第十一回
「一流選手が登場するまでの過程」
一流になる方法、スポーツで言えば世界を狙える方法をご存知でしょうか?元日本女子テニスナショナルチーム監督の小浦武志氏の講演で明快に教えてもらった。
小浦氏は、テニス界で日本人として世界最高ランクの4位まで上り詰めた、あの伊達公子選手がプロデビュー直前まで師事していたコーチとして知られている。その選手育成実績を買われ、1998年から2000年までの2年間、フェドカップ(女子の国別対抗団体戦)のナショナルチーム監督に指名されていた。このようなナショナルチームの監督に、テニス協会の関係者ではなく、民間の指導者が抜擢されたのは小浦氏が初めてだった。
小浦氏曰く、どの選手も早いうちから世界へ出ていこうとするが、忘れ物が多いと言う。忘れ物とは?そう、それは全てにおける土台となる「基礎」「基本」である。最近では、「個の尊重」「個性を伸ばす」と称して色々な理論が行き交いしているが、土台となる「基本」は同じはずである。世界を目指すには、子供の頃、もしくは初期段階でこれを絶対に忘れてはならない。
この「基本」はいつまでも変わらない普遍的なものである。あの松岡修造氏も基礎が出来上がったとされる18歳までは国内でプレーして、絶対に海外には出さなかったと言う。基礎が出来上がって、「もう大丈夫だ」と思ってからでないと、潰れてしまうからだ。
武道をやられている方ならご存知かもしれないが、小浦氏の指導法は「守・破・離」(しゅ・は・り)と言う方程式に基づいている。
「守」→師匠の教えを忠実に守る。(型)
「破」→師匠の教えを破り、個性を出す。(形)
「離」→師匠の下を離れ、新たな世界に。(自在)
何か古いと感じるかもしれませんが、全てに当てはまるものではないでしょうか。
少し違った方程式で、小浦氏の選手指導法を表現してみると、
@ コーディネーション(初期の知恵)
→初期段階に視覚で覚えるもの。目から入ってくる情報で、最初のフォームを身につける
A エデュケーション(裏付けの知識)
→習い始めてから3〜4年経ってから、専門的な事を知識として取り入れること。
特に「戦場3割・日常7割」と言って、日常の生活から注意させる。これが次の段階に活きてくる。
B バリエーション(新たなる知恵)
→本物の知識をもとに、戦略・戦術を立てる、新たな知恵。
特に@、Aは絶対的に必要なもので、伊達選手はこれができてから世界に飛び出していったため、世界でも活躍する事ができた。
小浦氏は、一流選手が登場するまでの過程を以下のように分析する。
@普及→A発掘→B育成→C強化→クライマックスステージ
@「普及」の段階がしっかりしているスポーツは強い。日本での幼児期からテニスに親しむ子供はどれだけいるか?
A 沢山の素材があれば良い選手を発掘できる。素材の発掘自体はそう難しいことではない。
B、C 育成・強化の段階では技術面もさることながら、「メンタル面」での指導・補助が指導者に強く求められる。
小浦氏は「指導者の仕事は素材の質を高める事である」と言う。そして、更に大きな仕事として、「目標に対していかにやる事をハッキリさせてあげる事」がある。
小浦氏の指導している選手で細木選手という選手がいる。彼女は50m9秒台で、当然強化指定選手にも選ばれないような選手であったが、学生の大会やアジア選手権を制してしまった。小浦氏曰く「全然な子が半年で化けた」と言うが、どのようにしてそれは達成できたのであろうか。その一つの方法に、以下の「ブレーンマップ」と呼ばれる、目標へのアプローチをハッキリさせるチャートがある。(以下は、細木選手には関係なく、ある選手のものです。)

そして、これを各ブロック毎に細分化させ、より目標に対して自分がしなくてはならない事をハッキリさせるのだ。小浦氏は「ただ目標に向けて、やる事をハッキリさせただけ」と言う。自分の目標が明確になり、さらにそれに対してどうアプローチするか、を明確にしたらあとはそれを実行するのみ!
何か、皆さんも自分の目標への見通しがついた気がしませんか?
|