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2019年12月13日

過激派による民間人殺害事件

 2019年12月4日アフガニスタン東部ナンガルハル州の州都ジャララバードで支援活動を続けていたペシャワール会の現地代表で医師の中村哲さんが銃撃を受け亡くなりました。襲撃の実行犯は行動を共にしていたボディーガードやガイドも殺害。6名の命が奪われました。
 アフガニスタン東部一帯では、イスラム組織タリバーンや過激派組織イスラム国、さらに指揮系統から外れた部族・地域の枠で繋がる武装組織が絡み合っており、これまでに何度も襲撃テロ事件が引き起こされてきました。
 アフガニスタン復興支援においては世界各国から様々な支援団体が現地での活動を展開するも、関係者の拉致・拘束、殺害事件が続き支援の動きを縮小せざる得ない状況が続いていました。ですから、現地で活動を続ける外国人はアフガニスタンの生活慣習に染み込んでいく方法を誰しもが模索しています。イスラム教の規律や伝統を重んじる風土、多民族の暮らしに寄り添っていくこと。長期にわたる現地での生活や支援の実績と信頼を積み重ねることが活動を支えていく絶対条件であります。

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 今回の襲撃事件で特徴的だったのは、これまで繰り返しテロ事件を引き起こしてきたイスラム組織タリバーンが事件への関与を即時に否定したことでした。アフガニスタンで頻発する干ばつに対処する灌漑用水の構築や緑化運動を展開したペシャワール会の中村哲さんの姿勢を、多数の国民が認識していただけでなくタリバーン側も受け入れていたことが声明から推察されます。

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 過激派が跋扈するアフガニスタンでは犠牲者を伴うテロ事件が頻発しています。今年行われた大統領選挙では各々の立候補者が治安復興や生活基盤を求める国民の声を意識したマニフェストを掲げていました。
 アメリカのトランプ大統領は、アフガニスタンに駐留するアメリカ軍を撤退させる条件で、タリバーンとの和平協議が最終段階に入っていると発表しています。アフガニスタンの安定は、過激派組織をいかに交渉テーブルに繋げておくことができるのか、この対話環境を維持できるかにかかっています。タリバーンがアフガニスタン政府と交渉せずともアメリカ政府を仲介役に絡めることで、テロではなく対話という抑止力を提示できるのかもしれません。これからもアフガニスタン情勢に注視が必要です。

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渡部陽一

渡部陽一

渡部陽一わたなべよういち

戦場カメラマン

1972年9月1日、静岡県富士市生まれ。静岡県立富士高等学校 明治学院大学法学部卒業。戦争の悲劇とそこで生活する民の生きた声を体験し、世界の人々に伝えるジャーナリスト。 世界情勢の流れのその瞬間に現場…

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