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成功するか、成功しないかを分けるのは、実は、ほんのわずかな差なんです。No.3 元サッカー選手 福田正博

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Jリーグのサッカー選手は平均して26歳で引退する

No.03 福田正博

僕は1966年に生まれました。同い年で、まだ現役の選手がいます。三浦知良、カズですね。ひとつ下に中山雅史、ゴン中山がいます。彼は一度現役を退いたのですが、サッカー選手としての情熱が消えなかったようで、現役復帰しました。Jリーグは今年23年目になります。1993年にスタートしたとき、僕は26歳で、ちょうどプレーヤーとして最も脂がのっている時期でした。カズやゴンたちと一緒にJリーグの創生期を歩み、サッカーを盛り上げてきた世代です。大学を出て、プロになったのは24歳でした。でも、26歳になるまで、プロのリーグは日本にはなかった。だから社会人として三菱重工に入って、午前中は仕事をして、午後はサッカーをして、週末に試合をするという生活を2年半くらいして、プロになりました。

浦和レッズでずっとプレーして、引退したのが36歳です。10年間、浦和レッズの選手でした。実は36歳で引退というのは、サッカー選手では長いほうなんです。48歳で現役をやっているカズや、47歳で現役復帰したゴンは、本当に稀。サッカーの世界では、考えられないような年齢でプレーしているんですね。Jリーグの23年間の平均では、サッカー選手が引退する平均年齢は26歳です。高校を出て18歳だと8年間くらい。大学を出ると、4年くらいしかプレーできない。Jリーグには、J1、J2、J3という3つのカテゴリーがあります。この3つのカテゴリーに1300人くらいの選手がプロとして登録されています。これが、毎年1割ずつ辞めていきます。なぜかというと、1割ずつ入って来るから。毎年のように100人以上の選手が入って来る。となると、100人以上の選手がやめていかなければ、ポストが空かないんです。

長く現役でプレーしようと思ったら、本当にしっかり努力をしなければいけません。そうでなければ、あっという間に選手生命は終わってしまう。引退の平均年齢が26歳という短命の中で、僕は36歳までプレーすることができました。現役を退いたのは、2002年。やめてもう13年ですから、引退してからのほうが長くなります。今は、メディアの仕事を中心に活動しています。テレビのニュース番組や情報番組にレギュラーで出させていただいたり、ゲームのCMにも出演させていただいたり、今日のようにいろいろなところでサッカーのお話をさせていただく機会があります。

実は、これもすべては、もう一度、サッカーの世界に戻りたいからです。指導者として、できれば監督として、もう一度ピッチに戻って、勝った負けた、というしびれるような世界に身を置いて仕事がしたいと考えています。ただ、ひとつの世界だけにずっといると、世界観はどんどん狭まっていきます。何かを極めるということは、その世界で必要な特殊な力や感覚を研ぎ澄ませること、追求することであり、結果として視野が狭くなっていくんです。これはプレーヤーのときには問題ないのですが、監督の立場になった時に問題になってきます。視野が狭く、ひとつの見方しかできないと言うのは、あまりいい方向に行かない。例えば、どうして外国人の監督が多いのかというと、日本人にない視野があるからです。先入観を持たないため、日本人をあまり色眼鏡で見ない。今は視野を広げようと、いろんな人に会い、いろんな人と話を聞き、いろんな話をして自分の知識を広げたり、自分の考えを整理できる機会にしたいと思っています。目指しているゴールは指導者ですが、今は日々、いろんな勉強をしているところです。

選手が成功するかどうか分けるのは、わずかな差

目標達成への道のり、というテーマを置いていますが、実は目標を達成できるかどうかの違いというのは、ほんのわずかな差である、というお話を今日はしたいんですね。実際、プロの世界に入っても、成功する選手と成功できない選手がいます。その差は実は、ほんのわずかな微微たるものなんです。というのも、ある程度才能がなかったら、そもそもプロにはなれないからです。総務省の調査によれば、サッカーの競技人口は日本国内で750万人。チーム球技の中では、最も多い数です。野球よりも多い。この中で、プロになっているのは1300人。6000人に一人くらいというすごい倍率です。それほど厳しい世界なんです。でも、プロになったあとに、成功するかしないかは、ほんの小さな差だということに気づけるか気づけないかが、プロの選手として大きく左右すると僕は思っています。そもそも、勝負だって、本当にちょっとした小さな差で結果が大きく変わったりするものなのです。

サッカーを知っている人はご存じかもしれませんが、僕は1993年に「ドーハの悲劇」を経験しています。ワールドカップ予選。残り17秒。イラクに2対1で勝っていました。そのまま、あと17秒我慢できれば、日本は初めてワールドカップに出ることができた。ところが、日本は失点してしまうんです。結局、その後、僕はワールドカップに出場することはできませんでした。大きな夢、目標を目の前につかみかけていたのに。するっと手から抜け落ちてしまった。わずか17 秒の出来事でした。1999年、浦和レッズがJ1からJ2に落ちたとき、得失点差はわずか1点でした。翌年、J2からJ1に上がったとき、今度は得失点差1で上がったんです。失点が1少なかったら、J2には落ちなかった。逆に、得点が1少なければ、J1に上がれなかった。年間30数試合戦ってきて、たったそれだけの差だったんです。

勝負の世界は、実はちょっとした差で決まるものなのです。でも、結果として、それがのちに大きな差になっていく。すべての結果を分ける差が本当にちょっとしたものだということにと気づけるか気づけないかが、実は重要なんですね。僕はプロの選手として10年間、メディアの仕事をして7年間、そしてプロのコーチとして3年間、いろんなプロの選手を見てきました。成功した選手、成功できなかった選手、いろいろいますが、では何がそれを分けたのか。これから3つの気づきをお話したいと思います。

「自分を知る」ことができるかどうか

No.03 福田正博

気づきの一つ目は、「自分を知る」ということです。これが簡単なようで非常に難しい。プロの世界で、あまり器用でない選手が活躍することがあります。今の日本代表でいえば、岡崎慎司選手や長友佑都選手がそうでしょう。彼らは高校や大学、プロになってからも、順風満帆にトップとして活躍してきたわけではなかった。長友は、大学のときはサブでした。岡崎にしても、プロになってすぐに活躍できたわけではない。では、どうして今彼らが活躍できているのかというと、誰よりも自分のことを理解していたからだと思うんです。自分の持っている特徴をどれだけ理解できているか。それを理解して、活かすことができた選手が、やっぱり長く活躍しているんです。

長谷部誠選手は今、日本代表のキャプテンですが、彼が高校を出て入ってきたのが、浦和レッズでした。2002年で、僕が引退する年です。当時の彼を僕は知っていますが、今のようになるなんて、ちょっと思えなかった。実は今とは任されていたポジションが違ったんです。今はディフェンシブな中盤をやっていますが、もともとは本田圭佑選手のようなゲームメーカーのポジションだった。どちらかというと、華麗なプレーヤーという感じだったんですね。彼自身もそれを目指そうとしたようですが、監督に「それじゃダメだ」「もっと守備をやって献身的にならないといけない」と言われて、ポジションが下に下がるんです。でも、結果的に彼はそこで自分の特徴を伸ばし開花していきました。今はドイツでプレーしていて評価がとても高いのですが、それはどのポジションでもどの試合でも、自分の持っている力を出せる、という理由なんです。その意味では、彼も最初は少し勘違いしていたところがあったのだと思います。しかし、自分の良さに気づいて、それを活かす努力をして、今は日本代表のキャプテンになって、ドイツでも長く活躍しています。

自分を知るということは、実は理想と現実を冷静に見るということなんです。プレーヤーなら、どうしても華麗なプレーを求めたくなる。スターになりたい。でも、それは理想です。それが叶う人は、ごくわずかです。多くの人は、陰になって下働きをしている。サッカーでは「水を運ぶ選手」と呼びますが、チームのために献身的にプレーする選手がほとんどなんです。そういう現実にいかに早く気がつけるかというのが、ひとつのポイントです。

では、自分を知るためには何が必要になるのか。まずは素直であること。「自分はこうだ」と決めつけずに、人の話を素直に聞く。誰の話であっても謙虚に聞く。そして、厳しいことを言ってくれる友人を近くに置けるかということです。これがまた難しい。プロとして活躍すればするほど、いろんな人が寄ってきます。有名になると、肩書きに寄って来るんですね。そして、みんないい話ばかりしてくれるんです。そうすると、耳障りなことを言ってくれる人を、遠ざけたくなる。心地いいことだけを言ってくれる人を近くに置いておきたくなる。でも、こういう肩書きに寄ってくるようなタイプの人は、選手が活躍できなくなると離れていきます。一人でもいい、本当に親身になって耳障りなことでも言ってくれる人をそばにおくことです。それが、自分の才能を最終的に開花させる重要な要素になるんです。

「人の助け」で今があると気づけるか

気づきの二つ目は、「人の助けを知る」ことです。自分一人の力で才能を開花させることは絶対に無理です。サッカー選手も、監督だったり、チームメイトだったり、トレーナーだったり、家族だったり、サポーターだったり、いろんな人に支えられて、成功していく。中でもポイントになる出会いがあって、僕の場合だとハンス・オフト監督だったり、ホルガー・オジェック監督だったりするんですが、そうした監督から大きなサポートをもらって、苦しいときも立ち直ることができた。

その意味では、大事なことは、助けてもらえるような人間にならなくてはいけないということです。助けてくれといっても、そんなに簡単に助けてもらえるわけではないんです。最近は少なくなりましたが、昔はよくコンビニに若者がたむろしていたでしょう。「何か面白いことねえかな」とグチグチ言いながら。こういう子たちは、一生楽しいことはないと僕は思っていました。なぜなら、彼ら自身が楽しもうという努力をしていないから。だから、どんなことがあっても楽しくない。同じように、助けてくれ、といっても、誰も助けてくれないんですよ。助けてもらうためには、助けてもらえる人間にならなくてはいけない。

そのために何が必要なのか。2つあります。ひとつは「真摯さ」です。物事に対して、真面目に一生懸命、情熱を持って取り組んでいる。そういう人間であること。結果は関係ありません。成功するか失敗するかではない。でも一生懸命、不器用だけど頑張っている人間なら、手伝ってあげようと人は思う。才能があって、ちょこちょこっと練習をして、適当にやっているような人間は助けたいとは思わないでしょう。真摯さは人の心を動かすんです。「助けてあげたい」と思わせる。だから、そういう姿勢は大事なんです。もうひとつが「感謝の気持ち」です。ありがとうという気持ちがなかったら、絶対に人は助けてくれません。何かやってもらったとき、ちゃんとお礼が言えるか。長く連れ添った夫婦でも、お茶を出してもらったときにきちんと「ありがとう」と言えるかどうかは大事ですよね。だから、僕はできる限り「ありがとう」を妻や3人の娘にも言おうと思っています。その一言があるだけで、「また次にやってあげよう」という気持ちになると思うんです。言葉が変われば行動が変わる、なんて言葉もありますが、一言で人は見方を変えるんですよね。

サッカーでは、小さいときからチームのエースとしてずっとやってきた選手が、この気持ちが薄いことが多いんです。自分一人で試合に勝ってきたと思っている。そうすると、プロになって、ベンチで試合に出られないときの振る舞いが非常に悪い。これまでベンチに座ったことがないから。最悪なのは、試合の途中でメンバーチェンジをさせられたとき、不満な態度でピッチから出る選手です。代わりに入った選手のことを一切、考えていない。チームで戦っているのだということに気づけていない。こういう自分のことしか考えられないような態度だと、まわりは助けませんね。そうすると、いつの間にか、才能があると思っていても、消えていくことになります。逆に気づいて態度を改めると、ピッチの中でのパフォーマンスはぐっと上がります。間違いなく上がります。人のサポートがなければ、感謝の気持ちがなければ、才能は開花しないんです。

「準備の大切さ」ですべてを想定内にしておく

気づきの3つ目は、「準備の大切さを知る」です。これは、すべて想定内にしておくということです。想定外のことが起きると、「まさか」と慌ててしまう。そうすると、ミスが起きる。判断のミスです。そして、自分の気持ちをコントロールできなくなってしまう。サッカーというのは、ボールをコントロールするスポーツだと思っている人がいます。相手をコントロールするスポーツだと思っている人もいる。違います。両方、コントロールすることなんてできない。試合をコントロールするんです。そのためには、慌てない、パニックにならないことが大事になる。準備をして、すべてを想定内にしておくことが重要になるんです。

準備には、3つがあります。ひとつは、「試合の中での準備」です。大人のサッカーは90分間ありますが、実は一人の選手がボールを触っている時間は、多くて2分だと言われているんですね。その他の88分間はボールを触っていない。ということは、ボールがないところで、どういう動きができているか、が問われるスポーツだとうことなんです。当然、ボールを触ったときに最高のパフォーマンスを出さないといけない。でも、そのためには触っていない88分間こそ重要なんです。

僕は点を取るポジションでしたが、ゴールを取るときは、ほとんどワンタッチなんです。一般的にも1回触ってのゴールが8割だと言われている。それに対して、2回以上ボールを触ってゴールが決まる割合は、1割くらいなんです。つまり、ボールが来るまでの準備次第で既に勝負が決まっていると言っても過言ではないんです。いい準備ができているかどうかが、点をたくさん取れる選手と、取れない選手の、大きな違いなんです。実際、点をたくさん取れる選手は、準備がいい。いいポジションを取るということです。難しいプレーをしないで済むようなポジションを取る。これが、試合中は重要なんです。

そこで必要になるのが、予測です。そのために必要なのが、情報です。たくさんいろんなものを見ておく。経験を積んでおく。味方選手の癖を知っておく。ちょっとしたことですが、こういうことが、試合のためのしっかりした準備になるんです。それが大きな結果につながって、プロとして長くやれるかどうか分けることになる。準備の大切さに気づいた選手が、たくさんゴールを決めて、得点ランクで上に行っています。ガンバ大阪の宇佐美貴史選手は今年、ワンタッチでのゴールが増えています。彼はもともとドリブルからのゴールがあった。でもワンタッチゴールが増えて、それまで10点くらいしか取れなかった選手が、今は19点も取っている。そんなものなんです。

食生活や睡眠が乱れてくると、おかしくなる

準備の3つのうち、2つ目が「試合と試合までの間の準備」です。プロのサッカー選手は、1日2時間くらいしか練習しません。1日24時間ですから、12分の1です。1年間に直したら、1カ月しかサッカーをしていないことになります。 11カ月はピッチの上にはいないんです。何が言いたいのかというと、この11カ月間、何をしているかが、勝負を決めるということです。

ちょっと活躍すると、いろんな人から誘われます。楽しいこともあります。おいしいものを食べ、夜の街に連れていってもらったりもする。そうすると、どうなるか。食生活が乱れます。寝る時間が乱れます。これが、11カ月をダメにする。勝負を分ける準備の段階で、目に見えるように消えていく選手がたくさん出てくるんです。こういう選手をプロの世界では、「流れ星のような選手」と言います。たくさんいます。代表にちょっと入ったけど、今、何をやっているかわからない。そういう選手がいる。代表選手でも、Aキャップ数が10以上あってようやくそこそこの選手という評価なのですから、1、2の選手はパッと光ってパッと消えていく「流れ星のような選手」と言われてしまうのです。もしかして、準備のところで、過ちを犯したのかもしれない。食事も、睡眠も、ストイックな生活にしておかなければ、極めていけないんです。

準備の3つ目が「悪い結果への準備」です。勝負ですから、必ず勝ったり負けたりという結果があります。いいこともあれば、悪いこともある。僕でいえば、決定機に決められることもあれば、外してしまうこともあった。その結果に対して、すぐに切り替えられるか、忘れられるかどうか。切り替えが早ければ早いほど、いい結果が残せるんです。ただ、結果が良かったときは、早く切り替えられるんですね。問題は、結果が悪かったとき。試合の最初で決定的なチャンスを外したとき、ずっと引きずったりしてしまう。そうすると、次のチャンスも逃してしまいます。失敗を引きずって集中できていないから。これを切り替えるのが、大事なんです。

切り替えのために大事なことは、最悪の状況をいつも想定しておくことです。長友選手は瞑想したりしていましたが、試合前に自分が最悪の事態に陥ったとき、どんな心理状態になるのかを想像して、どう対処しようかと準備していくんです。良かったときの準備は、みんなするんですね。いいイメージをする。でも、最悪なことも起きるんです。そういう状況が起こり得ることを想像し準備しておけば、切り替えが早くなる。試合中のいいパフォーマンスにつながっていく。サッカーはミスのスポーツです。世界の割合でも、9本打って1点しか入らない。だから8本はミスです。その8本をずっと引きずっていたら、9本打っても1点も取れない。すぐ切り替えるんです。それが次のチャンスをものにすることにつながるんです。特にこの3つ目の「悪い結果への準備」は極めて重要だと僕は思っています。スポーツに限らず、「いいイメージで臨みなさい」と言われます。それはいいことだと思いますが、最悪のことを想定して準備しておくことも、実は重要なんです。会社経営をされている方なら、リスクマネジメントという言葉があるように、理解もされていると思います。とても大事なポイントです。

自信がない状態から、いかに立ち直っていくか

No.03 福田正博

成功へのちょっとした違いとして、3つの気づきをご紹介しました。「自分を知る」「人の助けを知る」「準備の大切さを知る」です。当たり前のことに思えますが、当たり前のことを当たり前のようにするということが、実は難しいんですよね。また、それを継続していくことも、本当に難しい。それでも、気づきを忘れず、行動を変えていくことで、人生というのは変わっていくのだと僕は思っています。

僕もずっと順風満帆にやってきたわけではありませんでした。うまくいかなかったときも、しょっちゅうでした。うまくいっているときのほうが、少なかった。スポーツの世界ではスランプという言葉があります。僕の場合だと、ゴールが取れず、調子を落としたときがあったわけです。そういうときの心理は、一言で言うと「自信喪失」です。チャレンジする勇気を失ってしまい、シュートを打たなくなる。失敗したくないから。前を向かずに、ゴールに背中を向けてしまう。それなら、相手に取られるリスクが小さくなりますし、バックパス、横パスに逃げやすいから。もっと最悪のときは、パスが来ないように相手の陰に隠れてしまうんです。これではボールは絶対に出てこない。パスを受けるとミスが怖い。だから、そんなことになってしまう。実際、うまくいっていないチームは、パスコースがなくなるんです。みんな隠れる。プロの世界では、ミスをすると批判を浴びます。だから、余計に失敗したくない。結果が出ないときには、こんなことが起こり得るんです。

では、自信を回復するには、どうすればいいのか。チャレンジする勇気を持つためには、どうすればいいのか。3つご紹介したいと思います。ひとつは、「成功体験を多くする」ということです。得意なことをするんですね。もうひとつが、「客観的なデータ」です。これだけ君は走っている、これだけシュートを打っている、と客観的なデータで自信を取り戻すんです。映像も客観的データですね。プロの世界ではよくありますが、自信を失っている選手に対しては、良かったときのプレーを編集して、それを見せる。いいイメージをつけさせる。客観的なものをうまく利用しながら、自信を深めさせていくんです。プロの監督には、合宿で1日10キロ走ったりすると、これをちゃんとデータで取っていて、「1日10キロ、10日で100キロ走ったんだ。これだけ走ったんだぞ」と言ってくれたりする人もいる。選手たちは、これにはけっこう自信が深まるんです。

そしてもうひとつ、賛否両論あるとは思いますが、「理不尽なトレーニング」です。僕もいろんな監督に指導を受けて、サッカーに携わって、いろんなことも考えてきたんですが、これも重要なのではないか、と思っています。僕たちは、小さいとき、わけもわからずにたくさん走らされたり、水を飲むなと言われたり、大変な筋トレをさせられたり、まったく科学的根拠もなしにトレーニングをやらされていた世代だったんですよね。こんなものに意味があるのか、と思っていました。でも、振り返ってみると、意味があったんだと思うんです。なぜなら、日本人は自信を持てないから。ところが、理不尽な厳しいトレーニングが、意外に根拠になって自信がついたりしていたことに気が付いたんです。

外国人は10あって1できたら「できた」というメンタリティなんですね。ところが、日本人は10あって9できても「できない」と言うんですよ。自信を持てない。ハリルホジッチ監督にインタビューしたとき、彼は言っていました。日本人は、相手のことをリスペクトし過ぎだ、と。相手を怖がりすぎるんです。これはずっと言われていること。そして、こうも言っていました。日本人は自分たちをリスペクトしていない、と。自信を持っていない、ということです。

10あって1できたら「できた」と自信満々に言う外国人と、10あって9できても「できない」と考える日本人。我々は自信をなかなか持てない民族なんです。不安に思いやすいんです。裏を返すと、すごく謙虚なんです。これを克服するために、理不尽なトレーニングはありなのかな、と思うんです。野球でも、1000本ノックなんてものがありました。いわゆるしごきみたいなもの。もうヘトヘトになって、立てるか立てないか、なんて状態で。でも、身体を壊さない程度にという前提はありますが、そういうことは、日本のスポーツにとっては重要な気がするんです。ラグビー日本代表でも、エディ・ジョーンズヘッドコーチが強調していました。世界一厳しいトレーニングをやってきたんだ、と。これは自信になるんだと思うんです。

運を呼び寄せるには、何が必要になるのか

最後に、たくさんの人たちと接してきて、成功するために重要なものではないか、と思ったものをご紹介しておきたいと思います。これはビジネスの世界での成功者も必ず口にすることです。成功するために重要なもの、それは運です。運が良かった、と。この運が、重要な要素だと思っているんです。「なんだよ、結局、運かよ」と思われるかもしれません。そして残念ですが、そう思ってしまった人には運は来ません。なぜか。運は得体の知れないものですが、待っていても絶対に来ないものだから。運は引き込むものなんです。ツイていると思わないと、絶対に運はやってこない。これはもう、絶対に言えることです。どうすれば、運を呼び込めるか。それは、自分で引き込むのだということです。たとえば、小学生にも話をするんですが、家から学校に行く間に、犬のウンチを踏んでしまった。ツイてないな、と思うか、このくらいで済んだ、と思うか。この違いなんです。ちょっとしたものなんです。自分が運がいいと思うと、運はやってくるんです。

運を呼び込む。もうひとつは、諦めずにベストを尽くすということです。実は、ベストを尽くしたか尽くさなかったかというのは、自分にしか分からないことです。他人から見て「あいつは頑張っているな」という評価とは違う。自分には、嘘をつけないから。どんな状況の中でも、自分が今できることを精一杯したかしなかったかというのは、自分にしかわからない。自分に嘘をつかず、調子のいいときも悪いときも、どんな状況の中でも、もがき苦しみながらベストを尽くしたか。今、自分ができることを最大限ピッチの中で表現できたか。そこまでの準備を手を抜かずにやれたか。それが、運を呼び込むことにつながるんだと思うんです。

そして成功するために重要なことの3つ目は、笑顔です。難しい顔をしている人のところには、難しいことしか来ません。笑顔の人のところには、人が寄ってきます。そうしたら、人が助けてくれます。これは科学的にも証明されていますが、顔の表情が緊張してくると、肩に力が入るんです。そうすると、思うように身体は動かない。そして、前傾するんです。すると、視野が狭くなる。情報が入ってこなくなる。判断ミスが多くなる。サッカーでいえば、最悪です。まわりが見えない状況です。

顔の表情はとても重要です。いつも笑顔でいることは、人を呼び込むし、いい判断をするためにも大切です。創作活動をしている人も、机の上で考えても浮かばないとよく言います。お風呂に入ったり、散歩したり、プールで泳いでいるときに、ふっと浮かぶという。つまりは、リラックスしているときのほうが、いいアイディアが浮かぶんです。リラックスしているということは、いつも笑顔が作れる状況だということです。だから、どんなことがあっても、つらいことがあっても、人生うまくいかなくても、誰かに何かを言われてムカつくことがあっても、それを笑って乗り越えようとできるか。実はそれが、人生を切り拓く大きなきっかけになるのではないかと思います。

(文:上阪徹)

プロフィール

福田正博/ 元サッカー選手

中央大学卒業後、1989年に三菱(現:浦和レッズ)に入団。1995年に50試合で32ゴールを挙げ、日本人初のJリーグ得点王に輝く。Jリーグ通算228試合で93得点、日本代表としては45試合で9ゴールを記録し、1993年にはワールドカップアジア地区最終予選も経験。浦和レッズのエースとして、そして日本代表選手として、どんな状況でも諦めず、ピッチの上で最善を尽くし、走り続けてきた。2002年の現役引退後は日本サッカー協会JFAアンバサダーに就任し、全国各地で幅広いサッカー普及活動に尽力するほか、浦和レッズコーチ(2008~2010年)を務め、現在はサッカー解説者としても活躍中。講演では、プロサッカー選手として、コーチングスタッフとして、そして解説者としての経験で培った福田流の理念をエピソードを織り交ぜながら語る。リーダーシップや組織論として、ビジネスに適用できる要素も満載。

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