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一流選手・一流指導者から学ぶ組織マネジメント~結果を出すチームに共通する指導と育成の哲学~ -奥村幸治-

第6回KATARI レポート

一流選手・一流指導者から学ぶ組織マネジメント

開催日時|2026年3月16日(月)18:00~19:15

奥村幸治

ベースボールスピリッツ代表/イチロー選手の元専属打撃投手

「もっと気軽に、もっと深く、ビジネスの知見を学べる場を」

そんな想いから誕生したのが、講演依頼.comが主催するオンライン講演サービス「KATARI(カタリ)」です。

KATARIの大きな特徴は、ライブ配信と“対話型”の講演形式。全国どこからでも参加できるだけでなく、質疑応答の時間をたっぷり30分確保。講師と参加者の双方向コミュニケーションを重視し、「聞いて終わり」ではなく、「納得して終わる」講演体験を提供しています。

この取り組みは、従来のリアル講演や録画配信とは一線を画し、参加者がその場で疑問をぶつけ、深掘りすることのできる“学びの実践現場”となっています。

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Chapter 01 第6回KATARIの概要
結果を出すチームに共通する指導と育成の哲学

第6回の講演は、2026年3月16日(月)18:00〜19:15に開催されました。登壇者は、イチロー選手の専属打撃投手として知られ、少年野球からプロの世界まで数多くの選手と指導者を見てきた奥村幸治さんです。

1999年には「宝塚ボーイズ」を結成し、教え子には田中将大投手、歳内宏明投手らが名を連ねます。さらに、カル・リプケンU12世界少年野球大会では日本代表「星野ジャパン」を監督として率い、3年連続世界一へ導くなど、育成と指導の現場で確かな実績を築いてきました。現在はベースボールスピリッツ代表として、講演・研修・野球教室を通じて人材育成に尽力しています。

Chapter 02 講演ダイジェスト
一流選手・一流指導者から学ぶ組織マネジメント

当日は、野球場のグラウンドを思わせる背景の中で講演がスタート。WBC開催期間中ということもあり、冒頭から大会を分析し、野球ファンの心をつかむ話題で場が温まりました。一方で、講演の中身は決して野球関係者だけのものではなく、リーダーシップ、育成、評価、目標設定、組織づくりといった、あらゆる職場に通じる本質に満ちた内容でした。

奥村さんの語り口は熱く、一流選手を間近で見てきた実体験をベースにしながらも、そこから導かれる学びは普遍的で、ビジネスパーソンにとってもそのまま現場に持ち帰れる示唆にあふれていました。

1|一流に共通するのは「自分を見る力」と「周りを見る力」

奥村さんが、イチロー選手との長い関わりの中で強く感じたのは、一流選手ほど強いこだわりを持ちながら、同時に周囲もよく見ているということでした。

イチロー選手は、先輩の調子や練習の様子をよく観察し、「こういうときに調子が上がる」「こういう状態だと崩れやすい」といったことを自分に照らし合わせながら分析していたといいます。自分の型を持ちながら、他者からも学ぶ。この姿勢が、一流に共通する土台だと語られました。

また、イチロー選手のルーティンにも、その思想がはっきり表れています。毎日ほとんど時計のように正確に同じ行動を繰り返していた理由は、「昨日と比べて自分の状態がどう違うか」に気づくため。ルーティンは、安心のための儀式ではなく、自分のコンディションを測るための“定点観測”だったのです。

いつもと違うことを試すのは、キャンプやオフシーズンでやる。本番では、自分の状態に気づけるほうが大切。

この言葉からは、不安に駆られて何かを変えたくなる人間の心理に抗い、自分の質を安定して保つことの重要性が伝わってきました。

2|目標は“高すぎない”ほうが続く

奥村さんの話の中で印象的だったのは、イチロー選手の目標設定が現実的である点です。

「200本安打を狙って200本は打てない。1本1本の積み重ねが200本になる」と語っていたイチロー選手。遠すぎる目標は、時に人を諦めさせてしまう。だからこそ、まずは手が届く目標を設定し、それを一つひとつ達成していく。満足感を得て次の目標に挑み、その積み重ねが、結果として大きな成果につながっていくのです。

同じく田中将大選手も、1球1球に目標を持って投げていたといいます。たとえホームランを打たれたとしても、その1球はもう過去。大切なのは「次の1球」にどう向き合うか。未来に意識を向け続ける姿勢が、一流の強さを支えていることがうかがえました。

この考え方は、ビジネスの現場でもそのまま通用します。大きな数値目標や理想像を掲げることも大切ですが、それだけでは人は動き続けられません。明日できること、今日改善できることに目を向ける。その連続が、チームの成果を確かなものにしていくのです。

3|強い組織は「やらされる」ではなく「自分でやる」に変わる

奥村さんが繰り返し強調したのは、指導の目的は「言うことを聞かせる」ことではなく、「自分で考えられる人を育てる」という点でした。

たとえば、田中将大選手を指導した際にも、あえて教えすぎないことを意識していました。やらされる状態では選手は伸びない。「やらされる」を「自分でやる」に変えたとき、人は一気に強くなる。だからこそ、指導者はすぐ答えを与えるのではなく、まず考えさせる余白を残す必要があると語りました。

少年野球でも同じです。「あのピッチャー、いいよな」と誰かが言ったとき、「どこがいいの?」と問い返す。そうすると子どもたちは、自分なりに観察し、考え、言葉にしようとします。気づかせる雰囲気をつくることが、指導者の大切な役割なのです。

これは組織づくりにも直結します。トップが「こういうチームにしよう」と一方的に方針を下ろすだけでは、強い組織はできません。漠然と「良い組織をつくろう」と掲げるだけでは、人によって思い描く姿が違うため、組織はうまくまとまりません。だからこそ大切なのは、できるだけみんなの基準値を共通にすることだと奥村さんは語ります。

奥村さんは、小学生の野球チームでも「どんな選手がいい選手だと思うか」「どんなチームがいいチームだと思うか」を子どもたち自身に発表させ、そこから全員で基準をつくっていくと話しました。

強い組織とは、上から与えられた理想をなぞる集団ではなく、メンバーひとりひとりが「自分たちでこのチームをつくっている」と感じられる集団なのだと言います。

4|指導とは、結果ではなく「準備」を見てあげること

組織において人を育てる上で、奥村さんが大切だと語ったのが「結果だけを見て評価しない」ことでした。

たとえば、新入社員が自分なりのマニュアルをつくっていたら、その行動に上司が気づき、褒めてあげる。結果が出たから褒めるのではなく、どんな準備をしているのか、どんな工夫をしているのかを見る。そうした視点が、人の成長意欲を引き出します。

それは、目に見える成果ばかりが重視されがちな職場において、とても重要な示唆です。成果には時間差があります。しかし、準備や工夫、姿勢には、成長の芽がすでに現れている。そこを見逃さずに声をかけることが、育成における信頼の起点になるのです。

5|一流のリーダーは、自分より“チーム”を前に出す

WBCのような短期間で編成されたチームをどう強い組織にするか。その問いに対して、奥村さんは「リーダーになるべき人が、どれだけ先頭に立って行動できるか」が鍵だと語りました。

印象的だったのが、過去のWBCで不調だったイチロー選手の振る舞いです。自分自身も苦しんでいたにもかかわらず、試合後には若い選手たちを食事に連れて行き、面倒を見ていた。その姿に選手たちが心を動かされ、最後の試合では全員がイチロー選手と同じユニホームの着方をした。あのヒットは、イチローひとりが打ったのではなく、みんなが打たせたヒットだったと振り返りました。

また、新庄剛志さんのエピソードも印象的です。メジャーから帰国して日本ハムに入団した際、自分より年上のスタッフ全員のリストを出してもらい、一人ずつ挨拶をしたという話からは、一流選手ほど人としての礼節や気遣いを徹底していることが伝わってきます。

一流の選手は、技術だけで一流なのではない。前向きで、やり続ける力があり、周囲を尊重し、チームの空気をよくする行動を自然に選べる。だからこそ、人がついてくるのです。

6|AI時代だからこそ、「気づく力」と「考える力」が問われる

講演の後半で奥村さんは、現代の子どもたちや若い世代についても言及しました。数字やデータを追いかけることが先行し、自分と向き合ったり、疑問を持ったりする力が弱くなっているのではないか、と。

「150キロを投げるためにやっています、という子がいる。でも本当に大事なのは、それなのか。145キロでも抑えられるなら、そのほうがいいんじゃないか。そういう問いを持たないといけない」

データやAIが発達する時代だからこそ、人間に必要なのは「自分で考える力」「違和感を持つ力」「本当に必要なことを見極める力」だというメッセージは、野球の話にとどまらず、まさに今のビジネス環境にも重なるものでした。

最後に奥村さんは、組織に必要な力として「自己分析能力」を挙げました。今の自分がどの位置にいて、何ができて何ができないのかを振り返る。その上で、「これはできる」と決めたことを明日やってみる。そして振り返り、次に活かす。その積み重ねが目標設定につながり、成長につながっていく。シンプルでありながら、本質的な締めくくりでした。

Chapter 03 奥村幸治さんとの質疑応答

KATARIの真骨頂は、参加者からの率直な質問に講師が真正面から答える濃密な時間です。今回も、経営や育成、リーダーシップに関する質問が相次ぎ、野球を超えた学びへと広がっていきました。

Q1|現代のビジネス組織を牽引するリーダーが取り入れるべきことは?

奥村さんは、「若い人から憧れてもらえるリーダーになること」が大切だと答えました。リーダーがどんな姿を見せるかが、組織全体の基準になるからです。

たとえば佐々木朗希選手にとっては、大谷翔平選手や山本由伸選手のそばにいること自体が、何よりの学びであり経験になる。つまり、リーダーは“言葉で教える人”である前に、“そばにいるだけで学びになる人”であることが理想だということです。

Q2|日本とメジャーの育成方針の違いは

この問いに対し、奥村さんは「メジャーの監督やコーチは、基本的にアドバイスをしすぎない」と説明しました。日本では「こうしなさい」「ああしなさい」と指導する場面が多い一方、メジャーでは選手本人の考えを引き出す関わり方が主流だといいます。

だからこそ指導者には、教えるタイミングと、やらせるタイミングを見極める力が求められる。すぐに答えを渡すのではなく、選手が自分で気づく余地を残すことが、主体性を育てるうえで重要なのです。

Q3|少年野球では、長期的な成長より目の前の勝利を優先しがちでは?

子どもたちは当然、勝ちたい意識が強い。しかし、指導者まで勝ちたい気持ちを優先しすぎると、子どもたちは潰れてしまうと奥村さんは語ります。

だからこそ、指導者は「負けてもいい試合」を見極める必要がある。普段試合に出られない子をあえて出して試す場面をつくるなど、長い目で見て次につながる選択をすることが大切だという指摘は、育成の本質を突くものでした。

Q4|奥村さんは叱る指導をしますか?

「めちゃくちゃ叱りました。日本一厳しいと言われたこともあります」と率直に答えた奥村さん。ただし、感情的に叱るのではなく、「叱れる材料があるから叱る」のだと強調しました。

道具を片付けない、決められた基準を守らない。何をやってはいけないのか、組織としての基準がはっきりしているからこそ、叱られる側も納得できる。叱ることそのものより、叱る前提となる基準づくりの重要性が伝わるやり取りでした。

Q5|ボトムアップが重要な中で、自分で考えさせるための秘訣は?

奥村さんは、まず「今の組織を自分はどう見ているのか」「どんな組織が良い状態だと思うのか」を本人たちに考えてもらうことが出発点だと語りました。

さらに、周りに伸びている組織があるなら「なぜその組織は伸びているのか」を考えさせる。正解を教えるのではなく、問いを通じて自分なりの答えを持たせる。このプロセスそのものが、考える力を育てるのだとわかる場面でした。

Q6|部下を褒めたいが、自分の目が届かないところはどうすればいいか?

この問いに対しては、「自分ひとりで見つけようとしなくていい」と明快な答えが返ってきました。他のメンバー、とりわけキャプテンのような立場の人に「最近あの人、どう?」と聞いてみる。そして「キャプテンが褒めてたぞ」と本人に伝える。

それによって本人のモチベーションが上がるだけでなく、キャプテンの株も上がる。褒める文化を組織の中で循環させる、実践的なヒントに満ちた回答でした。

Q7|これまで見てきた監督の中で、現代に活かせる指導者は?

奥村さんが挙げたのは、オリックス時代の仰木彬監督でした。門限もなく、移動時のスーツも自由。管理ではなく自主性を重んじるスタイルで、「グラウンドで結果を出すために何をすべきか、自分で考えてくれ」と選手に委ねていたそうです。

連敗が続くと監督が不安になって練習量を増やすケースは多いものの、仰木監督は違いました。「休んだほうが勝つだろ」と言い、選手の心理状態や体調まで見た上で判断していた。その話からは、強い組織をつくるのは管理ではなく、信頼と見極めであることが伝わってきました。

その他の質問

当日はこのほかにも、以下のような質問が寄せられました。

  • イチロー選手のルーティンで印象に残っていることは?
  • AIが発達する時代に、指導者が大切にすべきことは何か?
  • 奥村さんがプロゴルファーになったきっかけは?

スポーツの文脈から始まりながらも、最終的には組織運営、人材育成、自己成長へとつながっていく質疑応答は、KATARIらしい厚みのある時間となりました。

Voice 参加者の声

今回のKATARIでは、一流アスリートたちの“表には見えにくい行動特性”や、そこから導き出されるチーム・組織づくりの本質に学びを得たという声が多く寄せられました。

イチロー選手や田中将大選手といった一流の事例を通して、個人の姿勢だけでなく、組織運営や指導のあり方にまで示唆が広がる時間となったようです。以下は、その中から印象的な声を抜粋・整文したものです(※一部編集あり)

「一流選手の“見えない行動”から、今日から実践できる学びを得た」
サービス業・30代より

イチロー選手やマー君、そして新庄さんについて、グラウンドの上では見えない一流の行動を知ることができ、とても興味深く聞かせていただきました。どれも特別な人だけの話ではなく、自分自身も今日から実践できる内容だと感じられ、あっという間の75分でした。

「指導者として、組織づくりに活かせる本質を学べた」
通信業・60代より

指導者という立場から拝聴しましたが、どう組織を作り上げていくかを考えるうえで、大いに参考になるエッセンスをいただけたと感じています。個人の能力だけではなく、人やチームをどう導いていくかという観点でも、多くの示唆がありました。

「チームづくりに必要な要素を、一流アスリートの行動から学べた」
広告業・50代より

チームや組織づくりにおいて大切なことを、一流アスリートの行動特性を通じて学ぶことができました。成果の裏側にある習慣や姿勢を知ることで、日々のマネジメントや関わり方を見直すきっかけにもなりました。

このようにKATARIでは、華やかな実績の裏にある思考や行動の積み重ねに光を当てながら、参加者が自分の仕事や立場に置き換えて考えられる学びの時間を提供しています。

憧れや感動で終わらせるのではなく、明日からの行動や組織づくりに活かせる視点を持ち帰れることも、KATARIならではの魅力です。

Conclusion 終わりに
強い組織は「考える力」と「気づく力」から生まれる

今回のKATARIを通して強く感じられたのは、強い組織は、トップの号令や厳しい管理だけでは生まれないということでした。

一流選手に共通するのは、自分の状態を正しく把握する力、周囲から学ぶ力、そして目の前の一歩に集中する力。一流指導者に共通するのは、教えすぎず、考えさせ、基準を示し、結果だけでなく準備や姿勢を見ていること。奥村さんの話からは、そうした“地に足のついた哲学”が一貫して伝わってきました。

「やらされる」から「自分でやる」へ。

「正解を教える」から「考えさせる」へ。

「結果だけを見る」から「準備にも目を向ける」へ。

その転換こそが、これからの組織マネジメントに求められる本質なのかもしれません。

AIやデータがますます存在感を増す時代だからこそ、人間に必要なのは、気づく力、考える力、そして仲間のために動く力。第6回KATARIは、スポーツの世界を通して、その原点を改めて教えてくれる時間となりました。

Profile 講師紹介

奥村幸治

奥村幸治

ベースボールスピリッツ代表/イチロー選手の元専属打撃投手

イチロー選手が210安打を達成した時に、イチロー選手の専属打撃投手を務めていたことから“イチローの恋人”としてマスコミに紹介され、以来コメントを依頼されてのテレビ出演多数 。2023年9月にQT(Qualifying Tournament)1次予選に出場。JGTOの規定により宣言プロとしてプロゴルファーの活動が認められる。2024年度は、PGAのプロテストに挑戦し、プロテスト合格を目指す。また、各地域で開催されるプロの大会の予選会に出場し、本選出場を目指す。

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