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17世紀の江戸時代初期に肥前・有田で磁器が焼成されてから400年…
永い時をかけ修業を積み、白磁制作に没頭してきた重要無形文化財・井上萬二と書道家・武田双雲が「白磁器」×「書」のコラボレーション作品を完成させました。この展示会は、日本文化の新しい幕開けを予感させる2人の出会いが産んだ、初の試みです。アーティストの二人と接する事ができ、また、直に作品に触れて購入できる、全く新しいスタイルの展示会になっております。
※イベントは終了しました。ご来場誠にありがとうございました。
アーティストの想い
井上萬二(重要無形文化財)
今回、白磁の器に書を施すというのは初めての試みであり、どのような雰囲気になるのか、どのような表情がでるのか、焼き上がりを大変楽しみにしています。86歳にしてまた新しいチャレンジが出来るということと、このような素晴らしい機会を設けて頂いたことに大変感謝しています。これを機に日本の文化について改めて見つめ直し、少しでも興味を持って頂ければ幸いです。またこの時季ならではの桜が咲き誇る広大な庭園も楽しみですね。
井上萬二
陶芸家/重要無形文化財(人間国宝)
1929年佐賀県生まれ。
15歳の時に海軍予科 練生に入隊。復員後、酒井田柿右衛窯に弟子入り。その後、轆轤師 奥川忠右衛門氏に師事。昭和44年 アメリカのペンシルバニア州立大学の焼物の講師を経て昭和46年12月に独立し現在の井上萬ニ窯を開く。
武田双雲(書道家)
同じ九州人として400年を迎える有田焼の代表格であり、陶芸家だけにその人間の器の大きさに惚れてしまう井上萬二さんと、こういう形でコラボレーションできることを心から嬉しく思います。僕らが墨や磁器を通して観てきた希望の光を感じて頂けたら嬉しく思います。
武田双雲
書道家
1975年熊本県生まれ。
3歳より書家である母・武田双葉に師事し、書の道を歩む。NHK大河ドラマ「天地人」や世界遺産「平泉」、世界一のスパコン「京」など、数々の題字を手掛ける。独自の世界観で、全国で個展や講演活動を行っている。
「希望」展への想い
土橋昇平(株式会社ペルソン 営業部第一グループ)
日本の文化を世界に発信することを目的とした「有田焼人間国宝・井上萬二×書道家・武田双雲×八芳園」のオリジナルコラボレーション。この企画の発案・アレンジ役を私、土橋(株式会社ぺルソン・営業部所属)がさせていただきました。なぜこのコラボを発案したのか?それは、「今の自分だから出来る恩返しをしたい」この想い一つです。
私は有田焼で有名な佐賀県有田町で生まれ育ちました。上京してから、有田にいる時は感じなかった故郷の素晴らしさ、有田焼のクオリティーの高さ、そして有田焼を含めた日本文化の魅力を様々な場面で感じることができました。なかでも一番衝撃を受けたのが、昨年、都内百貨店で行われた「人間国宝・井上萬二氏、康徳氏、祐希氏の三代展」です。大量生産で安価な食器等が世の中に出回り、有田焼のような伝統工芸が逆風を受けるなか、親子三代で有田焼という伝統を継承していることに何より胸を打たれました。
2016年は日本磁器誕生・有田焼創業400年という時期を迎えます。そこで私もできることはないかと思い、このようなコラボレーションを発案しました。 武田双雲氏とは講演会のお仕事から縁があって、門下生として書道教室に通わせていただいております。その中で「有田焼の白磁と書の組み合わせがマッチするのではないか?」というアイデアが浮かびました。また同時に、武田双雲氏の人間性に大変魅力を感じておりました。八芳園様は私が結婚式を挙げた場所。ビジョンとして「日本人にはこころのふるさとを。海外の方には日本の文化を。」を掲げられており、特別な場所だと感じておりました。また、このビジョンを基に様々な企画をくり広げられているので、主催者様としてはここしかないと思いました。
このような縁がつながり、一つの形となりました。初めてのことばかりで、周囲の方々にご迷惑をかけることが多くありましたが、ここまでたどり着けたことに感謝せずにはいられません。
日本には世界が真似できない素晴らしい文化があります。それを次の世代につないでいくことが私たちの使命です。今回のコラボレーションが、現代に生きる我々だからこそ、できることを考えるきっかけになればと願っております。
イベントレポート「想いをつなぐ」
準備:想いのベクトルをつなぎあわせる
井上萬二窯とのご縁と想い
井上萬二さんのお孫様であり、陶芸家を志した祐希さんとは、同じ佐賀・有田に生まれ、小学校・中学校・高校と同じ学校に通った二つ下の後輩に当たります。2014年3月、某百貨店で「人間国宝・井上萬二氏、康徳氏、祐希氏の三代展」を拝見させて頂いた際、白磁の素晴らしさ、萬二さん、康徳さん、祐希さんの親子三代で一つのものを継承していく素晴らしさに感動しました。そして若くして祐希さんが将来の有田を担う陶芸家を志したことを単純にカッコイイと思い、彼の作品も好きになりました。それから有田焼が2016年に創業400年を迎えることになり、私だからこそできる地元への恩返しはこのコラボレーションだと確信し、勇気を振り絞って有田焼の代表格である井上萬二さんに祐希さんを通して話を持ち掛けました。
武田双雲氏とのご縁と想い
2014年3月頃は、武田双雲さんとの講演のお仕事をしている時期でした。武田さんとは2013年に偶然、お仕事を通してお会いさせて頂き、「自分に正直に、楽しく生きる」「感性・感謝・感動」を活動基盤に置き、日本文化の発信する」という彼の考え・活動にリスペクトしたことと、書作品を拝見して、鳥肌が立ったことを覚えています。書道教室にも通わせて頂けるようになり、書道だけでなく人生の師匠という存在になりました。そして武田双雲さんとともに、カッコイイ日本文化を世の中に広めていきたいと思いました。
八芳園とのご縁と想い
2014年1月には八芳園で結婚式をさせて頂きました。有田という伝統と歴史のある町で生まれ育った私は、八芳園のような和の魅力溢れる場所に一目ぼれをしてしまいました。そして何よりスタッフさんのおもてなし溢れる対応に感激し、お仕事も一緒にできればと願っていた中、何度か講演のお仕事をさせていただいた経緯があります。また、ビジョンとして「日本人にはこころのふるさとを。海外の方には日本の文化を。」を掲げられていて、それに基づいたハイクオリティーなイベントを繰り広げられていることに感動し、今回のコラボイベントの主催者になっていただけないかという相談をさせていただきました。
この三者とのエピソードから生まれるそれぞれに対する想いのベクトルが、タイミング良く結ばれていき、自然発生的に物事が進みました。
2015年2月には有田で作品の制作に取り掛かりました。最初は萬二さんのみのコラボ予定でしたが、子の康徳さん、孫の祐希さんにもご協力いただき、三代の作品に書が入りました。
因みに、書いた文字は予め決めていたものでなく、制作当日に双雲さんが即興で書いた文字です。試し書きもなく一発勝負で、独特な緊張感の中で書が入りました。
当日:想いがカタチに
総じてこの希望展は、「タイミングと縁に恵まれた」としか言いようがないものでした。想いがカタチになったことは感動以外何ものでもありません。来場者には佐賀から取り寄せられた嬉野茶やお菓子が振る舞われました。萬二さんと双雲さんとのトークショーや、双雲さんは筆ペンで来場者の手に文字を書くなど、来場者とアーティストが交わりあい、初心者でも楽しめるエンターテイメント性の高い催しとなりました。平日のみの三日間で、二日間はあいにくのお天気でしたが、合計633名(3分間に一人以上)と予想以上の来場者で大盛況に終わりました。
展望:“カッコイイ”日本文化を表現する
今回の希望展での成功点は、多くの若者にご来場頂けたことです。
現在、陶芸や書道を始めとする日本文化は、一般的に若者がとっつきづらいものという風習がありますが、そのハードルを低くし、これからの時代を担う若者が盛り上げていくきっかけ作りをしていきたいと思います。“カッコイイ”と思えるような日本文化を表現することで、若者たちが日本文化に興味を持ち、発展していくことで、より魅力的な日本になっていきます。これから「カッコイイ日本文化」を発信していきますので、楽しみにしていてください。
株式会社ペルソン 土橋昇平