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井出敏和さんインタビュー

2005年に「いきいきロハスライフ」を出版し、ロハスの概念を日本に広める。2007年、環境、健康配慮型企業が集結した「ロハスビジネスアライアンス」を発足。 同年、カーボンオフセットや、健康と環境配慮の意識の高い生活者(グリーンコンシューマー)層を顧客とする企業のマーケティング活動支援を行う、ジーコンシャス株式 会社を設立。京都議定書排出権を活用した、カーボンオフセットができるCarbonPASS を国内で初めてWebで提供するサイト、CarbonPASS.jp も手掛ける。 2009年7月4日、5日には、開港150周年イベントで沸く神奈川県のみなとみらい・パシフィコ横浜 にて、環境配慮型商品やサービスが集まるBtoCのイベント「グリーンEXPO 〜エコとオーガニックが大集合〜」を開催。実行委員長として総合プロデュースも 手掛け、総合計36,625人が来場し、成功を収める。


Keywords
  1) 横並びのCSRから企業の存在意義につながるCSRへ
  2) CSR活動はビジネスチャンス!
  3) CSRなしでは機関投資家・消費者の支持は得られない
  4) 不況にも強いグリーン企業

―――この度は井手さんをお招きし、CSRの傾向、トレンドについてインタビューさせて頂きます。まず、日本のCSRは、現在どのような状況にあるのでしょうか?

 私は、CSRだけでなく、グリーン消費者やロハス、企業のグリーンマーケティングも手掛けておりますので、今回は、単に日本企業の社会的責任としてのCSRという視点ではなく、グローバルな動向も踏まえてお答えしていきたいと思います。
 日本でも大手を中心に、近年はCSRに真剣に取り組んでいる企業も増えてはいますが、まだまだ、隣の企業がやっているからとりあえずこれぐらいやらないと、という意識も多いのではないでしょうか。それを、あるCSR専門誌では「横並びのCSR」と指摘して特集を組んだこともあります。
  言うまでもなく、これからは、ビジネスなり商売にも直結するという意識で、顧客を含めたさまざまなステークホルダーにアピールするCSR活動をしていかないといけないでしょう。いわば、これからは企業の本気度が試される事になるのです。

―――では、CSR活動が進んでいるといわれる欧米などではどのように捉えられているのでしょうか?日本企業はどのようにCSRを捉えていく事が望ましいのでしょうか?

 海外では、例えば機関投資家の投資企業の決定に、企業のCSRや環境対応がすでに大きな要素を占めています。環境に配慮していない(CO2排出を削減努力をしていない)、CSRがきちんと出来ていない会社は「投資対象にならない」、土俵にすらあがれないという実情があります。つまり、環境対応、CSR活動が、株価にも資金調達にも直結している訳ですね。
 日本の企業でも、これからは横並び意識から脱却し、率先して他の企業とは違う特色を出し、それをステークホルダーの人たちに正しく伝えるということが重要になってくると思います。それがひいては、持続可能(サステナブル)な事業を行う企業として評価され、株価にも反映されるように日本でもなりつつあるのだと思います。ですから、CSRレポートひとつとっても、いかにその企業が社会にとって必要か、その企業の存在意義・価値をアピールするか、そしてそれをどう解りやすく伝えていくか、という総合的な視点で、それぞれ工夫をすることが必要ですね。

―――この社会に必要な企業である事を訴える為に、企業は多くのステークホルダーの方々に伝える『クリアすべき課題』があると思います。その一つとして、世界では『環境問題』が20世紀後半から挙げられております。日本企業は、日本という国家の視点からも今年(09年)夏に、鳩山首相がサミットにて宣言した、1990年比で温室効果ガスの25%削減という課題に取り掛からなくてはなりません。現時点ではこの課題を『大きな壁』として捉えている企業・企業リーダーの方々が多いようですが、どのようにお考えですか?

 
   

 CO2削減に積極的に取り組むことをビジネスチャンスと捉え、競争力を強化する企業と、逆に淘汰されていく企業がでてくるでしょうね。
 日本では、民主党の90年比温室効果ガス25%削減の目標を達成するには、家計や企業の負担が大幅に増えると言われておりますが、産業構造も社会も低炭素社会に大きく変わり、消費者意識もグリーン化するでしょうから、企業の方には、是非これをビジネスチャンスと捉えて発想転換して頂ければと思います。

 おそらく25%削減の内訳を決める過程で、実際に排出量を減らす、いわゆる「真水」と呼ばれる割合と、排出権の活用なども制度化されていくと思います。排出権に対しては、まだまだいろいろな議論がありますが、資本主義の仕組みの中で、効率的に温室効果ガスを削減させていくためのメカニズムである、ということが本質なのだと思います。企業にとっても、金融にとっても、削減することがインセンティブにつながる仕組みということが出来ます。
 ヨーロッパで先行しているキャップ&トレードなどの排出権取引の仕組みが、日本にも本格導入される可能性も高くなってきました。導入され、キャップがはめられた企業は、「CO2マネージメント」という視点で、どのように対応するかを決める必要に迫られます。平たく言えば、頑張った企業は余った削減枠を売れるし、頑張れなかったところは他から買い取るか罰金を払う、ということになるのです。つまり、企業にとって「チャンス」にもなり「コスト」にもなり得るという話ですね。今まで企業のバランスシートには出てこなかったCO2排出枠が、場合によっては負債として計上せざるを得ないケースも出てくることになり、それが企業に対する評価基準にもなる世の中がすぐそこまで来ているのです。

―――企業にとって、低炭素社会に向けた動きというのは出費が多いように思えるのですが、 マイナスばかりなのでしょうか?

 CO2削減についていろいろと議論がありますが、日本はすでに90年代にオイルショックを経験しました。今回の状況を重ねて考えてみると、正に「25%ショック」と例えても良いかもしれません。90年代にはオイルショックを契機に、多くの日本企業が「省エネ」に取り組み、エネルギー効率を上げるために様々な研究・企業努力を行った結果、多くの省エネ商品・サービスが社会に提案・提供されました。その「90年代の努力」が今の日本製品に反映され、それが世界市場で評価される一つのきっかけを作った下支え要因になっている事は確かでしょうね。具体例を挙げさせていただくとすれば、カリフォルニア州で、環境問題への取り組みを契機に車の排ガス規制が導入される際に、アメリカの車メーカーは「出来ない、出来ない」と反対していた際に、日本車がいち早く対応できた事実も、90年代の努力の下地があったからといえるでしょう。
 そう考えていきますと、今回の25%ショックを乗り越えるために、官民あげて取り組み、研究開発を進め、それに対応しきれた企業が2020年には、生き残っているのだと思います。もちろん、コストもかかりますが、それは「先行投資」として捉えるのが適切でしょうね。経営面から見ても、「環境対応」を積極的に行う姿勢を前面に出すことが重要です。必ずしも、大企業でなくとも、そういう企業が市場から支持されるのが21世紀のグリーンマーケットになりますね。

―――CSRの概念・意識が高いといわれている欧米など世界ではどのような取り組みが 行われているのでしょうか?

 欧米では、冒頭でも申し上げたように、環境スコア(CO2削減への取り組み)やCSRスコアに真剣に対応しないと、機関投資家ら見向きもされない状況にあります。
 CO2削減に関しては、ヨーロッパでは2005年からキャップ&トレード制度が導入され、排出権市場で排出権の取引が既に行われています。ヨーロッパに進出している企業は、既にキャップが架かっているケースがありますが、これから進出をしていく事を考えている企業にとっては、クリアすべき一つのハードルとなっているでしょうね。
 中小企業でも、たとえ技術力があっても、CSR活動や従業員の環境意識が低いままでは、欧米の企業と取引できないというケースも考えられます。ですから、社内の意識改革などにも積極的に取り組む必要があると思います。それがひいては、日本市場でも今後反映されていくとすれば、その動きを先取りして、トップランナーになる意気込みで取り組むことが必要ですね。

  アメリカでは、大手企業が本気になって「サステナブルな社会の実現」に向けて事業自体を大きく見直しながら、企業の方向、展開を変えるケースが増えています。
  私が興味を持っている企業の一つとして「ウォルマート(Walmart)」があります。ウォルマートは創業者一族が、環境、CSRを積極的に推し進める決断をしました。スローガンも、「Everyday Lowprice、毎日が低価格」から「Save money. Live better、賢く消費しましょう」へ転換しています。きっかけのひとつは、数年前に起こった『ウォルマートバッシング』(ウォルマートの従業員に対する待遇などが批判された)だったようです。
  その後、創業者一族のもと3年ぐらい前からトップダウン方式でものすごい勢いでシフトチェンジが行われています。例えば、店舗の太陽光発電や省エネ設備を整えた「グリーンストア」への転換、オーガニックコットン製品の充実、社員の意識改革などが矢継ぎ早に行われています。すでにオーガニックコットン製品では全米最大の販売先となっていますが、そのために生産者を支援するプログラムなども推し進めています。これだけの規模の企業が、グリーンな方向に一気に舵を切ったのです。
  私や周りの関係者が驚いたのは、生活に余裕のある層よりも、むしろどちらかというとあまり収入の多くないマジョリティ層を相手にしているウォルマートのような企業が、このような取り組みを本格化させたことです。何せ、アメリカの消費の3%を支えていると言われている企業ですから、社会に対しても非常にインパクトがあることですね。

―――井手さんは企業だけではなく、個人もより低炭素社会に向けて積極的に参加できるようなムーブメントもいくつかしかけられております。カーボンオフセットを推進する企業を経営され、今年7月にはグリーンEXPOも横浜で開催、成功をおさめられております。
個人消費者の新たな「嗜好」、環境に配慮した製品を選んで購入する、いわゆるグリーンコンシューマーと企業の関係について伺いたいと思います。 日本にはどれぐらいのグリーンコンシューマーがいるのでしょうか?

 
   

 まず、何をもってグリーンコンシューマーと呼ぶかで割合が変わってくるのですが、 いわゆるLOHAS層、環境・健康志向の消費者層は成人人口の約25パーセント、いわゆる4人に1人がそれにあたりますね。
 グリーンコンシューマーという呼び方が始まったのは80年代後半のヨーロッパからですが、本来は、環境問題に意識の高いコアな消費者層を指していました。当時は、ヨーロッパには多くて、日本にはそれほど居ないと言われていました。10年前には日本にグリーンコンシューマーは1%もいないと言われていましたが、現在はLOHAS層の中心となるコア層をグリーンコンシューマーと定義するならば、10数パーセントぐらいは当てはまるのではないかと思います。


―――このグリーンコンシューマー、商品や企業の選定などどのよう部分で 評価、基準をもたれ、購入に踏み切るのですか?

 一言で言いますと、「値段だけでは商品を選ばない」消費者層ということになりますね。では、何を基準に選ぶかというと、健康、安心、安全、企業の姿勢、環境対応などの要素です。
  衣料はオーガニックコットンや自然素材、食はオーガニックや無農薬野菜、住は自然素材や省エネ住宅、などがグリーンコンシューマーのお気に入りです。 
 ただ、グリーンコンシューマーに限らずとも、食に関しては、中国の毒入りギョーザ問題や国内メーカーなどの偽装表示という問題もあり、商品を選ぶ基準というのは最近大きく変わったと思います。『安心・安全』という基準が値段よりも大切になってきました。
  これからも、グリーンコンシューマー的な選択の基準が拡がってくるのは確実だと思います。

 コアなグリーンコンシューマーは、ハイブリッドカーやソーラーパネルなどがまだ割高で、燃費など計算しても価格的なメリットがなく、元が取れないことを知っていても、買う事で満足感を得ている人たちだということができます。この方々の満足感の源泉は、「私は地球にいい事をしている」という意識です。
  今、家電や車などは「エコポイント」や「減税」など後押しがありますが、省エネタイプの製品でないと売れない、というところまで来ている感がありますね。ただ、「減税」「燃費が得」という直接的なメリットを感じて商品を買う人々は、グリーンコンシューマーの予備軍(フォロワー)なのかもしれません。でも、その方が圧倒的に数は多いので、コア層からの拡がりは、企業にとっては重要な要素でしょう。
  コアグリーン層と予備軍まで含めると、いまや2人に1人ぐらいは「グリーンコンシューマー」的といっても大げさではないかもしれません。そうなると、大きなマーケットとして捉えることができます。要するに、グリーンが売れる時代がやってきつつあるのだと思います。

  企業としても値段で選ばないグリーンな消費者層に、どのようにその企業の商品を選んでもらうか、CO2排出量の少なさ、省エネ性能、環境対応などのグリーンな要素をアピールしていかないといけないでしょうね。加えて、その企業の姿勢なども評価して商品を選ぶのが「グリーンコンシューマー」の特徴です。インターネット時代になり、消費者の情報収集能力が格段に高まっている中で、WEBサイトをチェックし、その企業のCSR活動の内容を知る人も増えているでしょうね。
  日本の企業では、CSR活動は総務部など、バックオフィス的なセクションが担当することが現状では多いと思いますが、グリーン化する消費者に対応するためには、営業やマーケティング部など、消費者と接する機会の多いセクションも含めて、全社的な取り組みが必要です。いち早くそういう体制を整えた企業が、グリーンコンシューマーから高い評価を得る事になるでしょう。

―――最後に、井手敏和さんからこのCSR NOWを読まれている方にメッセージなどございましたら、伺えますと幸いです。

 
   

 近年の不況の中、多くの企業が減収を余儀なくされていますが、グリーンコンシューマーに支持されている企業は、それほど収益が下がっていないケースも多く見受けられます。
  それは、企業と消費者が『共感』ベースで強く結び付いており、ブランドロイヤリティーが高い顧客に支えられているからでしょう。そういう意味では、グリーンコンシューマーに支持されている企業は景気に左右されにくいという事も言えるかもしれません。
  反面、価格で競争している企業の中でも、きちんとCSR活動を行ない、評価されているところもあります。要するに、中途半端な対応の企業は、消費者の支持を受けにくい時代なのではないでしょうか。
  市場は圧倒的に値段が安い製品と、その企業を応援する意識を持って高くても選ぶ層と大きく二極化しています。
  是非、企業経営者・リーダーの方々には、自社の「本気度」をステークホルダーの方々にアピールする為に、はっきりとした企業の方向性やビジョンを掲げ、特徴あるCSR活動を行って頂きたいと思います。企業内にコア人材として「グリーンリーダー」を育てたり、社員のグリーンな意識改革など、私も講演やセミナーを通じてお手伝いなど出来ればと思っております。

―――貴重なお時間、ありがとうございました。
 
 
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