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藪本雅子からのメッセージ

1991年、日本テレビアナウンス部入社。DORA結成で注目され、「EXテレビ」「スーパージョッキー」「夜も一生けんめい」など多数のバラエティー番組に出演する。ニュース番組「きょうの出来事」に携わるようになってから報道を志願し、98年、社会部記者に転向。警視庁、厚生労働省、環境省の他、内省班キャップとして各省庁を兼任する。2001年、政治部記者に異動。田中真紀子大臣当時の外務省、911テロ直後の防衛庁担当。同年末退社。ハンセン病をテーマにした「女子アナ失格」出版を機にゆるやかに活動を開始している。現在二児の母でもある。

 
苦しみ…もがき続けたアナウンサーのとしての日々
  私は幼い頃から芸能界に入る夢があり、とにかく「有名になりたい」という思いからアナウンサーになりました。一度はこの夢に挫折した経験もあったので、これでやっと過去の自分と決別できたという気持ちでした。でも現実は違った…。同期が順調に仕事をしている一方で、自分はニュース原稿も読めない、バラエティ番組でも自分の居場所がない。「有名になりたい」という思いで飛び込んだ世界には、どこにいっても自分の居場所がなくなっていたんです。会社における自分という存在意義を見失ってしまったんです。自己嫌悪・自信喪失の連続で、ついにはカメラの前でしゃべることに恐怖すら感じていました。そんな状況ですから、精神安定剤に頼ったり、お酒に逃げる毎日。過食症・摂食障害を繰り返し、毎日が本当につらくて自殺も考えたこともありました。その時は本当に苦しかったですね。それでも私は「逃げること」をしませんでした。もしここで辞めたら一生自分に自信が持てないままコンプレックスを抱えて生きていくことになると思い、それだけは嫌だった。とにかく「生きていてよかったと思いたい」という思いで必死にもがいていましたね。

 そんな時に、ニュース番組「きょうの出来事」の取材で、ハンセン病の問題に出会ったんです。自分自身が会社内で弱い立場にいたことで、社会的に弱い立場にいる人たちに強いシンパシーを覚えました。国家犯罪とも言える隔離政策によって療養所での過酷な生活を余儀なくされていたハンセン病患者の人たちが、自分の生・生きるということに対して真剣になっているのを目の当たりにし、じっとしている自分が情けなく、罪なことに思えました。限られた生、一回しかない人生の中で、自分にできることを一生懸命に真剣に生きている姿を見て、私の気持ちが奮い立ったんです。
 
人生を変えたハンセン病との出会い
藪本雅子  
   

 それから、ハンセン病問題をとことん取材してみようと、アナウンサーから報道記者へと転身を決意しました。記者への転身には相当な勇気がいりましたし、自分には報道記者は務まらないかもしれないという不安ももちろんありました。それでもやりたいという気持ちが勝ったんです。 取材当初はハンセン病問題は社会的関心の低いものでしたし、記者としての生活は睡眠時間もほとんど取れず過酷な日々が続きましたが、とにかくハンセン病の取材をやり遂げるという大きな目標に向かって突き進みました。 取材過程で目の当たりにしたハンセン病問題の差別と虐待の真実はあまりにも重いもので、この問題を徹底的に追究していくべく邁進した取材記者としての3年間は本当に濃密な時間でした。 そしてついに、2001年5月11日のハンセン病国家賠償訴訟で原告勝訴の判決(注)が出たときには、自分自身が認められたような気持ちになりとても感激しました。「自分がやってきたことは正しかったんだ」というあの時の達成感は今でも忘れられません。
 振り返ってみると、アナウンサー時代の苦しかった環境から逃げなかったことが、大きな達成感・喜びにつながり、ハンセン病問題との出会いが私自身を大きく成長させました。報道記者としての経験を通じて、目標設定ができるかどうかが有意義な仕事につながるということも痛感しました。

※ハンセン病国家賠償訴訟。国による長年のハンセン病患者強制隔離収容政策に対し、元ハンセン患者たちが国の責任を追及し訴訟を起こした。熊本地裁の原告全面勝訴の判決に対し、国は控訴を断念。

 
社会に渦巻く問題提起〜それが私の使命
  藪本雅子
   

 その後ハンセン病問題という大きな仕事をやり遂げたことと、結婚も重なり日本テレビを退社しました。そして現在、二児の母親として子育てをしながら、大学院の修士課程でジャーナリズム論やメディアについて勉強をしています。
大学院に行き始めたきっかけは、退社をしてから子育てをしている間に、「これから自分が社会に対して何ができるんだろう」と真剣に考え、やっぱり私にとってはアナウンサーや報道記者時代にメディア側の人間として現場で体感したことが大きかったんですね。ジャーナリズムの世界をとことん追求していこうと決めたんです。自分が現場で体験してきた社会に存在する様々な疑問や怒りに対して、メディアやジャーナリズムの最先端を学問として学びなおすことで、社会の構造や問題の真実が見えてくるのではないかと思いました。特に、報道記者時代に出会ったハンセン病問題をはじめとして、社会にはまだまだ報道されていない差別や人権侵害が存在しており、こうした大事な問題をマスコミやメディアの仕組みと絡めてとことん追求していきたいですね。

 そして現在は大学院で学んだことを社会に対しどんどんとメッセージとして発していくことが私の使命ではないかと思っています。今後は講演活動等を通じ、人権問題を含めた社会に渦巻く問題提起をしていければと思っています。日本全体がよりよい社会に向かっていくための火付け役になれればと思うし、それが私の使命なんですよ、きっと。

 
 
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