2017年04月18日

Vol.1

中小企業の“稼ぐ力”をアップさせる3つのコツ ~マーケティングコンサルタント・高橋克典

なぜ、今「小さな会社のブランド」なのですか?

中小企業の“稼ぐ力”がアップすると、皆が幸せになれるからです。

プロフェッショナルに訊く!マーケティングコンサルタント・高橋克典

 現在、中小企業は国内企業数の99.7%を占め、労働人口の7割はそこで働いています。つまり、中小企業は日本経済を支える存在。中小企業が自らの力で売り上げを伸ばし、利益を出すことができる“稼ぐ力”を持たなければ、日本の景気が良くなることも、そこで働く従業員の給料を上げることもできません。

 その突破口となるのが、会社や店独自の“ブランド”をつくること。顧客の共感や信頼が得られる“ブランド”に育て上げる、いわゆるブランディングこそが中小企業の“稼ぐ力”を高め、経営力強化にとても有効だと考えるからです。

 しかも、ブランディングは規模の小さい企業ほど会社の個性や製品の独自性を出しやすいので、広告宣伝費などのお金をかけなくとも、容易に着手することができます。ブランディングさえできれば商品は高く売れるようになりますから、売り上げも営業利益も同時にアップする、という即効性も期待できるでしょう。

 例えば、同じエリアに2軒の蕎麦屋があります。1軒はカレーライスやラーメン、お子さまランチも作ります。もう1軒は蕎麦しか作りません。さて、蕎麦を高く売れるのはどちらの店だと思いますか?

 また、診療科目が内科・アレルギー科のクリニックと、内科・小児科・アレルギー科・婦人科・外科の病院。あなたのお子さんが喘息になったら、どちらの病院へ連れて行きますか?

 要するに、ブランディングとは「蕎麦と言えば、Aの店」「喘息なら、Bクリニック」に行けばいい、と顧客に認知させること。ところが、小さな会社、小さな店ほど、売り上げが下がり始めると、不安になっていろいろなことに手を出したがります。そんなことは止めて、自社の強みを1つに絞る。ブランディングこそが、“稼ぐ力”をアップさせ、商売を成功に導くための最善策なのです。

ブランディングを成功させるポイントは?

「お金をかけない」「やらないことを決める」「人でつくる」の3つ。

プロフェッショナルに訊く!マーケティングコンサルタント・高橋克典 まず初めに、中小企業のブランディング手法は、多額の資金を投じて綿密な市場調査や商品開発を行う大手とは全く違うことをご理解ください。ブランディングにお金をかけてしまっては、せっかく商品が高く売れて、粗利が上がっても、営業コストがかさんで利益が残らなくなってしまうからです。「お金をかけない」でいても、中小企業は大手とは比べものにならないほどお客さんと近い距離にありますからね。自社の商品やサービスに自信をもつことができれば、おのずとお客さんにも伝わるというわけです。

 では、どうやって伝えたらいいのか? というと、お客さんが「あれっ?」と思うようなことを出し惜しみせず、堂々と言ってしまえばいいのです。言い換えれば、お客さんの顔色を気にしない。イタリアやフランスの会社は特にそれが顕著で、「なんでそんなに高く売れるの?」という商品がゴロゴロあります。

 例えば、私が経営に携わっていたカッシーナでは、家具を売る時に、製品の耐久性や対荷重とった“機能的価値”について、最初はほとんど語りません。そうではなくて、「この家具があれば、毎日幸せな気持ちで過ごせます」とか、「すてきなガールフレンドができるかもしれません」などと“情緒的価値”を訴求することによって、ブランドの付加価値を上げていきます。

 すると、お客さんは、どうしてもその商品が欲しくなる。「注文から納品まで4カ月待ち」と言われてもですよ。そして、ようやくお気に入りの家具を手にしたお客さんは、次に「人に見せたい」「自慢したい」という欲求にかられます。スマートフォンも同じ。スティーブ・ジョブスは「機能的なベネフィットよりも、情緒的ベネフィット」を重んじていました。その証拠に、アップル社ではチーフ・デザイン・オフィサーが会社の経営に深く関与しています。スマートフォンを持っている人に、「なぜ、スマートフォンなのか?」と聞いて、「丈夫だから、持ち運びに便利だから」と答える人はいないでしょう。誰もが、「好きだから、かっこいいから」と答えますよね。そこが重要。商品の作り手や売り手が誇りと自信をもっていれば、そこに価値を感じてくれるお客さんは必ず存在します。

 「カレーパンなら、どこのパン屋にも負けない」と思っているなら、カレーパンづくりに傾ける情熱をお客さんに面と向かって語ればいい。毎日作るのが大変なら、「毎日は作れない」と言ってしまえばいいのです。すると、なぜか気になってしまうのが、人の心理。「今日はあるかしら、明日はどうかしら」と、カレーパンを手に入れようとするお客さんがやって来るのです。

プロフェッショナルに訊く!マーケティングコンサルタント・高橋克典 つまり、なんでも完璧にやることが、ブランディングではありません。「うちは、これだけしかやらない」と割り切れば、自社の特徴や個性を分かりやすく伝えられるばかりか、社員は「やるべきこと」が明確になり、仕事の効率もアップします。値引きはしない、大手や競合の真似はしないなど、「やらないことを決める」ことが重要です。

 そして「当社は、これでいく!」と決めたら、社員が一丸となってブランド構築に取り組むことが大切。いわゆる“インナーブランディング”です。日頃、お客様と接している社員の働きぶりは、自社のブランドを浸透させていく上で非常に大きな影響をもたらします。たった一人の社員がとった行動で、お客様をがっかりさせてしまっては、元も子もありません。

 だからといって、社員全員が同じ服装、同じ営業トークで臨んではつまらない。従業員30人の会社なら、30通りの営業スタイルがあった方がお客様に楽しんでいただけます。そこも大手には絶対に真似のできないブランディングの面白いところ。

 例えば、商品に対する知識は乏しくても、声をかけやすい店員さんっていますよね。その人は多くのお客様にとって、気さくで、親切な店員さんとして映るでしょう。つまり、「ブランドは人がつくる」もの。視点を変えれば、一見欠点に思えることでも長所になる可能性は十分にあります。広告宣伝しなくても、ブランディングに成功した小さな会社やお店の話はいくらでもありますので、機会がありましたら、ぜひお声がけください!