第7回KATARI レポート
折れない個・組織はどうつくられるのか
開催日時|2026年5月22日(金)18:00~19:15
谷田昭吾
株式会社コアウェル 代表取締役社長/タニタ創業ファミリー
「もっと気軽に、もっと深く、ビジネスの知見を学べる場を」
そんな想いから誕生したのが、講演依頼.comが主催するオンライン講演サービス「KATARI(カタリ)」です。
KATARIの大きな特徴は、ライブ配信と“対話型”の講演形式。全国どこからでも参加できるだけでなく、講師と参加者の双方向コミュニケーションを重視し、「聞いて終わり」ではなく「納得して終わる」講演体験を提供しています。
今回の第7回からは、講演30分・トークセッション30分・質疑応答15分という新構成で実施。講師の専門知識を学ぶだけでなく、モデレーター(司会者)との対話を通じてテーマを深め、参加者の疑問に答える時間も設けられました。
この取り組みは、従来のリアル講演や録画配信とは一線を画し、参加者がその場で疑問をぶつけ、深掘りすることのできる“学びの実践現場”となっています。
Chapter 01
第7回KATARIの概要
ポジティブ心理学で考える、折れない個と組織

第7回のKATARIは、2026年5月22日(金)18:00〜19:15に開催されました。登壇者は、株式会社コアウェル代表取締役社長であり、タニタ創業ファミリーの谷田昭吾さんです。
体脂肪計で世界に名を轟かせ、健康的に痩せられる社員食堂でも話題になった株式会社タニタ。谷田さんは、創業ファミリーの一員として、営業、新規事業、新会社立ち上げ、海外での役員経験などを重ねてきました。前代表取締役社長の近くで経営を学び、赤字企業だったタニタを成長させた「タニタで学んだ成功法則」を受け継いできた人物でもあります。
また、新会社立ち上げの経験をきっかけに心理学に関心を持ち、現在はポジティブ心理学トレーナーとしても活動。タニタで培われた経営の知見と、ポジティブ心理学の考え方を掛け合わせながら、個人と組織が困難に直面したときにどう立て直し、前向きに成果へつなげていくかを伝えています。
テーマ:「折れない個・組織はどうつくられるのか〜ビジネスに活かすポジティブ心理学〜」
当日は、谷田さんがスライドを用いながら講演。冒頭では、「生産性高く組織を運営できるようなヒントになるよう、ポジティブ心理学を取り入れた話をしていきます」と挨拶しました。
谷田さんが重視するのは、理論ではなく実践。多くの人が「強みが大事」「前向きに考えることが大事」と頭では理解しています。しかし、本当に難しいのは、それを日々の仕事や組織運営の中でどう実践するか。谷田さんの講演は、その“実践への橋のかけ方”に焦点を当てた内容となりました。
Chapter 02
講演ダイジェスト
折れない個・組織はどうつくられるのか
1|レジリエンスとは「凹まない力」ではなく「回復する力」

講演の冒頭で谷田さんが取り上げたのが、「レジリエンス」という言葉です。
レジリエンスとは、ストレスや困難に直面したときに、そこから立ち直る力。逆境をチャンスに変える力であり、変化に対応しながら成果を出すための力でもあります。
谷田さんはここで大切な注意点を示しました。レジリエンスは、「凹まないようになる力」でも、「絶対にブレないようになる力」でもありません。人は誰でも凹むことがあり、折れそうになることもある。大切なのは、凹まないことではなく、そこからどう適切に回復するかです。
谷田さんは、それを「竹のようなしなやかな強さ」と表現しました。硬いものは、強い衝撃を受けると折れてしまう。しかし、竹はしなりながら、また元に戻る。これからの個人や組織に求められるのは、まさにそのような回復力なのです。
少子高齢化による労働人口の減少、AIやDXの進展、身体活動の減少、ストレスの増加。変化の激しい時代において、今働いている人が折れずに長く活躍し続けるためにも、レジリエンスはますます重要になっています。
2|ポジティブ心理学とは何か

谷田さんが学んできたポジティブ心理学は、1998年にマーティン・セリグマン博士らが提唱した心理学の一分野です。
従来の心理学が、心の不調や問題の解決に焦点を当てることが多かったのに対し、ポジティブ心理学は「人がよりよく生きるにはどうすればよいか」「幸福や強みをどう育てるか」に注目します。
谷田さんは、このポジティブ心理学をビジネスの現場に応用することで、個人の幸福度だけでなく、組織の生産性やエンゲージメントにも良い影響をもたらせると語りました。
重要なのは、ポジティブ心理学を“前向き思考”で終わらせないことです。ポジティブに考えましょう、明るく働きましょう、という精神論ではなく、人が自分の強みに気づき、仕事に意義を見出し、周囲との関係性を築きながら成果を出すための実践知として活用する。そこに今回の講演の大きなポイントがありました。
3|タニタが大切にしてきた「強みの上に築く」という考え方
谷田さんがタニタで学んだ重要な考え方の一つが、ピーター・ドラッカーの言葉でもある「強みの上に築け」です。
タニタが体脂肪計を開発した背景にも、この「強み」の考え方がありました。企業が生き残るためには、他社との違いを明確にし、自社ならではの強みを持つ必要がある。そこで、体重計に脂肪計を組み合わせることで、新たな価値を生み出そうと考えたのです。
体重を測るだけではなく、身体の状態をより深く知るための道具へ。この発想が、タニタの成長につながっていきました。
谷田さんは、強みを持つことは個人にとっても組織にとっても重要だと語ります。自分たちは何ができるのか。どこに価値があるのか。何を活かせば、他者や社会に貢献できるのか。その問いを持ち続けることが、折れにくい組織の土台になるのです。
谷田さんは、「強み」には次のようなメリットがあると整理しました。
- 有能な経営者や上司は強みを重視し、それがチームの業績を上げる
- 楽観的な指導者は、従業員の生産性とエンゲージメントに良い影響を与える
- 自分ならではの強みが活かされると、心身の回復にも良い影響がある
強みは、単に成果を出すための武器ではありません。人が自分らしく働き、困難な状況でも立ち直るための支えにもなるのです。
4|失敗から見えた、強みを活かすマネジメントの本質

谷田さんは、2012年に取り組んだ新規事業の失敗についても語りました。
当時、管理栄養士を全国的に束ね、双方向の健康生活サポートシステムを立ち上げようとしたものの、プロジェクトは最終的にうまくいきませんでした。外部のシステム担当者から「もうすぐできる」と言われていたにもかかわらず、実際には進捗が大きく遅れていたことが判明し、プロジェクトは中止に至ります。
失敗のあと、谷田さんは父である谷田大輔さんと2人で反省会を行いました。そのとき、谷田大輔さんが口にしたのは、相手を責める言葉ではありませんでした。
「彼の強みをもっと使うべきだった」
進捗の遅れや情報共有の齟齬を責めるのではなく、自分たちのマネジメントに何が足りなかったのかを考える。その姿勢に、谷田さんは「強みを活かす」という考え方がどれほど深く浸透していたかを感じたといいます。
うまくいかないときにこそ、人や組織の本性が出る。失敗の原因を誰かに押しつけるのではなく、相手の強みを活かしきれなかった自分たちの関わり方を振り返る。このエピソードは、折れない組織づくりにおいて、マネジメントの視点がいかに重要かを示していました。
5|タニタ創業家に根づいていた“強み”を話し合う文化
谷田さんによれば、「強み」を大切にする考え方は、タニタ社内だけでなく、谷田家の家族会議にも根づいていたといいます。
2か月に1回、日曜日の朝に実家へ集まり、家族で話し合う。その場では、それぞれの強みや役割について自然に話し合われていたそうです。
会計に強い人、営業に向いている人、人との関係づくりが得意な人。それぞれが何に向いていて、どんな役割を担えるのかを、家族や兄弟の間で話し合う。こうした積み重ねが、「人にはそれぞれ強みがある」「強みを活かすことで組織は前に進む」という価値観を育てていったのです。
6|PERMAで考える、強みを活かす5つの実践ポイント

谷田さんは、ポジティブ心理学の考え方を日常で実践するための枠組みとして、マーティン・セリグマン博士が提唱したPERMA(パーマ)理論を紹介しました。
P:ポジティブ感情
E:エンゲージメント
R:人間関係
M:意義
A:達成
この5つは、ウェルビーイングを高めるための重要な要素です。身体的・精神的・社会的に満たされた良好な状態をつくるうえで、どれも欠かせないものだと谷田さんは説明しました。
P|ポジティブ感情

ポジティブ感情が高いほど、生産性も高まりやすいといいます。では、どうすればポジティブ感情を育てられるのか。
谷田さんが紹介した実践法は、寝る前に「今日一日で良かったこと」を書くことです。さらに、その良かったことに対して、自分がどう貢献したのかも書きます。
たとえば、「今日は天気が良かった」と書いてもOKです。その場合も「自分が〇〇をしたから天気が良くなった」といったように、自分の関わりを見つけていくこと。他人の貢献だけにせず、自分をきちんと褒めることがポイントです。
スマホではなく、できればノートに手で書く。夜寝る前に5分ほどでよい。こうした小さな習慣が、心の状態を整えるうえで役立つと語られました。
E|エンゲージメント

エンゲージメントは、日本語にすると「没頭」に近い言葉です。フロー状態とも呼ばれます。
人は、課題の難易度と自分のスキルの熟練度がちょうどよく釣り合っているときに、深く没頭しやすくなります。難しすぎれば燃え尽き感につながり、簡単すぎれば退屈になる。自分に合ったレベルの課題を見つけることが、エンゲージメントを高める鍵になります。
ビジネスでも同じです。大きな目標を掲げるだけでなく、「今の自分ができることは何か」「少し背伸びすれば届く課題は何か」を見極めることが、継続的な成長につながります。
R|人間関係

人間関係の実践例として紹介されたのが、ANAの「GOOD Job Card」です。仲間の仕事に対して感謝の手紙を書く取り組みです。
お世話になった人、助けられた人、感謝を十分に伝えられていない人を思い浮かべ、その人に向けて手紙を書く。どんな親切や好意を受けたのか、それによって自分の人生や仕事にどんな良い影響があったのかを書くのです。
興味深いのは、その手紙を必ずしも渡さなくてよいという点です。手紙を書く行為にこそ、大きな効果がある。感謝を言葉にすることで、自分自身の心が整い、人間関係を前向きに捉え直すきっかけになるのです。
M|意義
仕事に価値を見出すことも、折れない個と組織をつくるうえで欠かせません。自分の仕事は何の役に立っているのか。誰を支えているのか。どんな未来につながっているのか。
谷田さんは、「家族みんなを健康にする、大事な仕事をしている」と感じられることの重要性を語りました。日々の業務が単なる作業に見えてしまうと、モチベーションは下がりやすい。しかし、その仕事の先にある価値や意義を見出せれば、人は前向きに取り組み続けることができます。
A|達成
最後は達成です。大きな成果でなくても構いません。小さな達成を思い出し、積み重ねていくことが、自信や自己効力感につながります。
「できたこと」をきちんと認識する。うまくいった理由を振り返る。達成して嬉しかったことを思い出す。そうした小さな実践が、個人の生産性だけでなく、チーム全体の前向きな空気を育てていきます。
Chapter 03 谷田昭吾さんとのトークセッション

第2部では、土橋昇平さんをモデレーターに迎え、谷田さんとのトークセッションが行われました。
テーマは、折れない「個」のつくり方。講演パートでは組織づくりの考え方が中心に語られましたが、トークセッションでは、ビジネスパーソン一人ひとりが日常で実践できる考え方に焦点が当てられました。
赤字の中でも「世界一」を掲げたタニタの先代
トークセッションでは、タニタの先代が赤字の時期に「世界一になる」という目標を掲げた話も紹介されました。
当時は、リストラや事業撤退など、厳しい判断が必要な時期でした。にもかかわらず、「世界一になる」と言った。その時点で「世界一」が何を意味するのか、具体的に決まっていたわけではありません。それでも、まず言葉にすることで、後から数字や方向性が具体化されていったといいます。
谷田さんは、このエピソードから、実践に橋をかけることの大切さを語りました。立派な理論や目標を知っているだけでは成果にはつながりません。自分の行動にどう落とし込むか。実践への橋をかけることが重要なのです。
折れない人とは、回復力のある人
谷田さんは、「折れない人」とは、つらいことが起きない人ではなく、回復力のある人だと語りました。
人それぞれ、つらいことはあります。目標を持てば、叶わないこともあります。それでも、また立ち上がり、目標を持ち続け、他者に良い影響を与えられる人。谷田さんは、そうした人を「折れない人」と捉えています。
ここでも重要なのは、強く見せることではありません。折れないとは、無理に平気なふりをすることではなく、折れそうになったときに自分を立て直す方法を持っていることなのです。
「強み」は、逆境の中でつかめる一本の綱
谷田さんは、自分の強みを知ることが「折れにくさ」につながる理由について、強みは逆境の中で自分を支えてくれるものだからだと語りました。
困難な状況に置かれると、人はどうしても「できないこと」や「足りないこと」に目が向きがちです。しかし、そんな時に自分の強みを思い出せると、「自分にはこれがある」「ここなら力を発揮できる」という前向きな感覚を取り戻しやすくなります。
また、強みは「没頭」にもつながります。自分の得意なこと、自然と力を発揮できることに取り組んでいる時、人は時間を忘れて集中できます。その没頭感は、気持ちを前向きにし、困難を乗り越えるエネルギーにもなります。
さらに、強みは人との関係性にも影響します。自分の強みを知っていれば、周囲に対して「自分はここで貢献できる」と差し出すことができます。相手の強みも理解できれば、互いに支え合うギブアンドテイクの関係も生まれます。
谷田さんは、強みを「川で流されそうになった時に掴まれる一本の綱」のようなものだと表現しました。苦しい時、迷った時、自分を引き戻してくれるもの。それが強みなのです。
強みを見つけるための5つの問い

では、自分の強みはどう見つければよいのでしょうか。谷田さんは、まず自分自身に問いかける方法として、次の5つの質問を紹介しました。
- 子どもの頃、自然とできたことは何か
- これまで「ありがとう」と言われたのは、どんな時か
- どんなことなら、時間を忘れて取り組めるか
- 自分の弱点の裏に、どんな強みが隠れているか
- 最近「いい一日だったな」と感じたのは、どんな日か
1つ目は、「子どもの頃、自然とできたことは何か」。小さい頃から得意だったことや、誰に言われなくても夢中になれたことには、その人らしい強みが隠れています。
2つ目は、「これまで『ありがとう』と言われたのは、どんな時か」。人から感謝された場面には、自分では当たり前だと思っている強みが表れています。
3つ目は、「どんなことなら、時間を忘れて取り組めるか」。努力して頑張るというより、自然と夢中になれることは、自分の得意分野である可能性があります。
4つ目は、「自分の弱点の裏に、どんな強みが隠れているか」。たとえば、頑固さは「信念がある」とも言えますし、心配性は「準備が丁寧」とも言えます。短所だと思っているものも、見方を変えれば強みになります。
5つ目は、「最近『いい一日だったな』と感じたのは、どんな日か」。充実感のある瞬間には、自分の強みが自然と発揮されていることがあります。
強みは、特別な才能だけを指すものではありません。日常の中で自然にできていること、誰かの役に立っていること、充実感を覚える瞬間の中に、強みの種は見えてくるのです。
強みは、他者と見つけ合うことで深まる
谷田さんは、強みの見つけ方には3つのポイントがあると話しました。

1つ目は、小さな強みから見つけることです。自分の強みをいきなり言語化するのは、簡単ではありません。そこで谷田さんは、選んだ昆虫の強みを1分間でいくつ出せるかといった、ゲーム感覚のワークを紹介しました。まずは対象を自分から少し離し、「強みを探す」練習をしてみる。そうすることで、自分自身の強みにも目を向けやすくなります。

2つ目は、強みを見つけ合うことです。自分の強みは、自分では当たり前すぎて気づきにくいものです。そこで、まず自分が「頑張った」「うまくいった」「成功した」と思う場面を思い出し、具体的に書き出します。そのうえでペアを作り、その場面について2分ほど話します。聞き手は、話の中から見えた相手の強みをフィードバックします。
他者から「そこがあなたの強みだと思う」と言われることで、自分では気づいていなかった価値に気づけます。強みは、一人で探すよりも、誰かと見つけ合うことで深まっていくのです。
3つ目は、ツールを活用することです。「VIA強み診断」のような診断ツールや、現在であれば生成AIを使って、自分の経験や得意なことを整理する方法もあります。ただし、漠然と使うのではなく、「自分の強みを知りたい」という目的を持って活用することが大切です。

実際に、あるクリニックではスタッフ全員で「VIA強み診断」を行い、それぞれの強みをロッカーに貼る取り組みをしているそうです。楽観性、誠実さ、熱意、親切心など、一人ひとりの強みが見えるようになることで、部署内で自然と強みについて話す機会が増えていきました。
こうした小さな対話の積み重ねが、職場の空気を少しずつ変えていきます。短い時間でも、強みに目を向ける習慣を続けることで、個人の折れにくさだけでなく、組織全体の関係性や前向きな雰囲気にもつながっていくのです。
経営者が折れにくい組織をつくるためにできること

トークセッションの終盤では、経営者や管理職が折れにくいチームをつくるために何ができるかも語られました。
谷田さんが挙げたのは、「うまくできたことを拾ってあげる」ことです。そして、ただ褒めるだけでなく、「なぜうまくできたのか」を聞いてあげる。本人が自分の成功要因を言語化できれば、それは再現性のある強みになります。
1on1の場で話すことも大切ですが、みんなの前で褒めることも効果的です。個人の強みを周囲が知ることで、その人への見方も変わり、チーム全体に前向きな循環が生まれます。ただし、人によっては公の場で褒められることを好まない場合もあります。大切なのは、相手の性格や受け取り方に合わせて、どの場で、どのように伝えるかを選ぶことです。
谷田さんは「自分の物差しで人を測らないこと」も重要だと語りました。自分にとって簡単なことが、相手にとっても簡単とは限りません。相手の強みや背景を理解しようとする姿勢が、健全で折れないチームづくりにつながっていくのです。
Chapter 04 谷田昭吾さんとの質疑応答

第3部では、参加者から寄せられた質問に谷田さんが回答しました。講演とトークセッションで語られた内容を、さらに日常の実践へと落とし込む時間となりました。
Q1|組織の「人間関係」について、具体的に取り組んでいることや意識していることはありますか?
谷田さんは、上場企業であっても、シンプルなことができていない組織は多いと語りました。
人の話を聞くとき、相手のほうに体が向いているか。うなずきはあるか。質問はできているか。相手の立場で考えるという基本ができているか。こうした当たり前のように見えることを振り返るだけでも、人間関係は大きく変わります。
谷田さんは、組織も健康と同じで「予防」が大切だと話します。問題が起きてから対処するのではなく、普段から人と人とのつながりをつくっておく。社員同士が仲良くするだけでなく、場合によっては社員の家族同士のつながりも含めて、いろいろな関係性を大切にしておく。それが、いざというときの潤滑油になるのです。
人間関係は、特別な施策だけで築かれるものではありません。日々の聞き方、向き合い方、声のかけ方。その積み重ねが、組織のレジリエンスを高めていくのだと感じられる回答でした。
Q2|自分で思っている強みと、他者から思われている強みにギャップがある場合はどうすればいいですか?
この質問に対して、谷田さんは「基本的にギャップはあるもの」と答えました。
自分が強みだと思っていることと、周囲が評価していることが違うのは自然なことです。だからこそ、フィードバックを積極的にもらい、自分では気づいていない強みを教えてもらうことが大切だと語りました。
診断ツールを使うことも有効ですが、それだけでは納得感が得られない場合もあります。むしろ、他の人と話し合い、人から言われたことの答え合わせとして診断ツールを使うのも一つの方法です。
強みは、自分一人で見つけるものではなく、周囲との対話の中で立体的に見えてくるもの。その視点が示された回答でした。
Q3|ファミリービジネス企業で、すごいと思う会社はありますか?
谷田さんが挙げたのは、福島の和菓子屋・柏屋さんでした。
印象的な言葉として紹介されたのが、「代々、初代」という考え方です。代を継いだ人は、ただ過去を守るだけの存在ではありません。引き継いだその人自身が“初代”である。だからこそ、時代に合わせて変えてよいのです。
ただし、変えてはいけないものもあります。それは、お客様を裏切らないことです。
時代によって、お客様が求めるものは変わります。だから商品やサービス、見せ方を変えることは必要です。しかし、お客様からの信頼を裏切らないという軸は守る。この考え方は、ファミリービジネスだけでなく、長く続く組織やブランドにも通じる本質的なメッセージでした。
Q4|新規事業で折れない組織をつくるには、失敗の許容も大切ですが、致命傷にならないようリスクをどうコントロールすればいいですか?
谷田さんは、「3対1の法則」を紹介しました。
ポジティブな話が3、ネガティブな話が1くらいのバランスがよい。つまり、チャンスや可能性だけを語るのではなく、リスクの話もきちんとする。一方で、リスクばかりを語りすぎると、組織は動けなくなってしまいます。
完全に前向きな話だけで進めるのではなく、リスクを適切に見ながらも、可能性に目を向ける。そのバランスが、新規事業における折れない組織づくりには大切だと語られました。
失敗を許容するとは、無計画に挑戦することではありません。失敗から学べる範囲を見極め、致命傷を避けながら挑戦を続けること。そのためにも、ポジティブとネガティブのバランスを保つ視点が重要なのです。
Voice 参加者の声
今回のKATARIでは、「強みを自覚すること」「日々のよかったことを振り返ること」「変化しながら受け継ぐこと」など、ポジティブ心理学を日常や仕事に活かすための実践的な学びに触れたという声が寄せられました。
谷田さんの講演とトークセッションを通じて、難しく感じられるテーマも自分ごととして捉えやすくなり、参加者それぞれが明日から取り入れられるヒントを持ち帰る時間となったようです。以下は、その中から印象的な声を抜粋・整文したものです(※一部編集あり)
「よかったことを振り返る習慣を実践したい」
製造業・30代より講演で紹介されていた、毎日よかったことを3つノートに書き、それが自分のどのような行動によって起きたのかを振り返る方法を実践したいと思いました。小さな出来事の中にも、自分の関わりや強みを見つけていくことの大切さを学びました。
「“代々、初代”という言葉に感銘を受けた」
サービス業・40代より紹介されていた柏屋さんの「代々、初代」という言葉がとても印象に残りました。受け継ぐものを大切にしながらも、その時代に合わせて変えていく姿勢に感銘を受けました。冒頭の話も、トークセッションを通じてわかりやすく整理され、理解が深まりました。
「自分の強みを自覚する大切さを学んだ」
インフラシステム設計・60代より自分の強みを自覚することの大切さが、特に勉強になりました。なかでも、ポジティブ心理学の5本の柱についてのお話が印象的で、今も強く残っています。自分自身の働き方や周囲との関わり方を見直すきっかけになりました。
このようにKATARIでは、講師の知見や実体験を通じて、参加者が自分自身の仕事や日常に引き寄せながら学びを深める時間を提供しています。
知識として理解するだけでなく、小さな実践へとつなげられることも、KATARIならではの魅力です。
Next
次回予告
第8回KATARIは6月24日(水)に開催予定

第7回KATARIは、内容・形式ともに参加者から高い評価を得て幕を閉じました。その余韻も冷めやらぬ中、すでに第8回の開催が予定されています。
次回は、2026年6月24日(水)18:00よりオンラインにて実施予定です。
テーマは、「新世代は、なぜ限界を超えられるのかー日本・中国 金メダリストコーチが語る“Z世代”の育て方と信じ方ー」。講師は、プロスノーボードコーチであり、日本・中国代表選手を指導してきた佐藤康弘さんです。
Z世代・若手社員のマネジメントや育成に課題を感じている方、個人のパフォーマンスを最大化させる指導法を知りたい方、トップアスリートの「限界を超える思考法」をビジネスに活かしたい方にとって、大きな学びのある回となります。
また、グローバルな視点でのコーチングや教育に関心のある方、スノーボードをはじめスポーツの指導・育成に関心のある方にもおすすめの内容です。
質問できる対話型の講演というKATARIならではの体験を、ぜひ次回も味わってみてください。
Conclusion
終わりに
折れない力は、強がることではなく回復する力
第7回KATARIを通して感じられたのは、「折れない個・組織」とは、決して弱音を吐かず、常に前向きであり続ける存在ではないということでした。
人は誰でも凹むことがあります。組織も、失敗や停滞に直面することがあります。大切なのは、凹まないことではなく、そこからどう立て直すか。谷田さんの語るレジリエンスは、強がるための考え方ではなく、しなやかに回復するための実践知でした。
その土台にあるのが、自分や仲間の「強み」に目を向けることです。できないことを責めるのではなく、何ができるのかを見る。失敗したときに誰かを責めるのではなく、強みを活かせていたかを振り返る。日々の小さな良いこと、感謝、達成、仕事の意義を丁寧に見つめ直す。
そうした積み重ねが、個人の心を整え、組織の関係性を育て、結果として生産性の高いチームをつくっていくのだと感じられました。
「強みの上に築く」
「凹まないのではなく、回復する」
この視点は、変化の激しい時代を生きるすべてのビジネスパーソンにとって、明日から実践できる重要なヒントです。
KATARIは、こうした問いに出会い、自ら考える機会を得られる貴重な場です。形式的な学びではなく、双方向のやり取りを通じて、自分の仕事や組織に引き寄せて考えられる。そんな体験に価値を感じる方は、ぜひ次回のKATARIにも注目してみてください。
Profile 講師紹介

谷田昭吾
株式会社コアウェル 代表取締役社長/タニタ創業ファミリー
体脂肪計で世界一の実績を誇り、社員食堂でも話題になったタニタ創業ファミリー。父・谷田大輔氏の近くで経営学を学び、「タニタの成功法則」を受け継ぐ。講演では、父から学んだ経営学を客観的視点で語り継ぐと同時に、自身が学んできたポジティブ心理学の視点から、ビジネスや日常生活で実践するための方法を伝える。

