったので、時間ができるとついつい、悪いことを繰り返し考えてしまう癖がありました。そんな私が大切にしていたのは、自分がどんな精神状態にあるのか、どんなストレスやプレッシャーを感じているのか、常に原因を究明しておくこと。不安の原因がわかるだけで少し気持ちが軽くなりますし、原因がわかれば後は対処すればいいわけです。

ビジネスパーソンにこれから大事なことは、自分でメンタルの面倒をみることかもしれないとも思っています。忙しい上司は自分を褒めてくれないと嘆くのではなく、自分のことは、自分で褒めてあげるのも、対処法のひとつ。もちろんうまく褒める上司が組織にいてくれればいいのですが、上司だって忙しいわけです。自分のメンタルを人任せにしない、ということが大事かと思います。

 また自分のオフをきちんと理解しておくことも大切です。私のオフは、お酒を飲むことだったり、マンガを読むことでしたが、お酒を飲むからオフになるのではなく、それによってオフ感を”実感できている”かどうかが大切です。だから終わっていない仕事や、解決できてない課題がある時は、中途半端にオフを取らず、しばらく突っ走ったほうがいいなと、あえてそうしていました。結果的に休んでしまうより、精神衛生上、心地良くいられ、オフの時間も充実しました。

――ワークライフバランスではなく、ワークライフアンバランスも提唱されています。

ワークライフバランスも注意をしないといけない言葉だと思います。9時5時で仕事を終えて、物理的なバランスを確保することが、ワークライフバランスではないのです。内閣府が出した「ワークライフバランス憲章」には、「国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会」と書かれています。キーワードは心のバランスがとれているかだと思います。

私自身、猛烈に働いていた時期もあるわけですが、ではそのときに生活が充実していなかったのかといえば、そんなことはありませんでした。私は自分の意志で、ハードワークを選び取っていたわけです。自分が納得できる、あるいはそのときどきに必要なライフスタイルを決めることこそ、ワークライフバランスだと思うんです。私のように、毎日残業続きでプライベートがないけれど、もしそれで充実していると感じることができるなら、周囲から見ればアンバランスに見えても、自分にとってはバランスがとれていると言えるのです。若いときは、量をこなす時期が必要だと思うなら、一時的に、猛烈に仕事に打ち込む時期があってもいい。それを恐れるべきではないと思います。大事なのは、自分にとっての心のワークライフバランスとは何かを分かっておくことではないでしょうか。そうすれば、物理的なバランスに左右されることなく、オンもオフももっと充実するはずです。ゆっくり休む時間はしっかりと取りたいから、仕事は集中して、一生懸命時間内に終わらせる、という考えがあってもいい。一律にみんな、ではなく、自分がどうしたいか、どう在りたいかがわかっていることこそ、本当のワークライフバランスの実現なのではないかと思いますね。

――仕事のやりがいとは、どういうものだと思いますか?

私は、最初から「やりがいのある仕事」があるわけではなく、やりがいとは、「自ら生み出す」ものだと思っています。結果を出すことにベストを尽くすという「集中感」と、結果を出した時の「達成感」と「充実感」がやりがいの正体だと思います。だから極端な話、どんな仕事でもいいと思うんです。全力を尽すという行為を通じて、やりがいは生みだせるもの。逆にやりがいを感じない場合は、全力を尽せていないのかもしれません。経験や、慣れから、ほどほどのラインを心に引いてしまっているのかもしれません。プロだという自覚を持ち、与えられた仕事の結果を出すことに全力を尽くしてゆく中で、必ずやりがいは味わえるはずだと思うのです。

そして、私は今フリーランスで仕事をしていますが、サラリーマンを辞めて分かったことがありました。 これは女性に限らず男性にも伝えたいのですが、組織で働くことの面白さをもっと認識して欲しいということ。私もそうでしたが、サラリーマンは基本仕事は選べませんし、理不尽なこと、納得のいかないことも多い中で、その良さが見えなくなってしまっていたことがありました。しかし、組織を離れて思うのは、組織で働いうというのは働く醍醐味を存分に味わえるステージなんです。社内のリソースが使える。人材が使える。お金も使える。サラリーマンという職業に、夢を追いかけるのを諦めてやっている、なんてイメージを持つ人もいますが、私は違うと思います。いろんな理不尽があっても、自分を律してプロとして結果を出すのがサラリーマンの仕事。サラリーマンはカッコイイ。それを、もっと多くの人に感じてもらうために、積極的に講演を通じてお伝えしたいと思っています。

――本日はお忙しい中、貴重なお時間をいただきまして、ありがとうございました。

取材・文:上阪徹 /写真:三宅詩朗 /編集:鈴木ちづる
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