2005年04月15日

本当にやる気があるのか自分の心に問え

-立川さんと言えば、大事MANブラザーズバンドの「それが大事」という曲を思い浮かべる方が多いように思いますが、そのバンドコンセプトにある、「人間には忘れちゃいけない大事なものがある」とは、今の立川さんにとってどういうものなのでしょうか?

 「忘れちゃいけない大切な物」。僕も歌の境地を抜けて、相変わらず心にあるものはあるのですが、それはきっと当たり前のこと。例えば、それを一言で言うのなら、 やさしさとか、愛という言葉になってしまうと思うのですが、僕にとっても世の中の人にとってもはそれは聞き飽きるぐらい当たり前のことなんですよ。私も来年40歳になるのですが、男は40手前で悩むって本当ですね。(笑)今までずっといろいろなことを考えて生きてきて、全部が分かったような気がするのだけれど、実は何も分かってないんじゃないか、と思う瞬間があったりね。そんな混沌とした中にいて今シンプルな答えに帰ってきたんです。「やるのか、やらないのか」「好きか嫌いか」という選択に。
ビリー・ジョエルの言葉に、「I don’t care what you say anymore.This is my life」、つまり「人に何て言われようと、これが僕の人生」だってあるんだけど、そういうことじゃないかな、と思うんですよね。人生とは選択の繰り返しで、例えば、今日は何を食べる?なんてものから選択でしょ。だから、悩んだり、笑ったり、全て自分でそういう風になるように選択してるんじゃないかな、と思うようになったんですよ。そう考えると、正しいか、間違っているかということとは別として、まあ、少なくとも法律に触れるようなことでなければ、やる気があるのか、ないのか、自問自答することが大事なんじゃないかな。やりたいのか、やりたくないのか、それを人に対してではなく、自分にね、自分の中で本当にやる気があるのか?って、問うと、大概のことは答えが出るし、その選択そのものが答えなんですよね。その人の人生の。

-結局のところ全ては自分の選択しだい、ということですよね。

そうですね。やりたい、と思うというのは、好きだからだろうし、全てはやってみないと失敗も成功もない。出来ない理屈なんか並べてたらきりがないでしょ。結局のところ答えはどうなるか分からないから、とにかくまずやることが大事ですね。好きだったらやればいい。
この間、今僕が組んでいるバンドのドラムが良いこと言いましたよ、そう言えば。「後悔というのはやらなかった者のためにある言葉だ」とね。何かをやった後には、反省はあっても後悔はないということだけれど、その通りだな、と思いました。反省は山ほどありますが、後悔はしたことがないですね。よく、「やってから後悔した方がいいよ。」なんていうアドバイスを聞きますが、それは嘘です。やったんだから。少なくともその時のベストは尽くしたわけだし、ベストを尽くしきれなかったら、それがその時のその人のベストでしょうし。スポーツでも皆言いますよね。試合で負けて、これが今の自分の実力だと思いますって。何かに挑戦した人が後悔してますか?してないでしょ。

昔、ラグビーの試合後のインタビューで、神戸製鋼の大西一平さんが言ってた言葉が、今も記憶に残っているのですが、チームが勝った勝因に対して、「他のチームよりほんのちょっとだけラグビーが好きだったんだと思います。」と答えてたんですよ。もちろん日本一を争う試合ですし、皆ラグビーは好きでやっているのに、そんな中での言葉、かっこいいな、と思いましたね。謙虚なようで深い言葉。

僕の場合も、誰かに頼まれなくても、小さい頃から曲を書いていましたし、同じ思いですね。好きだっていうこと自体が才能だし。だから好きか、嫌いか、自分の感性を信じてあげなきゃ、何も始まらない、と思います。

-そんな好きな音楽と生きていく上で、大事MANブラザーズバンドの「それが大事」という曲のヒットは大きかったかと思うのですが、その時のお話をして頂けますか?

 そうだなぁ。皆さんは、本当に良いイメージでお考えかと思いますが、その当時はいろいろありましたね。解散してもう10年くらいでしょうか。勿論、曲が売れたことは嬉しかったのですが、子供過ぎたんですよね。精神的にも。心の準備が出来ていなかったというのかな。たまたま出来た曲で、そもそもあの時はなかなか当たらなくて、辞める覚悟をしていた時だったんですよ。そこが突然売れてしまい、精神的にも一気に変えなければならなかったし、心の方が追いつかずしんどい気持ちでしたね。アマチュアの頃は、日本一のバンドになろう、なんてよく言ってたけど、何をもって日本一かなんて考えてなかった。実際売れてみると、地位、順位がどんどん上がって行く時は怖くなるんですよ。上がって行く時といっても、17位から、いきなり3位になった時は、みんなで「凄いね。やったね。」なんて言ってるのですが、3位くらいから怖くなってくる。1位になった時は、もうみんな完全に怖がっていましたね。あとは落ちるしかないって。
 山の頂上に一度行ってみれば分かると思いますが、何もないんですよ。花も咲いてないし、空気も薄い。だから下山しようと思いましたね、あの時は。

いろいろ複雑な事情があったんですね。

 だから、むしろ社会的な認知という意味では今のバンドは、低いけれど、今は幸せだな、って思います。最高のメンバーだし、世界1のバンドだと思っています。何を持ってして1番かというと、オリコンでトップとったからでも、知名度でもなく、自分自身が感じるしかないんですよ。ナンバーワンよりオンリーワンというようなものを聞いたことがあるけれど、僕はオンリーワンがナンバーワンだと思いますね。自分の中ではたった一つしかないものだし。

「それが大事」が売れた時は、自分自身にあまり自信が持てませんでした。何も分からないうちにいきなり売れてしまったから、まだ成長してなかったんだと思います。周りからは、どんどん持ち上げられるのに、心の中がからっぽで、そのギャップを埋めることで苦しんでいましたし、潮時だったんですね。解散したのは。

ただ、あれは結婚で言うと、初婚だったので、今回のバンドは2回目の結婚。だから大きくは式を挙げてない訳です。(笑)でもそうやって、今は笑って、楽しく音楽ができるんです。そして、また嬉しい事に、みなよそのバンドに行けば、リーダー。スケジュールだけ上手く合わせながら、みんな本業より楽しいって言ってくれているのは、嬉しいですね。だから自由に、肩の力を抜いて音楽をしています。何かに追われていないし、自分の思った音楽が出来ること

-バンドのことを語る時の立川さんは、目が輝いてますね。
娘さんがおられると聞きましたが、娘さんの存在で変ったことはありますか?

そうですね。娘から教わることも多いですね。娘にとっては全部新しいもので、見るのも聞くの全て初めてのものばかり。だから自分が当たり前のように簡単に使っているものに関して、「なんでこれはこうなの?」といった質問をされると、改めて自分でも考えさせられたり気づくことがあるように思います。それに、子供の寝顔は人間じゃないですね。天使です。そしてそれが今の僕の原動力になってるのも確かですね。娘のために歌いたいと思ったし、一所懸命なかっこいい姿をちゃんと見せておきたいなと思い、歌うようになりました。まあそれは親が勝手に思うことですから、娘にとってはいい迷惑かもしれませんが。(笑)

-立川さんにとって音楽とは何ですか?

 【潤いと支え】ですね。
僕の人生そのものですから、それがなくなることは考えられません。職業にしなくなる時期がもしかしたら来るかもしれませんが、家でピアノを弾いたりすることを辞めることは絶対にないと思います。なかったら死んでしまうとさえ思いますね。
それに誰がなんと言おうと、好きですから。だから好きなものを世に問うて、それが才能がないと言われたらそれでいい。しかし、まだそこを問うていない気がするんですよ。まだみなさんが知っている曲は1曲しかないわけですし。いつか絶対もう一度世の中に出てみないといけないんだろうな、っていうのはいつも心にありますね。
だから勉強もしているし、成長もしていると思います。

実は、プラス思考という言葉、大嫌いなんですよ。思考というのはプラスなんです、それ自体が。何もないところから思考するのだから。だからマイナスもない。悪い風に考えるのは、プラスになりたいから考えるわけだし、自分の弱いところをよく知ることが本当は大事なんだと思います。
まあ、そんなことを考えながら、曲作りをしています。音楽は今の僕には支えでしかないですね

-素晴らしいお話をありがとうございました。

 

文・写真 :鈴木ちづる  (2005年4月15日 株式会社ペルソン 無断転載禁止)

立川さんから音楽とメッセージを頂きました。優しい音色の「それが大事」をお聞きください。