2017年12月04日

Vol.1

子は宝~より良い子育て環境を願って~

教育コンテンツ「教育!共育!叶育!」の記念すべき第1回は、元参議院議員の林久美子さん。菅内閣時代には文部科学大臣政務官を務め、「幼保一体化」を実現されました。今回、議員時代のご経験をもとに、子育てについて語っていただきました。子育てを取り巻く状況に対する林さんの思いが伝わってきます!

日本は先進国に比べて、子育てがしにくい国なのでしょうか?

林久美子さんインタビュー1

しやすい面としにくい面があると思います。しやすさは、安全だということですね。しにくさは、教育費の負担がとても大きいということです。高等教育について、無償化の取り組みをしていない先進国は少なくて、日本くらいなんです。一方で、GDPに占める教育への支出は、他の先進国に比べてはるかに低い水準にあります。

経済的な負担が大きかったとしても、収入が安定していたり、ある程度、先が読める世の中であれば、一定の計画性を持って子どもを産み、育てることもできます。しかし、今では労働者の約4割が非正規の状態で、雇用が安定しない。また、大企業ですら倒産の危機に瀕したりする。将来への不安感が大きいわけですね。

だからこそ必要になるのは、労働流動性を高めていくことです。好きな仕事ができるようにする、と言い換えてもいいかもしれません。人生の選択権は、今は会社にあって個人にないんです。それを変えるには、新卒の一括採用を見直す、といったことも必要かもしれません。あるいは同一労働同一賃金の世の中へと社会の有り様を変えていく。こうした取り組みは、回り道のように思えるかもしれませんが、子どもを持ちやすい社会につながると思います。

「女性を採用したい」「戦力にしたい」と、1日4時間働く正社員を採用しているベンチャー企業もあります。子どもが小さいうちは4時間で、子どもが大きくなったら8時間働く。こうした、いろんな働き方が増えていくようになったらいいな、と思います。

また、本当はもっと子育てに関して、国の財政的な支援があっていいんです。日本は、教育に関して公的な財政支出がほとんどない。子ども手当も、一つの家庭で生まれてくる順番で変わるわけですね。生まれた順番で手当の額が変わるって、おかしいじゃないですか。家計における教育の負担を考えても、子育て世帯の税制や諸手当の見直しは、日本社会として避けて通れないと思います。

子育て世代の育児と就労支援、少子化対策はどこまで進んでいますか?

今は、道半ばだと思います。これは私自身の子育てを振り返ってもそうですが、助けてくれる人がいるということが、とても大事なんですね。子どもは急に熱を出したりします。大事な仕事があるときに限って風邪を引いたりする。親が忙しいときに、子どもは体調が悪くなるんです。

私の場合、幸い実母が一緒に暮らしてくれていたので、サポートしてもらっていましたが、そういうときに支えてくれるサービスが社会的に整備されることは大事だと思います。フローレンスさんが取り組んでいる病児保育のようなサービスが、もっともっと増えていかないといけない。

参議院議員時代には、「家庭的保育事業」の仕組みを変えました。「子ども3人に保育ママ1人」といった仕組みだったので、まったく広がらなかったんです。例えば保育ママにとってみれば、自分が風邪を引いたら、お預かりする子どもの面倒はみられないからです。しかも自治体の単独持ち出し事業でした。だからこれを「子どもを5人までOKにしましょう。その代わり保育ママを2人にしましょう」、つまり子ども5人に対して補助者を含めて保育ママ2人という仕組みを加えました。また。市や町の持ち出しだったものを、国がお金を出せるように変更しました。これが広がりました。

子育てや教育への関心は、とても大きくなってきています。私が2004年に初めて選挙に出たときは、自分の子どもが待機児童だったこともあって子育て問題について訴えていたら、「そんな話は票にならない。年金、介護、医療だ」と言われました。ところが、2010年の2度目の選挙では、「子育て問題は響くから、もっと訴えて」と言われました。政治も、子どもの教育や子育て政策を語らなかったら政治ではない、という空気になってきていますね。

子育てについては、若い世代から不安の声がよく聞こえてきます。喜びや楽しみを持てるようになるためには、どうすればいいでしょうか?

林久美子さんインタビュー2子どもを育ててみたら、喜びや楽しみはたくさんありますよ。だから、子育てをしている人たちが、もっと「楽しい」と声を上げることが大事ではないかと思います。私自身、息子がいたから政治家になったし、息子がいたから頑張れたんですよね。息子に恥ずかしい背中を見せたくないと思うから、一生懸命生きることにもなった。やっぱり何物にも代え難いです。案ずるより産むが易し、みたいなところがあると思います。

実際、子どもができたことで見える景色も変わったし、人生も一変しました。うれしい瞬間もたくさんありました。子どもが立っちしたときもうれしかったし、「ママ」と言ってくれたときもうれしかった。抱っこしたときの暖かい丸い感じもかわいいし、今は中学生ですが、またかわいさが変わります。重いモノを持とうとしたら「持とうか?」と言ってくれるだけでうれしいし、ちょっと風邪ひいたら「大丈夫?」と言ってくれるのもうれしい。

政治家になって2年目、私の母が乳ガンになったんです。翌年、直腸ガンになり、さらにその翌年には肝臓ガンになった。毎年ガンになってしまって。母の手術が終わった日、家に帰って息子と一緒にお風呂に入っていて、「どうして、おばあちゃんだけ、あんなに・・・」とシャンプーしながら私が泣いていたら、「ママ、おばあちゃんは強いから大丈夫だよ」と言ってくれて。この一言で、私がどのくらい救われたか。思い出すと、今もウルウルしてしまいます。

子どもの存在は、大きな支えでした。早くに離婚したので、余計にそうでした。愛おしさもありますが、子どもが私を支えてくれたんです。教えられることも多いですし。もちろん、子育ては大変な面もあります。仕事との両立も大変。でも、乗り越えられるんです。それを、もうちょっと軽やかに乗り越えられるようにするためにも、社会の理解とそれを支える制度がまだまだ必要です。それは間違いないと思います。

かつて待機児童ゼロ特命チームのメンバーでした。待機児童問題については、どのようにお考えですか?

政治家として私が取り組みを進めたのは、幼稚園と保育所の一体化でした。幼稚園は文部科学省の所管、保育所は厚生労働省の所管なんです。でも、子どもたちが学ぶべき領域というのは、何年も前から摺り合わせながら一緒につくっています。教育や保育の内容は違わないのに、所管が違うだけなんです。

そして幼稚園は定員が3割も空いていて、保育所は山のように待機児童がいる。だから、これは一つにしたらいいんじゃないか、いずれも就学前の子どもたちの居場所じゃないか、と考えたわけです。調べてみたら、帝国議会の頃からこの議論をやっていました。議事録が残っているんです。でも、省庁の縦割りの壁、ぶら下がり族議員の存在に阻まれて、一体化は実現されてこなかった。それで、政権交代したときに、私と小宮山洋子(元厚生労働大臣)さんとで取り組みを進めたんです。

ステークホルダーの方を交えて本当に大変な議論を積み重ねました。特に幼稚園側の抵抗は大きなものでした。その結果、幼稚園が本来保育所に行く子どもを受け入れると、財政的に補助金をたくさんもらえますよ、というインセンティブを持たせる制度設計としました。

現在、いわゆる幼保一体化は進んでいます。広がってきています。でも、まだ十分じゃないんです。ただ、一歩を踏み出せたのは良かったと思っています。

また、待機児童で一番多いのは0~2歳です。本当は、0~2歳は集団保育よりも個と個の関係が重要な発達段階なので、小規模保育など保育事業を充実させることが必要なんです。例えば、シッターさんにお願いしたときに公的な補助が出る、とか。そういうことを海外はやっていますが、そうした、もっとかゆいところに手が届く政策を推し進めなければいけないですね。そこに公的なサポートがあれば、もっとみんなお願いしやすくなる。

実際、ダブル保育などで大きな費用をかけている家庭もあります。でも、本当は将来の進学費用などにも充てたいと考えているんだと思うんです。子どもは大きくなれば、お金もどんどんかかっていきますので。やっぱり社会がもっともっと子どもや教育に投資をしろ、と声を上げていくことが重要だと思います。

特命チームでは、学童保育の「小4の壁」を作っていた、児童福祉法の「おおむね10歳未満」という規定を外しました。今は法的には6年生まで、学童保育に在籍できるようになっています。

いじめ問題についても、いじめ・体罰防止対策ワーキンググループで座長を務めておられました。

林久美子さんインタビュー3いじめ防止対策推進法案と、体罰防止法案、2つの法律を作りました。子どもを持つ母親の一人として、なんとかしたいと思っていました。いじめ防止対策推進法案は成立しましたが、体罰防止法案は残念ながら成立していません。今も年間220人くらい、小中高の子どもたちが自ら命を絶っているんです。1.5日に1人という計算になります。少子化だと騒ぐ前に、生まれてきてくれた子どもを守れなくてどうするんだ、と私は思っていました。

人から見ればいじめじゃないんじゃないか、と言われることもありますが、大事なことは本人がどう感じるか、なんです。大人だって、物事を気にする人もいれば、私みたいにあっけらかんとして、気にしない人もいる。だから、本人がいじめだと思えば、いじめなんです。

大人になってしまえば、学校にいる時間なんて人生のわずかな時間であることに気づけるんですが、子どもにとって学校は生活のすべてなんです。逃げ場がなくなる。学校に行けない自分は、ダメな自分だ、と自分を追い込んでしまう。だから、2つの法案以外にも、教育機会確保法案もつくりました。そしてこの法案は超党派で成立しました。これはいわゆるフリースクールのような学びの場も支援しましょうという法律です。学校がすべてではない、と。大人は嫌になれば会社を変われますが、学校はなかなか転校できない。

本当は、いじめる子を出席停止の措置にもできますが、これをやっている自治体はほとんどありません。あるいは、教育委員会が機能しない問題もある。だから、学校を離れても学べる場を作ればいいんじゃないかと。

これだけ騒がれても、いじめは減っていないのではないでしょうか。我が子が巻き込まれた場合は、どうすればいいでしょうか?

いじめは撲滅しなければいけませんが、悲しいことに認知件数は過去最多を更新しています。これは、いじめが認知され、通報件数が増えている、ということも大きいと思います。いじめそのものが以前に比べて増えているかは、ちょっとわかりません。

いじめのほとんどが、今はSNSから始まってしまっています。固定電話に連絡しなければいけなかった昔と違って、親が子どもの交友関係を把握できなくなっています。SNSをどうするか、というのも考えないといけないですね。

また、やっぱり早い段階でいじめの芽が摘めるように、子どもに目を配れる環境を作らないといけない。先生の配置をもうちょっと増やすことも必要かもしれません。今の先生は文書の記入・作成をはじめとした事務的業務や雑務も多い。それこそ、モンスターペアレンツへの対応もある。先生たちも疲弊しているんです。学校の先生を増やす、生活指導を充実させる、ということも必要です。そして何よりも絶対的に悪いのは、いじめる子なのだ、という意識を社会が共有しなくてはなりません。その上で、学校、地域、専門家など幅広い連携を行い、家庭問題も含めて、抜本対策に取り組むべきです。

特効薬はなくて、漢方薬のようなものをたくさん組み合わせながら、10年単位で物事を考えていく必要があると思っています。もちろん、今この瞬間も苦しんでいる子どもたちがいることをしっかりと認識し、命に関わる問題は今すぐ手を打たなければいけないと思います。法律も作りましたが、それでもまだまだ、やらないといけないことがある。

子どもに言わないといけないことは、学校がすべてじゃない、ということだと思っています。休むことも大事。休んでいい、学校に行かない自分はダメな自分じゃない、ともっとメッセージを伝えていきたいですね。それこそアメリカなんて、ホームエデュケーションは珍しいことじゃない。それどころか、今やハーバード大学入学者で最も多いのは、ホームエデュケーション出身者なんですから。だから、もし自分の子どもがいじめにあったら、「学校、嫌なら行かなくていい」と親が言える勇気を持ちたいですね。学ぶ環境は、いくらでも選べるのです。

そして、いじめとは断固、戦う。私ならば、断固、戦いますね。学校とも話をしますし、相手の家にだって行く。子どもを守るという親の本気度を見せることも大事だと思います。

最後に、子育てでこだわってきたことについて、教えてください。

林久美子さんインタビュー4とにかくスキンシップを大事にしてきたこと、ですね。それと、時間があるときは、子どもと一緒に何かをするようにしました。どこかに出かけたりするのもそうです。もうひとつは、お弁当だけは作り続けたこと。幼稚園も小学校のときも今も作り続けています。朝5時に必ず起きて。

それと、親が一生懸命に生きていたら、子どもはちゃんと育つと思うんです。子育てについては、いろいろテクニカルなことが取りざたされることもありますが、何より一生懸命、親が生きていくことが最も大事だと思います。私なんて、他のお母さんに比べると、一緒にいられませんでしたけど、息子は小さいときから、「大人になったら参議院議員になりたい」と言ってくれていました。私の背中もまんざらじゃなかった。悪くなかったと思いました。

大変さもありましたが、私が仕事や人生を楽しんでいたからだと思います。今は選挙に落ちてしまい、テレビや講演の仕事をさせていただいていますが、大学院にも通っています。大人になって勉強している私の姿も新鮮みたいです。息子も、前より勉強するようになった。子どもは、本当によく親を見ていますよね。